二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
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- 魔王のでし
- 日時: 2011/07/01 17:00
- 名前: 山田 (ID: 784/wjkI)
僕が5歳だった頃。
婚約者のアリスと一緒に鬼ごっこをしていた。
アリスが逃げて僕が鬼。
彼女の金色の長い髪の毛を見ながら、タッチするべく追いかける。
でも、アリスの方がこの時少しだけ足が早かったからかな?
僕は彼女に翻弄されっぱなしだった。
アリスとの婚約は、僕の両親とアリスの両親が仲が良かったので、僕たちが生まれてすぐに婚約を決めたらしい。
僕の家もアリスの家も貴族同士だし特に問題もなかった。
「あまり遠くに行っちゃ駄目よ〜」
そんなアリスのお母さんの声がする。
アリスのお母さんはアリスと同じ金色の髪の毛を長く伸ばしていて、綺麗だな〜なんて思ったのを今でも覚えてる。
この時僕達はそんな声を聞こえなかったことにして、森の中へと入っていた。
いつもこの森の中で遊んでいたし、きっとアリスのお母さんも1つため息を吐く程度で見逃していたのかもしれない。
でもこの森に入った事が僕の運命が大きく変わる事になるなんて、小さかった僕はこの時わかるはずもなかった。
- Re: 魔王のでし ( No.8 )
- 日時: 2011/08/03 11:41
- 名前: 山田 (ID: c9BCqrK0)
「忘れ物はないよね……」
そう言って僕は確認するように部屋を見渡す。
教科書もちゃんと今手に持っている茶色の鞄にいれたし、剣もちゃんと持った。
「よし大丈夫!」
僕は自分に向けて、そう言葉を投げかけるとゆっくりと部屋のドアを開いて、外へと出る。
部屋を出ると長い廊下。
まぁこの家自体がお城の様な感じの家だからね……と心の中で苦笑いを浮かべながら、ゆっくりと食堂へと向けて歩き出す。
時々すれ違う、使用人さん達が道の端によって頭を下げて挨拶をしてくれる。
「おはよう」
僕はそう返事をしながら、頭を下げる。
この家の使用人さんは僕が魔法を使えなくなっても、決して態度を変えることなく仕えてくれている。
それだけではなくて、皆僕の事をまるで家族のような温もりで包んでくれる。
そんな感じで、食堂へと進んでいくと食堂の入り口が目に入った。
食堂の入り口前でガウスさんが待っていてくれた。
鼻の下の口ひげ、白髪の混じったオールバックヘアー、顔には皺がところどころ、すらりとしたモデルの様な体型。
見るからにベテラン執事さんだ。
僕が赤ちゃんの頃から、専属の執事として仕えてくれている。
専属の執事にして、この家の執事長という1番偉い役職も長年勤めている凄い人。
僕の専属執事になる前は、お父さんの専属執事だったらしい。
「ケイトお坊ちゃまおはようございます」
笑顔で一礼をしてから、食堂の扉を開けてくれるガウスさん。
「おはようございます」
僕も頭を一度下げて挨拶を返してから食堂の中へと入る。
何人で座るんの?と思うような長いテーブルの一番奥に、お父さんとお母さんが隣あって座っていた。
「おはようケイト」
お父さんとお母さんから優しい声がかかる。
短めの薄い青色の髪に、同じ色の瞳。
僕の瞳と髪の色はお父さんの色と同じ。
線は細くて、皺が少ないからか分からないけど、歳よりもずっと若く見える。
その隣に座っているのはお母さん。
長い艶のある黒い髪とパッチリとした黒い瞳、そして息子の僕から見ても若く見える顔。
僕は2人の事を確認してから、いつも通りに挨拶を返す。
「おはようお父さんお母さん」
僕はゆっくりと定位置へと向かう、お父さんとお母さんの近くへと歩いていくと、いつの間に先回りしていたガウスさんがゆっくりと、椅子を引いて待っていてくれた。
- Re: 魔王のでし ( No.9 )
- 日時: 2011/08/04 11:00
- 名前: 山田 (ID: bhOvtj9N)
「ありがとう」
「いえいえお気になさらずに」
頬を緩めながら笑顔で答えるガウスさん。
僕はゆっくりと椅子に腰をかけると、お父さんがふと声をかけてきた。
「今日も学校かい?」
「うん」
「あまり無理しないでね?」
とお母さんが心配そうに言う。
あの事件の時以来お母さんは結構心配性になった。
出血多量で死にかけたからかな?
