二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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とある科学の超電磁砲 学園黙示録 第二章突入
日時: 2012/01/24 13:15
名前: 黒猫参謀 ◆1rAeLb3yOw (ID: Y8BZzrzX)

どうも、皆様初めして!黒猫参謀っつーもんでございます。
昨日、友達からここのサイト教えてもらってきたら何か一杯小説あるぜ!ということで、俺も一筆書かせてもらおうかな、なんて思っちゃったりしちゃいました。
二次創作OK!?ならば大好きなインデックスを書くのもありなんでねえか!?と友達に言ったらいいんじゃねえの?といわれたので作ることに。
えーと、完全オリジナルです。原作の登場人物の日常系に登場するキャラは友達として登場します。上条くんとかインデックスとか御坂さんとか。
んで、オリジナルならとことんやってしまえ!ということでオリジナル主人公まさかのレベル5!(原作でも序列6位いまだに不明なのでそこに入ります)
ああ、あとついでに主人公は一切闇の機関等には関係ありません。たんなる一般人です。魔術sideもあまり関係ありません。いいのかそんなんで…。でもよく事件には巻き込まれる…。更に黒猫、実は原作をあまり読んでない!アニメだけ!しかも中途半端!それでも読んでくれる方、貴方は神様です。
沢山のオリジナル、ありがとうございました!
おかげで何とか戦えます!コメントは引き続き募集中。




ようやく戻ってこれました。作者、実は夏から病気して今年頭まで入院しておりました。長い間更新できず申し訳ございません。まだ全快ではないのでゆっくり更新になりますが、引き続き書いていきたいと思います。

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Re: とある科学の超電磁砲 学園黙示録 第二章突入 ( No.187 )
日時: 2012/02/18 10:50
名前: 黒猫参謀 ◆HbpyZQvaMk (ID: Y8BZzrzX)




どもども、ご無沙汰してます霧火様。作者です。
そ、そんな裏話があったなんて!?実は悠一も雅さんに対して自分が暗部と戦っている間に、家族を守ってもらっているという強い罪悪感があり、そのせいで一歩踏み出せない、という裏話がございます。というか色々日常的に世話を焼いてもらってる事もあり、その分の負い目もあり、随分複雑になっているようです。ただ、彼女に強い信頼をしており、一番頼っているのもまた事実。それが好意になるのも最早時間の問題でしょうかwまぁ、紅波さんや金鳥さん、雪や茜との間で揺れる彼を見てみたいというのもありますが……悠一は結構臆病な部分もあるので、これからどうなるかお楽しみにしていてください。

Re: とある科学の超電磁砲 学園黙示録 第二章突入 ( No.188 )
日時: 2012/02/18 11:15
名前: 黒猫参謀 ◆HbpyZQvaMk (ID: Y8BZzrzX)





37話 VS上条当麻




マラソンの結果。1位、悠一、2位、綾野、3位、龍神、4位、紅波(強引に悠一が連れてきた)5位、雅。彼らは表彰され、更には順位が高いだけ賞金が学園都市から出ると言う。紅波は超能力者の中に一人だけ大能力者なのにランクインしていることを事実を知らない連中によって話を膨らまされ、大能力者同士の仲で一目置かれる存在になったのはまた違う話だ。





そしてこの体育祭一番の見所。能力者同士のバトルロワイヤルだ。
ルールは簡単。100人入れられたフィールド内で、制限時間中生き残ればいい。生き残るというと物騒だが、実際は隠れてるなり逃げるなりすればいいだけの話。
それだけのこと。そして勝ち残った能力者は更にランキング戦を勝ち抜き、最強を目指す。この大会の趣旨は日々の成果を周りにアピールすること。ここで上手くいけば、自分の未来は明るくなる。もちろん、上を目指すことも大切だが、ぶっちゃけ悠一には関係ない。
何せ99人の能力者をたった1分で全て叩きのめし、最強の実力を周りに見せ付けているから。幸い、知り合いはおらず、見知らぬ連中が悠一に襲い掛かり、それを迎撃していただけで終わったが。
今はランキング戦、初戦の相手をみて愕然としていた。
上条当麻。あの「幻想殺し」の。悠一、引きつった笑いを浮かべて苦悩していた。やばい、負ける。あの一方通行をガチでやってブッ飛ばしたような奴に勝てる自信なぞない。それは当麻も同じらしい。
真っ青な顔で辞退をしようとして、彼の学校の人間にダメだといわれてしまったらしい。彼は逃げようとして、警備の人間に捕まり、そして強引にここにつれてこられた。
戦うためにつくられた特設会場。そこで二人は対峙する。
観客は当麻に哀れみの視線を送る。まさか無能力者が最強の相手など出来ないと思っているらしい。それは現実を知らないから。実際は悠一の敗北色が強い。当麻は当麻で自分の敗北を悟っているのか、ぐったりした顔で悠一を見ている。

