二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
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- 君が教えてくれたこと〜思い出というキーワード〜
- 日時: 2011/01/23 13:54
- 名前: 宇野沢千尋 ◆pcUHgqcj4Y (ID: 9MGH2cfM)
これは、自分用の小説です。
コメ来たとしても、返信できません。すみません。
〜各物語の目次〜
【君に出会えてよかった】>>2〜
- Re: 君が教えてくれたこと〜思い出というキーワード〜 ( No.8 )
- 日時: 2011/02/27 10:27
- 名前: 宇野沢千尋 ◆pcUHgqcj4Y (ID: 9MGH2cfM)
—第4章—『友達』
—クラス替え—
小学1年生だった俺は、‘田島,と‘水谷,と一緒に、どんどん成長していって、あっという間に、小学6年生の春を迎えようとしていた時だった。
俺が通っていたこの小学校では、小学6年になると、クラス替えという悪の組織があった。
その頃の春休み、俺は、せっかく仲良くなった友達や、田島、水谷たちと離れ離れになってしまうという恐怖感が多く、体調を壊す事が多かった。
その度、同じ家に住んでいる田島が、心配してくれたり、水谷が家に来てくれる事が多くあった。
「おーい、大丈夫かー?」
そうやって水谷はやって来てくれる。
そして、いつものように、
「俺の新作、聞いてくれよ」
と言って、フルートを手にし、綺麗なメロディーを響かせてくれるのだった。
田島と、水谷から元気を貰って、そしてこの日、クラス替えの発表の日だった。
緊張していた俺は、朝からお腹を壊し、トイレからなかなか出てこれなかった。
心配されながらも、ようやく学校へと向かった。もちろん、3人一緒に。
「あー!!!俺ら、また一緒になるといいよなー」
余裕そうにそう言う田島が羨ましかった。
学校に近くなるたび、俺の心臓は壊れそうなくらいバクバクいっていた。もう、しゃべる気にもなれなかった。
その異変に気付いたのか、水谷は、
「大丈夫だよー、俺ら、絶対一緒のクラスになるってー!別れちゃったとしても、同じ学校なんだから、いつでも会えるし、遊びに行くよ」
と、元気づけてくれるのだった。
そして、見えてきた学校の校門。
校門の前には、クラス発表を見る為に賑わっていた。
喜んでいる人もいたそうだが、俺には、仲良しの友達同士が、別々になって悲しんでいる顔しか目に入らなかった。
それを見るたび、胸がズキズキしてたまらなかった。
「俺、見てこよーっとー!!!」
大きくジャンプしながら、田島はクラス表を確認しに向かった。
「どーだった?」
「俺、3組ー」
「俺のは何組だった!?」
「見えねー」
「ハッ!!!ちょ、悠一郎身長小さいな…」
「しょーがねーじゃん、俺だもん」
「んじゃー自分で見てくるからいいよー」
田島と水谷の会話が耳に響く。
『何でそんなに余裕なんだよ…。俺は、心臓が爆発しそうなくらい緊張しているのに…。‘俺だけ別のクラス,は嫌だよ……。』
俺は、心の中で、そう思っていた…。
すると…
「やったぜー!俺も悠一郎と同じ3組だー!!!」
と、叫び喜ぶ水谷の声。
「まじかよー!!!またヨロシクなー文貴!!!」
その時、俺の心にはある言葉突き刺さった。
‘俺だけ別のクラス,
俺は、その瞬間目の前が真っ暗になった。
俺だけ…
俺だけ…
俺だけ…。
どん底に落ちたような気分だった。
その時だった、
「俺ら‘3人,同じクラスになるなんて奇跡じゃねー?」
と水谷が言った。
‘3人,という言葉に疑問を持った俺は、
「3人…って…?」
と、恐る恐る聞いた。
すると、水谷は笑顔で、