「無理はしないよ」
僕がそう微笑みながら言うとお母さんはほっと胸をおろした。
それと同時にそれぞれに運ばれてくる、朝御飯。
丸い白いお皿には、狐色に焼けたトーストとスクランブルエッグ、その下には上手くキャベツかな?緑色の新鮮そうな野菜が綺麗に敷かれていた。
「今日も頑張ってきなさい」
お父さんは運ばれてきたトーストにかぶりつきながら、微笑みを向けてくれた。
「うん」
僕はそんな温かい会話をしながらご飯を食べきった。
僕は食べきってすぐに、ご馳走様でしたと口にしてから、立ち上がり少し急ぐように食堂の出ようとする。
「いってらっしゃい」
「気をつけろよ」
お母さんとお父さんのそんな言葉に、僕は笑みを浮かべながら、いってきますと返事をすると食堂のドアをガウスさんが開けて待っていてくれた。
何で急いでいるかって言うと、アリスがいつもこの時間には馬車を用意して家の前で待っていてくれるから。
やっぱり待たせるのは良くないから僕は早歩きで家の門へと向かう。
正直こういう時は家が小さいほうが良いと思うんだけどな。
そんな事を考えながら家を出ようとすると後ろから声がかかった。
「ケイトお坊ちゃま、いってらっしゃいませ」
振り向くとガウスさんが笑顔で一礼していた。
「うん!いってくるね!」
僕は手を振りながらアリスの待つ場所へと走った。
今日はどんな話をしようかな? と馬車の中でする雑談のことを考えながら足を進める。
大きな玄関から外へと出て、門へと続く綺麗に灰色の石がしかれた道を小走りをしながら、いつものアリスとの待ち合わせ場所はと向う。
目を凝らせば、いつもアリスが待ってくれている所にはすでに馬車があるのが見える。
「待たせちゃってるかな?」
そんな事を僕は呟きながら馬車へと進める足の速度を速めた。
少しでもアリスを待たせないようにと思いながら……
- Re: 魔王のでし ( No.10 )
- 日時: 2011/08/04 11:17
- 名前: かんた (ID: bhOvtj9N)
私は今ケイトの家の前、馬車の中に居る。
今日はいつもより早く目が覚めたので、早くなってしまいました。
「ケイト、あの事件の日からちょうど12年ですね……」
私は目を瞑り、あの事件の日の事を思い出しながらゆっくりとそう呟いた。
ケイトが私を助けるために魔族とゲームと称した、拷問に当時5歳だったあなたは耐えてくれた。
今でもあの時のことを覚えてる。
あの魔族がケイトを刺した時の表情。
回数を重ねる事に、魔族の赤い瞳には狂喜の色が見て取れた。
私はケイトの事をただ泣きながら呼ぶことしかできなかった。
魔族が1回刺す事にあがる彼の叫び声。
魔族が刺した剣を抜くと彼の着ていた服が水にインクをこぼしたように赤く染まっていく……
私はただただ彼の事を呼ぶことしかできなくて、そんな泣きじゃくる私に彼は無理矢理作った笑みを見せて言う。
「大丈夫だよ……」
そんな彼を見て、私はもうやめて!!と叫びたかったけれど、あの魔族の狂喜に光る赤い瞳を見てしまっては私は何も言えなかった。
いえ、言う勇気がありませんでした。
ただただ恐怖に震えることしかできなかった。
魔族が去って行った時、私はどれだけ安堵したことか……
でもそれと同時に私へと倒れこんだケイト。
その時彼のお父さんがケイトの名前を呼びながらこちらに走って来ていたのが見えました。
ケイトが血だらけになって居るのを見た瞬間、血相を変えてこちらやってきました。
「ケイト!!」
そう言って血だらけのケイトの服を脱がした時、ケイトのお父さんの表情がさらに変わった。
どこか眉を眉間に寄せた、悲しげで、そして怒りの篭った表情。
私はその傷を見て唖然とするしかありませんでした。
両肩に肉を断ち骨を貫く様に空いた赤く染まった傷、同じように腰にできている傷。
右肩から左腰にかけて、みみず腫の様に肉が裂け、血が出てる背中。
誰もが目を覆いたくなるような光景。
「ケイト!死ぬなよ!死ぬんじゃないぞ!」