「上条。お前これ棄権してくれない?」
「したけどだめだった。初戦だから」
「マジかよ。俺絶対負けるから。多重異能だろうが消されたら単なる人間だから」
「そりゃこっちだって同じだよ。能力いくつも使われたら消しきれないし勝ち目無いし」
「……ごめんなー。俺も棄権しようとしたらふざけんなってせんせーに怒られた」
「うっわ……理不尽」
「だろ?なぁ、取り合えず俺たち協力してこの会場ぶち壊さない?」
「無理だろ?芙蓉、お前他の超能力者一人で相手できるのか?」
「出来るけどめんどいことになるかぁ……じゃあやめよう」
「お前何物騒なこと言ってんの……」

二人して諦めの境地。悠一は真面目な顔でこう当麻に言った。

「仕方ない。上条、俺本気で行くから。お前も本気で来いよ」
「え」
「試合って言ってもさ、お前が勝てば俺は色々やばいことになるし、お前が負ければ俺も俺で色々あるし。だからここで愚痴っても仕方ない。戦うぞ」
「ちょっ」

ちなみにもう試合はとっくに始まってる。観客からそろそろブーイングが飛んできそうだ。悠一は左手に黒い炎を灯し、当麻に言った。

「ここで大怪我しても俺を治療してくれた冥土返し(ヘブンキャンセラー)っていう名医がスタンバイしてるらしいから大丈夫だ。だから安心しろ。じゃあ、行くぜ上条!!」
「芙蓉待てええええ!!!」

当麻の制止を無視、空間移動を使わずに悠一は走り出した。どうせ使っても能力は聞かない。だったら下手な鉄砲数撃てば当たる戦法でいくだけ。

Re: とある科学の超電磁砲 学園黙示録 第二章突入 ( No.189 )
日時: 2012/02/18 11:50
名前: 黒猫参謀 ◆HbpyZQvaMk (ID: Y8BZzrzX)




38話 VS上条当麻 続編



「がっ!?」
「だぁぁ!!」

悠一の左拳が防御した当麻の右手に当たった瞬間——黒い炎が突如消えた。ガラスの砕けるような音が間近で聞こえた。そして当麻の反撃のアッパー。悠一の顎に直に入り、悠一は大の字に倒れた。やばい、脳震盪を起こしたか、視界が歪んでいる。いいヒットだ。当麻、何気に人体急所を狙うクセがついている。

「おい、芙蓉大丈夫かっ!?」

自分で殴っておきながら当麻は悠一を助け出す。観客が黙る。今の現実を呆けてみているようだった。最強に一撃を入れた?しかも最強がふらついている?ありえない現実。それが観客の目の前にあった。
ふらふらとする体で悠一は立ち上がった。
悪態をつく余裕くらいはある。

「いってー……上条、お前一体どんな喧嘩してんだよ……顎って人体急所……」
「あ、あぁ……悪い。いつものクセで」
「どんな、クセだよっ!!」
「だっ!?」

立ち上がり、取り合えず当麻の頭に倒れこむようにヘッドバット。当麻の眉間に悠一の頭が激突。当麻が悶絶し、悠一は特設会場の床とキスすることになる。どの道両者痛すぎる結果。
二人はしばらく悶絶し、悠一が先に立ち上がり、もだえ苦しむ当麻を捕まえる。そして馬乗りからのマウントポジション。