「え?俺と、悠一郎と勇人だけど…他に誰かいるー?」
と言った。
『俺は…別のクラスじゃなかったんだ!!!』
今までどん底にいたような気分だった俺は、水谷のその言葉によって、天に昇ったような気分に変わった。
「…よかった〜!!!」
その途端、俺は大声で喜んだ。
その様子に、田島と水谷は、一緒に喜んでくれた。
「やったな、勇人〜」
「一緒のクラスになれたぜ!これからもよろしくなー」
2人の言葉、そして、2人の優しさに、
また俺は一歩2人との距離が縮まったような気がした。
- Re: 君が教えてくれたこと〜思い出というキーワード〜 ( No.9 )
- 日時: 2011/02/27 10:28
- 名前: 宇野沢千尋 ◆pcUHgqcj4Y (ID: 9MGH2cfM)
—大金持ち—
俺達3人は、早速6年3組の教室へ向かった。
席順は出席番号順だったため、近くはなかった。
そしてこの日は、午前授業だったためあっという間に下校の時間になっていた。
「気をつけ、礼」
「さようなら」
クラスは変わったが、当番のあいさつの仕方は、昔から変わらなかった。
俺が鞄に荷物を詰めていると、田島が飛び込んできた。
「なぁなぁ、今からさー文貴と遊ぶんだけど、勇人も一緒に遊ぼうぜ」
「うん、いいねー」
俺は迷わずそう答え鞄を背負った。
そして、3人で学校を出た。
「あー腹減ったー、昼何食う?」
この日は、給食なしだったため、お腹がすいてたまらなかった。
「俺、お勧めのケーキ屋さんあるから、そこ行こうぜー」
と、相変わらずケーキ好きの水谷は言った。
水谷のこの意見から、俺達はそのケーキ屋さんへ向かった。
ケーキ屋さんは、学校から5分ほどで行ける距離で、ワイワイガヤガヤと話しに盛り上がっているうちに、ケーキ屋さんに到着した。
水谷は、此処此処と指を差しながらはしゃいだ。
そのケーキ屋さんは、ケーキバイキングだった。
プチケーキがたくさん並んでいる。
「うまそ〜!!!」
「うまそ〜!!!」
もう、目がキラキラ光るほどだった。
俺達は、早速ケーキをたくさん選んで皿にのせた。
そして席に着き、
「いただきまーす!!!」
その時の3人の声は、この店内じゅうに響くほどの大きな声だった。
「うまい、うまい」
「このいちごショート最高だぜー」
「こっちのチョコもほっぺが落ちそうだよー」
そう盛り上がっていた時だった。
《ブロロロロロッ》
外から大きな車のエンジンの音が聞こえた。
「ん…あんあ?(何だ?)」
田島が口にケーキを詰め込んだ状態で言った。
「ちょっと、外に行ってみようよ」
俺はそう言い、水谷の手を引っ張った。
すると…外には、大きな大きな車が止まっていた。
その車は、黒くてピカピカ光っていて、何処かで1回見た事があった車だった。
そして…
「皆の者、頭が高いぞー」
赤いカーペットが敷かれるとともに、少し年をとった人がそう言った。
「‘泉孝介,御坊ちゃまがお通りになるぞー」
と続けていった。
俺達3人は、顔を見合わせて、
「泉孝介?」
と言った。
車の中から出てきたのは、泉孝介という一人の小学生5年生。
この人が、泉財閥のあととりの、坊ちゃまなのだ。
そう、俺が小学1年生の頃に出会った、あの少年がこんなに大きく成長していたのだ。
「泉孝介って…俺らが1年の時に1回見た事あるよなー!あの、文貴の演奏聴きに行った日!!!」
田島は小声で俺に行った。
俺も小さく頷いた。
泉孝介は、またさらにかっこよくなっていた。
さすが、泉財閥のあととりだ…。
すると、泉孝介は、俺達の方に歩きだしたのだった。
「…不様な少年たちだな…。」
泉孝介は、水谷の顔を掴んで一言そう言って、車の中に入って行ってしまった。
そして、その車も、このケーキ屋から離れていった。
「…」
「…何なんだよ!!!あの態度!!!」
