二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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狂い咲きの桜と約束【薄桜鬼】
日時: 2011/03/01 19:19
名前: ハノ (ID: Gz/gGLCR)

どもーΣ はじめましてかもしれません、ハノです。
挨拶は苦手なので、さっさと終わらせちゃいますね。
注意は特にありません、出来れば見て欲しいです^^

※替え歌とかあります
※更新速度は微妙です


< お話 >


Page:1



Re: 狂い咲きの桜と約束【薄桜鬼】 ( No.1 )
日時: 2011/03/01 19:19
名前: ハノ (ID: Gz/gGLCR)

【零:繋いだ温もりと交わした約束】


あの日、全てを私の世界から奪っていった人間共。私は人間という存在を一生忘れることは無いだろう。
ずっとずっと、憎み続けてやる。復讐を果たすその時まで、ずっとずぅっと。

「ちづる、かおる、さくら!」
「そーちゃん、どうしたの?」
「そう??」

私は笑みを浮かべて千鶴、薫、桜の傍へと駆け寄った。私は西を統べる鬼、風間家の養子として引き取られた人間だ、東の鬼を統べる純血の鬼、雪村家には合わない。
だが、私や千鶴、薫に桜の必死の頼みで漸く一緒に遊べるようになったそんな時。
私達はある約束を交わした。

「おとなになっても、ずっといっしょね!」

その約束はやがて果たされる事なくぷつりと切れていくのだが。
皆で一緒に繋いだ両手の温もりを私は忘れる事が無い。
何時までも、覚えている。—————記憶の、底に。



                           /                           



あたし達は東の鬼を統べる雪村家の鬼だ。——まあ、あたしは分家の子供なのだが。
父親の名前も、今となっては覚えていられないほどのものだったのだろう。
あたしには過去の記憶があまりない。

“かおる”や“そう”という単語が出てくるのだが、一体誰の事やら。身内の誰かかと問われれば、うんと答える自信が無いほど薄れかけた記憶。だけど、あたしはその記憶の底で手を繋いだ温もりだけは何故か覚えている。

あの日————狂い咲きの桜が舞い落ちる日、あたしは確かに誰かと何かの約束を交わしたはずだ。
曖昧な記憶でしかないが、完全に記憶のない千鶴よりはましだろう。

『さくら、ずっと————でいてね』

誰かがそう言っていた気がしたのだが—————————はて、誰の事だっただろうか。
しかし、その声の主こそ自分の運命に大きく関わる人物で、——最もあたしの過去に近い人物だという事を知るまではまだまだ掛かる事になる。




零/終

Re: 狂い咲きの桜と約束【薄桜鬼】 ( No.2 )
日時: 2011/03/01 20:04
名前: ハノ (ID: Gz/gGLCR)

【壱:その甘さを知って顔を歪めた】


あの約束を交わしたときからもう早数年——十数年以上経っているのではないかと女鬼—風間奏—は小さく呟いた。
風間、とは付くものの本名は凛桐奏と言い、凛桐家が滅した為に風間家の養子に引き渡されただけに過ぎない鬼だ。

「今日は祇園会の山鉾か」

煌めく明かりと楽しげな音に釣られてやって来てみると祇園会の山鉾が見れた。
良い時期だと満足げに奏は笑みを浮かべる。爛々と赤い瞳は輝き、白い肌が明かりに照らされている。

「水あめ食いたいなあ」

ふと露店を見て小さく呟く。そして、思えばすぐ行動に移すのが奏。
水あめを購入し素早くそれを満足げに一口口へと運んだ——が、

「甘い」

眉を寄せてそう呟く。
鼻孔を擽るその甘ったるい匂いと口内に広がるただの砂糖の味に顔を歪めて水あめの容器の蓋をそっと閉めた。

「千景と食べよ」

ほとんど嫌がらせに近いのだが、奏は性悪だ。

「—————、浅葱の」

その時に見かけた浅葱色の羽織。
その傍で笑っている昔の親友—桜。千鶴は居ないようだった。

「狡いな」

僕だって幸せに生きたかったよ、なんて小さく嘲った。
———其の儘、何をするわけでも無く宿屋へと戻る。
其処で奏を迎えたのは不機嫌そうな表情を浮かべ、殺すぞという雰囲気を纏わせつつ甘い香り漂う奏を睨んでくる。

「何だ、その甘ったるい匂いは」
「水あめ、食おうよ」
「———チッ…」

嫌がらせと分かりつつも結構長い間一緒に暮らしてきた妹の頼みは断れず、千景は渋々と水あめの容器を受け取る。
器用に棒に水あめを巻けば眉を寄せつつ一口だけ口へと運んだ。

「甘い」
「だって水あめだもん」

顔を顰める千景と子供みたいに笑う奏。
対照的な二人だが、根本的な性格などは色々と似通っている。

その後、奏もぱくりと一口水あめを舐めてすぐに口内を水で洗い流す。
先程よりも量が多かったためか、かなり甘い味が奏の口内に広がったのだ。子供なら喜びそうなそんな味。
だが、奏自身は甘いものは好きでもそんなに食べられるわけではない。

「———甘っ」

そう呟いて水をもう一度口に含み吐出した。

「こんな甘ったるいの、望んでないんだけどね」

小さく呟いて苦笑を浮かべた。
自分は甘いものじゃなくて、苦いもの系統が似合っているのだろう。



( その甘さを知って顔を歪めた )
               ( だけど、その甘さが何処か懐かしくて )