「げっ……」
「能力は一切使わねえよもう。どうせ効かないなら直接殴る」

そういい、邪悪に笑い、彼は顔を連続でビンタを始める。べしべしと叩きまくり、当麻の頬が見る見る間に紅くなる。

「いでででででででっ!!!!」
「この、人を、殺すつもりかっ!!」
「はなじぇ!!」
ドカッ!!
「おぅふぁ!?」

今度は両手で彼の頬を引っ張る。当麻も負けじと悠一の鼻面を右手で殴り、悠一は後方に吹っ飛ぶ。ごろごろと地面を転がり、その勢いで立ち上がる。
……端的に言えば、能力を封じた悠一は弱い。一歩通行と同じで、能力に頼った戦い方をしていたため、肉体的な喧嘩は弱い。身体能力は当麻より格段に上だが、当麻はそれを補えるだけの経験がある。今二人がやってるのは単なる高校生の喧嘩。割とマジの。

「ウォォ!!」
「甘ェ!!」

上条の右ストレート。それを掌で弾き、手首を掴み、こて返しの原理で地面に背中から叩きつける。つまり体術的に言えば、こういうことは出来るが喧嘩などには不向きで、しかも相手は喧嘩慣れしてる当麻。
すぐさま足元を水面蹴りで取られ、転んだ。
今度は当麻のマウントポジション。ボコボコ殴られるのを防ぎ、ふんぬっ、と力を込めて当麻を弾き飛ばす。
当麻も体勢を立て直し、殴りかかる。
悠一は当麻のクセ——右手に頼るそのクセを見抜き、今度は体を回転させ回避、そして勢いそのまま右の裏拳で勢いを殺せないままの当麻のこめかみにぶち込んだ。
一撃完璧に決まったにも関わらず、当麻はよろけただけで今度は左ジャブで悠一を殴った。呆けていた悠一はそれをもらいながらも、にやっと笑いその左手を掴み自分の方向に引っ張る。
当麻はガードできずに不用意に近付き——悠一のヘッドバットがまた炸裂する。当麻は後方に倒れこみ、悠一は荒い息ながら、当麻を見下ろす。やっぱり強い。単なる喧嘩だが、当麻は自分より断然強い。適応力も半端じゃない。先ほどのクセを見抜かれたことをいち早く悟り、左にやり方を変えてきた。この短時間で悠一の戦術予測を読むとは並大抵の出来ることじゃない。出来るのは一方通行や雅、あとは彼くらいだ。

「……いっててて。芙蓉、喧嘩も強いんだな」
「いや、お前の方が経験がある。俺はこういう喧嘩はなれてないし、能力が効かない相手には負けることが多いぞ。お前はこうして能力封印して対処してるけど」
「嘘だろ……インデックスの一件で、そこそこ強くなったと思ったんだけどな」
「安心しろ。一方通行だってブッ飛ばしてるんだろ?俺だってこのまま行けば多分負けてる。だから上条降参しろ」
「おまえ、自分が負けたくないから相手に降参強要するのかよ」
「このままじゃ俺も能力使うぞ?お前の右手って、処理能力が追いつかないと右手本体にもダメージあるだろ。現に、ほら。見てみろよお前の右手」
「?」
「さっきので少し火傷してるだろ」
「あ……ほんとだ」
「つまり、処理能力が追いつかなくて少し貫通したんだな」

悠一は腕を組みふむふむと頷く。当麻の右手はどうやら完璧じゃないらしい。『黒き爆炎』を受け止めたときは驚いたが、やはり処理が追いついてなかったらしい。当麻は自分の右手掌をみて驚いていた。気付いていなかったらしい。悠一はまた邪悪に笑う。

「全力全開の俺の能力を右手一本で防ぎきるのと、今ここで降参するの、どっちがいい?」
「……大人しく降参しておきます」
「よろしい」

普通の笑みに戻すと、悠一は当麻に手を伸ばした。

Re: とある科学の超電磁砲 学園黙示録 第二章突入 ( No.190 )
日時: 2012/02/18 15:05
名前: 黒猫参謀 ◆HbpyZQvaMk (ID: Y8BZzrzX)




39話 タッグ戦




次の日。まだ体育祭は続き、すごい盛り上がりを見せていた。
2回戦はタッグを組み、ダブルバトルで開催されるという。
悠一は初戦、当麻に苦戦しながらも勝ち、そして二回戦に進んだ。
そして、悠一の相棒となる人物は意外だった。