水谷は、そうキレた。
よく見ると、水谷の顔には、いちごショートの、生クリームがついていたのだ。さっき頬張って食べた奴だ。きっと泉は、その様子を‘不様,という2文字で表したのだろう。
「泉孝介…昔の雰囲気変わったな…。」
俺は田島にポツンとそう言ったのだった。
人は変わるもんなんだな…。
- Re: 君が教えてくれたこと〜思い出というキーワード〜 ( No.10 )
- 日時: 2011/02/27 10:26
- 名前: 宇野沢千尋 ◆pcUHgqcj4Y (ID: 9MGH2cfM)
—心—
俺はその日の夜、泉孝介の事で眠れなかった。
そして、田島が言った、‘昔の雰囲気変わった,という言葉が、俺の頭の中を暴走した。
そして次の日の朝、
何故か、泉孝介が俺らの学校にいた。
転校してきたらしい。
「…あ…昨日のヤツじゃん」
水谷は昨日の事をまだ引きずっているせいか、泉孝介をきつく睨んだ。
泉孝介は、転校初日という事もあって、まだ友達もいない様子。
中間休みも一人ぼっちでいた。
俺は、田島と水谷と、席でいろいろ話していた。
…その時…。
一人で読書をする、泉孝介に、
黒い影が近づいていた。
「泉財閥の御坊ちゃまが、こんな事ろで何してんのー?」
如何にも意地悪そうな顔つきと、口調で迫ってきた男子3人組がいた。
それに対して、泉孝介は、無言。
その態度にキレた男子達は、
「おい!!!シカトすんなよ!!!」
と言って、泉孝介の胸倉をつかんだ。
「う゛っ」
泉孝介が、小柄に対して、男子らはみんなでかい。
泉孝介は苦しそうな顔をして、必死に殴ろうとしたが、腕を掴まれているため出来ない状態だった。
「なぁ、アレヤバくねぇ?」
田島が小声で言った。
その時俺は、
自然と体が動いて、泉孝介を助けに行った。
「ちょ…何してんの!」
俺は、泉孝介の胸倉を掴んでいる、ボス的存在の男子の腕を振りほどいて言った。
「だ…だってよーコイツ、調子乗ってるから。何財閥だが知らないけど、えらい振りしてんじゃん!しかもコイツ、シカトしたんだぜ」
意地悪男子のボスは、大声で言った。
それに対して俺は、
「だからって、やっていい事と悪い事がある!それの区別も出来ないの!?」
と言った。
なんか自然と、体と口が動いたんだよな。
この時の俺。
俺の言葉に対して、頭にきたボスは、
思いっきり俺の顔面に拳をぶつけてきた。
その時俺は、一瞬何があったのか分からなくなり、
そのまま気を失ってしまった。
その後の事はよく覚えていないが、
田島と水谷が先生に伝えて、
俺を保健室まで運んでくれたらしい。
男子3人は、強烈に先生に怒られたそうだ。
目を覚ました俺に、
一番最初に目に入った物が、クリーム色をした天井だった。
その時、自分が生きているんだという事を確信した。
「…俺のせいで…ごめん…」
ベットの横には、体育座りをして泣きじゃくる泉孝介。
こうやってみると、やっぱり小柄な人だ。
こんな小柄で、大柄の3人相手に勝てるはずもない。
俺も、小柄なほうだけど、
やっぱり勝てなかった。
そして、泉孝介は、小さい声で語り始めた。
「俺、今までずっと家にいたから、友達なんて一人もいないんだ」
《え…!?》
「だから、人とどう接したらいいか分かんなくて、本当にごめん」
泉孝介は、顔を下にして言った。
俺は、その姿に、胸が締め付けるような思いだった。
《辛かったんだね…》
「ねぇ…だったら…俺と友達になってくれる?」
俺は、痺れる頬を押さえながら言った。
泉孝介は、びっくりしたのか、驚いた顔を口を開かなかった。
そして俺はまた、
「もしよかったら、俺と友達になって下さい」
と丁寧な口調で手を伸ばした。
すると…
「…はい。」
泉孝介は、顔を赤らめて、俺の手をぎゅっと握った。
その時、