と必死な顔で回復魔法をかけ始めていた、ケイトのお父さんの目から流れていた涙を私は忘れることはできません。
- Re: 魔王のでし ( No.11 )
- 日時: 2011/08/04 11:18
- 名前: かんた (ID: bhOvtj9N)
そんな時もう意識の無いはずのケイトの唇が微かに、動き消え入るような声で呟きました。
「アリスは……僕が守るんだ、アリスは僕が守るんだ……」
まるで呪文のように何度も繰り返し、どこかへ消えていくような言葉。
「大丈夫だ…アリスは無事だから…無事だから死ぬな!ケイト!」
そう言って涙を流しながらケイトのお父さんは回復魔法をかけました。
それでもケイトはなお、弱々しい言葉で呟く……
「アリスは僕が守るんだ、アリスは僕が……」
「お前は偉いぞ!ちゃんと守りきったぞ!だから死なないでくれ!頼むケイト!」
もう涙をひたすら流しながら回復魔法をかけるケイトのお父さん。
しかし、いっこうに血が止まる気配がない。
私を守るためにこんなにボロボロになってる……
こんなに血を流してる。
小さな私でもわかりました。
遅れて駆けつけて来たのはケイトのお母さんと私の両親。
ケイトのお母さんがケイトが血だらけの状態を見て、目を見開き悲鳴に近い声で叫びました。
「ケイト!!!」
すぐさま近寄るとすぐにケイトのお母さんも泣きながら、すぐに回復魔法をかけ始めました。
「ケイト君!!!」
そう言って私の両親もすぐに回復魔法をかけ始めます。
そんな最中にもケイトは消え入りそうな声言う。
「アリスは僕が守るんだ……アリスは僕が……守るんだ」
「ちゃんと娘は無事だよ……だから死なないでくれケイト君」
私のお父さんは、そうケイトに言葉を投げかけながら涙目になりながらも回復魔法をかけ続けていた。
その間最後の最後まで……
まるで大切な呪文の様に言っていました。
「アリスは僕が守るんだ」
それから、ある程度傷がふさがったらすぐにケイトのお父さんがおんぶをして家に向かって走り出した。
その後をケイトのお母さんと私のお父さんがぴったりと付き添うように走って行きました。
私はお母さんの横で立ち尽くすよう、そんな光景をただ見ていることしかできませんでした。
呆然と4人の後ろ姿を見つめる私に、お母さんがゆっくりと足を家へと向けて、歩き出しながら、優しい声で尋ねてきました。
「アリス……何があったのかしら?」
私は同時に差し出された、お母さんの手をとりながら、お母さんの表情を伺うと真剣な表情をしていました。
「魔族に襲われました……
それでケイトが庇ってくれて……」
私はポツポツとあの時の状況を口にしました。
お母さんは私の話をただただ頷いて聞いてくれました。
そんな風にお母さんに話していると、自然と涙が溢れてきました。
私を庇って傷ついてしまったケイト。
私は何もすることができなくて……
小さな私でも分かりました。悔しくてケイトに申し訳なくて。
そう思いながら、話し終えると、お母さんは優しい笑みを浮かべながら頭を優しく撫でてくれました。
「ケイト君はあなたをちゃんと守ってくれたようね……」
最後の方涙声になりながら言うお母さん。
「うん……」
私はそう答えることしかできませんでした。
「彼はあなたの立派な騎士様ね……」
そう言って微笑むお母さんの目からは涙が零れていました。
「うん…うん…」
私はその言葉に泣きながら頷くことしかできませんでした。
騎士様の意味なんて、この時はあんまり理解なんてしていなかったけれど、ケイトみたいな人を指すんだと心の中で思いながら、自然と溢れ出てくる涙を洋服の袖で拭っていました。
- Re: 魔王のでし ( No.12 )
- 日時: 2011/08/21 12:57
- 名前: 山田 (ID: VmcrDO2v)
途中の名前かんたになっていますが僕がかいてます
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