Re: 狂い咲きの桜と約束【薄桜鬼】 ( No.3 )
日時: 2011/03/03 18:17
名前: ハノ (ID: Gz/gGLCR)

【弐:浅葱との出会い】


あの祇園会の祭りから一年——……
浅葱の羽織が目立つ新選組には、男装中の少女が二人。否、一人は男装などしていないのだろうが。

「——暇ぁ」

くああ、と欠伸をしつつ男装をしていない方の少女—雪村桜—は寝転がりつつ言った。
その言葉に苦笑を浮かべたのは雪村千鶴。”一応”男装をしている方の少女だ。

「仕方ないよ」

二人と新選組は、異なる形で出会っている。
まず、桜の方はと言えば——……



「————……ねぇ、壬生狼さん」
「あ?」
「あたしを、雇ってみない?」

にへらと笑みを浮かべるまだ幼い顔立ちの少女を見て当時、壬生狼と名乗っていた土方歳三は不思議そうな目—否、警戒している目付きで桜を見やる。
当の桜は笑みを浮かべたままだ。

「あたしね、治癒能力があるんだよ。それに、強い」

かちゃりと桜の腰にある刀が揺れる。
それを見て益々土方は警戒心を強める、が。

「……役に立つよ」

急に雰囲気が変わり、瞳が鋭く変わった桜を見て土方は確信する。
この少女は只者では無い、と。
敵に回せば厄介になると直感がそう告げている。

「———来い」

たった一言。だが、その一言が桜を救い、桜を助けた。
桜は嬉しそうな笑みを浮かべ、土方の後を着いて行く。

「邪魔になれば、…斬る」
「うん」

脅しとも言えるような言葉にも、桜は笑って頷いたのだった。



こんな感じの出会いだ。
しかし、千鶴は違う。



「はぁ…はぁ……ッ」

浪士二人に追われ、千鶴は必死で逃げていた。その時、——千鶴の視界に浅葱色が見えた。そして……
その浅葱色は浪士を斬ったかと思うと、不快な赤色に染まったままぎらりとした瞳で千鶴を見て、嗤う。

「ぁ、…いやっ……」
「ひゃははははははっ!!!!」

狂ったような笑い声が響き渡り、その浅葱の羽織を纏う赤目の男が近づいてくる。

「きゃああああああ!!」

千鶴は悲鳴を上げ、襲ってくるであろう痛みに目を閉じたが——衝撃も痛みも、千鶴を貫きはしなかった。
恐る恐る目を開ければ———…

「あーあ、残念だなあ。僕一人で始末しちゃうつもりだったのに。斎藤君、こんな時に限って仕事早いよね」
「俺は務めを果たすべく動いたまでだ」
「あたしもりたかった!」

見慣れた親戚の容姿と、見知らぬ男が目に入る。その男二人も親戚も同じ浅葱色の羽織を羽織っていたのだが。
妖しく輝く淡い桃色の瞳が千鶴を見据え——…

「ちっづるー!」

にぱにぱ笑いながら桜は千鶴に手を振った。
それが、出会い。



「今思えば何だか変な出会いだよね」

千鶴がおかしそうに笑いつつ言う。
桜も頷き、

「だねぇ…」

と笑った。

「……父様、何処だろうね」

父、綱道を探すために京へとやってきた千鶴。桜は別の理由だが。
桜は相変わらずの笑みを向けて「さぁね」なんて呟いた。



( 浅葱との出会い )
          ( それが、あたし達の運命を変えた )

Re: 狂い咲きの桜と約束【薄桜鬼】 ( No.4 )
日時: 2011/03/16 17:20
名前: ハノ (ID: Gz/gGLCR)

【参:そんな君との日常が、】—奏視点—


君はただ桜や千鶴を憎んでいるだけで、僕の事なんて見向きもしないんだよね。
それでも僕は君と共に居れるなら、良いんだけどね。

「かーおるっ」

甘えるように君の背中に抱き付けば、君は迷惑そうに顔を歪めるけれど、それでも僕を引き剥がしたり嫌そうな顔なんて一度もしない。そんな優しさを僕は知ってるんだよって、言ってやりたい。

「……邪魔」

小さく溜息とともに吐出された言葉に苦笑を浮かべる。だけど僕は離れようとなんてしないんだ。
そんな僕に呆れたのか、君はもう何も言わずにただ黙って僕の事をやんわりと抱き締める。憎々しげな君の表情は消え去り、優しい表情がのぞく。
だから僕は君から離れられないんだ。

「———かおる」
「何?…こうして居たいのなら喋るなよ」

こうして居たいのは君も同じだろう。
そんな言葉を飲み込んでただ僕は君に体を預ける。

「かおる、……一緒に居てね」

誰よりも寂しがりな僕と、ずっとずっと。
君はただ小さく頷き、何も言わずに僕を抱き締める。

「誰よりも君を愛してるのは僕だ、」
「———わかってる」

君は優しく笑み、——僕に刃を突き立てた。
そうだね、此の侭僕を殺せば君は嬉しいだろうね。

「…………かおる、」

小さく名を呼ぶとはっとしたように此方を向く薫。
君は何よりも可哀相だ。

だから、愛おしいのかもしれない。

「……ね、殺しても良いよ」
「あっ、——……」
「ずっと、かおると一緒なら」

にこりと笑みを浮かべれば視線を逸らされた。
苦々しげな表情。

「……ごめん」

珍しく素直な彼の言葉に、僕はただ黙って笑った。



( そんな君との日常が、 )
           ( ただ嬉しくてたまらない )


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