「いいな、いいな〜!勇人だけ〜!!!」
田島がそう言って保健室にやってきたのだ。
「なー俺達も友達になろうぜ!!!孝介!!!」
「いいねいいね!呼び捨て!!!んじゃ、俺も孝介って呼ぼうかな」
泉は、初めての友達に驚いていた様子。
でも、本当は嬉しくて嬉しくてたまらなかったそうだ。
「…俺だけ仲間外れにしないで〜!!」
後からついてきた水谷もやってきた。
その時、やっと泉が口を開いてこう言った、
「水谷…昨日はごめん。」
泉が水谷に謝ったのだ。
「あ、いいよいいよ!べつ大丈夫だから〜」
と水谷は、手を開いて、言った。
「それと…俺と友達になってくれ」
泉は勇気を出して、自分から言った。
「お…おぉう!!!よろしくな、孝介!!!」
水谷は、そう言い、泉と握手を交わした。
この時、俺達4人の心が一つになったような気がした。
この日は、初めて泉に友達ができた記念日になった。
そして…
俺達の絆はここからスタートしたのだった。
- Re: 君が教えてくれたこと〜思い出というキーワード〜 ( No.11 )
- 日時: 2011/08/09 22:43
- 名前: 宇野沢千尋 ◆pcUHgqcj4Y (ID: SkGQb50P)
—歩み—
泉も、ちゃんと気持ちを伝える事ができ、
俺達の絆はあっという間に仲良くなった。
やっぱり、小学校最後の1年だから、
時が過ぎるのがとても早かった気がする。
6月のプール開きでは、
水谷が海パン忘れて、服着たまま泳いでたな。
あの時の水谷、溺れかけてたの覚えてる。
あれ以来、クラスの皆、誰一人として、海パン忘れないようになったなぁ…。
9月の運動会では、
俺と泉が白組で、
田島と水谷が赤組だっけ。
確か、田島が100メートル走で1位とったんだよな。
そんで、MVPに選ばれてたっけ。
さすが田島だよな〜。
田島は昔からスポーツマンだ。
12月のクリスマス会では、
泉が無理やり水谷をトナカイ姿にしてたな…。
でも、美味しいもの食べて、色んなゲームして、楽しかった。
そして年が明け、
俺らは中学に向けて、受験勉強を頑張った。
俺と田島と水谷は、同じ中学を受けることになった。
泉は、泉財閥だけあり、偉い人だらけの入る学校を受けることになった。
「なぁなぁ、勇人〜ここんとこ、『キボウ』ってどー書くんだっけ」
田島はしょっちゅう俺に勉強を聞いてきた。
田島はスポーツはできるんだけど、
勉強は全然駄目なのだ。まぁ、現在も変わらずだけどね。
正直、俺と水谷と同じ中学に入るのは
無理なんじゃないかなって思ってた。
でも、田島も田島なりに努力して、
無事、4人全員が中学受験に合格したのだ。
あの時は、本当に嬉しかった。
また、田島と水谷と同じ学校で過ごせるから。
泉と別になるのは寂しかったけど、
俺はあの時、泉の事を応援しようと思った。
そして…
辺りの雪が、少しずつ解け始めた頃…。
今までお世話になった、
この小学校の卒業式が訪れた。
入場行進前、緊張して、腹が痛くなりそうだった時、
泉は水谷にこういった。
「おまえー卒業式で泣くんじゃねぇ—ぞ」
「な…泣くわけねぇだろ…ぉ…。」
「うっっわ!今にももう泣きそうな顔してんじゃん」
「な…泣いてねぇし…つか!!!そういう孝介こそ、泣くなよ!!!」
「あったりめーだろ!!!誰かさんとは違って、泣くもんか!!!」
「うー!!!何を———!!!」
泉と水谷のこの会話を聞いてると、
自然と心が落ち着いた。
珍しく腹も痛くならなかった。
———卒業式。
俺は、いつも以上に胸を張ってステージへあがった。
そして、卒業証書を貰い、
卒業の歌を歌っている時、
俺は色んなことを思い浮かべていた。
———田島と一緒にこの学校に入学したこと。
———天才音楽少年の水谷とケーキを食べたこと。
———泉財閥の御坊ちゃまの泉と仲良くなれたこと。
他にも色々。
こんな事を考えていたら、
いつの間にか、目から大粒の涙が、ポタポタとこぼれていた。
それほど、
俺にはいろんな思い出があるのだった。
卒業式が終わり、
校舎から出て4人でいると、
また泉と水谷がじゃれ合っていた。
「やーっぱ文貴泣いてんじゃん」
「な…泣いてなんっか…ない…よ…ぉおっ…」
「あー!!!泣いてる泣いてる〜!!!」
それに混ざって田島も水谷を笑っていた。
こんな光景、
これからも見れるはず…なのに…
俺は涙が止まらなくて
しかたがなかった…。
そして俺は、
無意識のうちに、大声で叫んだ。
「…ッ…ゆーいちろー!!!!ふみき——!!!こーすけー!!!俺と…友達になってくれて…本当にありがと————!!!!!」
俺は、涙を流しながら、
思いっきり叫んでいた。
3人も俺に驚きつつ、
「ゆ———と!!!俺らと友達になってくれてありがと———!!!」
と言って、俺を強く抱きしめた。
「もう!勇人は泣き虫だなー!!!」
そう言う田島の笑顔は、とても暖かかった。
「勇人、俺よりも泣き虫じゃん!!!」
水谷は、涙と鼻水でぐちゃぐちゃにした顔で俺にそう言った。
そんな顔で言われると、ついつい笑ってしまったんだ。
「そろそろ泣きやめよ!俺らいつでも会えるんだし!俺だけ別の学校だけど、頑張るから、勇人も頑張れよ!!!」
泉はそういうと、俺の右手をギューっと握った。
そして、
俺の小学校生活が幕を閉じた。
- Re: 君が教えてくれたこと〜思い出というキーワード〜 ( No.12 )
- 日時: 2011/08/10 00:07
- 名前: 宇野沢千尋 ◆pcUHgqcj4Y (ID: SkGQb50P)
—第5章—『新しい気持ち』
—入学—
卒業式を終え、俺達は春休みに突入した。
卒業しても、俺ら4人は、しょっちゅうあっていた。
近くのマックに行ったり、ケーキ屋行ったり。
公園で野球したり。
そして、4月7日。
‘新しい気持ち,で俺は、‘南岸中,に入学した。
もちろん、田島と水谷と共に。
奇跡的に、俺ら3人は同じクラスだった。
泉は‘東城学園,に入学した。
‘東城学園,は、泉のように財閥のお坊ちゃんがいたり、モデルがいたり、音楽家の子供がいたり、医者の子供がいたりと、目も合わせられないくらいの凄い人ばかりいるらしい。
入学から1ヶ月後。
それぞれの学校に慣れ始めた頃だった。
「なぁなぁー!!今日午前授業だし、午後から4人でどっか行かねぇ!?」
田島のこの言葉を切っ掛けに、
俺達にとってとても長い1日になるのだった。
「いいねいいね!!!隣の県とか行ってみたい!!!電車で!」
田島の話に、ついつい俺ものっちゃったんだ。
そして水谷も、
「んじゃぁ、孝介にもメールしてみる」
と、皆行く準備万端だった。
メールの返事は、
「あー分かった。んじゃ、今日の12時半に○○駅集合な」
だとの事だった。
「おっしゃぁ!!!!!俺、かつ丼くいてぇな!!!」
「えー俺はケーキ食べたい!!!」
田島も水谷も大はしゃぎだった。
まるで小学生みたいだ。俺らこの時中学生だったんだけどね。
でも、小学生の時と変わらず、
無邪気な2人も見て、俺も安心できたんだ。
約束の時間になると、
俺ら3人は、スクールバックを持って、○○駅へ向かった。
「あれ、まだ孝介来てないみたいだね」
キョロキョロと、泉が来るのを待っていると、
遠くから、
《ブロロロロロロロ》
と凄い勢いで、黒くてピカピカ光っている大きな車が走ってきた。
「こ…この車は!?」
予想通り、赤いカーペットが敷かれると、
黒髪をなびかせて、制服姿の泉が降りてきた。
「こーすけ!!!」
この時、泉の制服姿を始めてみた。
おしゃれな、赤ワイン色のブレザー。
深緑と藍色のチェックのネクタイ。
ネクタイとお揃いのチェックのズボン。
黒くてピカピカ光っている豪華な靴。
さすが、偉い人だけが入る、‘東城学園,だけある。
「№105、もう帰っていいぞ。」
「行ってらっしゃいませ、孝介御坊ちゃま。」
そう言うと、
黒い車は、大きな音を立てて、帰って行った。
その姿に、3人はついついうっとりしてしまっていたらしく、
ずっと泉を見つめてたらしい。
「…あ…の…怖いんだけど…。」
泉はそう言い、腕で自分の顔を隠した。
「あぁ〜ごめんごめん!!!孝介の制服姿、初めて見たからさ!!!すっげー似合ってるよ!やっぱ、孝介はかっこいいなーなんて」
俺は、笑いながらそう言った。
すると、泉は、
「勇人だって、制服似合ってるよ。ミルクティー色のブレザーに紺色チェックのネクタイ、ズボン。」
なんてお世辞。
でも、お世辞だとしても、泉に言われるとなんか嬉しかった。
「早速いくか!!!いざ、隣街へ!!!」
「GO!!!」
田島の掛け声に合わせて、
俺らは隣の県へ行った。
電車の中は、満員だったが、
泉がいるせいか、その車両に乗っている人全員が隣の車両に移動して行った。
「…さすが、泉財閥…。」
電車の中では何を食べるかで揉めていた。
田島はかつ丼がいいっていうし、
水谷はケーキがいいっていうし。
結局、俺と田島がかつ丼食いに行くことに。
水谷と泉はケーキで、別行動してから、途中合流するという事になった。
電車を降り、
「んじゃ、お互い楽しんでこよ—な!!!」
と言葉を残し、それぞれ二手に分かれて行った。
「やっぱりかつ丼には卵だよなー!!!」
田島はかつ丼が食べられるからか、テンションがいつも以上に高かった。
きっと、水谷も同じでテンション上がってるんだろうなって思った。
2人でかつ丼やに向かい歩くこと約10分。
俺には聞こえたんだ。
微かに助けを呼ぶ声を。
「俺、大盛り頼んじゃお—かなー!!」
隣の田島は何も聞こえてないのか、かつ丼話に夢中だ。
「なぁ、悠一郎…」
「ん?」
「今さ、そこの学校の裏から、なんか助け呼ぶ声みたいな聞こえなかった?」
「いや〜?なんも?まーいーんじゃねー?」
「…確かに聞こえたんだけどな…。」
《ごめ…っんなさ…いっ…もう…間違えな…い…かっら…》
やっぱり聞こえる。
次は何か謝ってる声だった。
その時俺は、その声の方へ走りだしていった。
声のする学校の裏に行くと、
そこには、俺と同い年ぐらいの男子3人で、1人の男子を苛めていた。
そして、ボスらしき人物が、
「俺は、メロンパンを買って来いって言ったんだよ!!!てっめぇ、あんぱんなんか買ってきやがって…んざけんなよ!?あぁーん!?」
と、大声で叫んでいた。
俺は、全然無関係なのに、
ついつい一人の男子を助けようと、いじめっ子に前に出てしまった。
「何やってんの!?そいつ、謝ってんじゃん、もうやめなよ」
俺は、助けようと必死に食らいついた。
するとボス的人物が、
「んだてめぇ!?誰だ!?…んぁーいい度胸してんじゃねぇーか。こいつに変わって俺にぶたれるってーのか!!!んじゃー思いっきりぶってやるぜ」
3人は大声を出して笑い始めた。
それに俺も怖くなり、逃げたくなった。
その時苛められていた男子が、
「お…っれの事なんて、いいかっら…逃げ…って…。じゃ、ないと…君までぶたれちゃう…。」
と、俺の腕を必死に掴み言いかけた。
その手は凄く震えていた。
でも俺は、この男子が可哀そうで可哀そうで、
その場から逃げることはできなかった。
「はん、逃げないなら、さっさとやっちまおうか!!!そんじゃー手加減しねぇからな!!!これでも喰らえ—————ッ!!!!!!!!!!!」
《ゴリゴリッ》
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