「……雪?俺の、相方が?」
「そう。兄さんの相棒は私がやる」
「……いいのか、レベル5が二人が組んでるけど」
「上層部の指示らしいわ。兄さんの能力の万能性を試したいから、わざと私を相棒にいたの」
「?」
「相手が相手よ。金鳥と、御坂先輩」

その言葉を聞いた途端、悠一の顔が青ざめた。雪も溜め息をつきながらぼやいた。

「金鳥一人なら私も何とかなるけど……御坂先輩、強いし。兄さん顔負けの汎用あるし。下手したら負けるわよ、私達」
「そういうことか……。汎用性と万能性を勝負させるってか」
「そう。実力を均衡させるために私が兄さんに味方することになったのよ。分かってくれた?」
「……御坂、か。まぁ、勝てるけどな」
「何言ってるの?相手だって——」
「あいつの弱点は電気を吸収すること。そういう能力者がいれば、あいつは何も出来ない。何も出来ないまま負ける」
「……」

怪訝そうな顔の雪の頭を優しく撫でながら言った。
その言葉には己の敗北などありえないと確信しているような強い説得力があった。

「俺にはそういう能力もある。使えるし、どうってことないよ。前と番って、俺だって強くなってる。雪、大丈夫だよ。俺は負けない」
「……しんじても、いいの?」
「お前の兄貴はそんなに弱いのか?違うだろ?」
「……そう、よね。兄さん、序列1位だし。負けないよね」
「おぅ。任せろ」

仲の良い兄妹は絶対勝つぞ!と気合を入れて会場に向かった。





「久し振りね……あんたとこうして公式戦で戦うのは」
「いや、初めてだから。前は単なる喧嘩だろ」
「そうだったっけ?まぁいいわ。多重異能……どんなもんか、見せてもらうわよ」
「来いよ、超電磁砲。お前の努力の結果、全部見せてくれ。俺も全力で相手するよ」
「上等じゃない!じゃ、いっくわよー!!」

試合開始。
まずは御坂の先制。自身を中心に電撃を解放、電撃を束にして槍のようにして発射。悠一も負けていない。

「『焼き尽くせ、黒き審判』」

同じく黒い電撃を解放、同じ手法で電撃の槍を作りぶつけた。
黒の閃光と蒼の閃光が火花を散らしてぶつかりあう。
そしてそのとばっちりを受ける二人。

「御坂先輩、加減を!!私達が戦え——」
「兄さん私のことも考え——」

バチバチバチッ!!
目の前で散った火花で二人は黙る。下手に介入したら、焼き焦げてしまう。
御坂と悠一は単純な力勝負をしていた。蒼と黒の電気がぶつかり合い、互いを食いつぶす。バチバチバチバチ——ここまで来ると一種の楽器のような音がする。
それをしばらく続けていたが、やはり先に悲鳴を上げたのは御坂。
徐々に蒼の電撃が黒の電撃に侵食されていく。だが。
何故か悠一は電撃を解除、そのままいなくなった。

「!?」

空間移動。御坂は白井で見られているため対処は早い。後ろを向く。だがいない。
悠一が現れる。真横だった。

「!」
「やっぱり、あの白井って子のクセついてるな。空間移動=背後を取るとは限らねえだろ、御坂っ!!」

御坂の腕を掴み、最大出力で放電。
黒い電撃が御坂を襲った。悲鳴すら上げずに黒き電撃に蹂躙され焼かれる御坂。そこに遂に金鳥が介入した。
足元から突如生える蔦、それが悠一の体に纏わりつく。

「あ」
「覚悟してください、多重異能」

金鳥の言葉は悠一の名前ではなく、能力名で呼ばれた。
悠一はこれは金鳥の本気であることを理解した。本気で倒すつもりだ。
ぐるぐると腕、体、顔、足と蔦がまとい付き、締め付け始めた。息が出来ない。
悠一はバランスを崩しその場に倒れ、御坂もぐったりして倒れる。
雪だって負けてはいない。巨大な氷塊を作り出し、それを手に演算中で動きの鈍い金鳥目掛けて振るう。

「兄さんに手を出すなぁっ!!」

普段の雪とは思えないほどの激昂。金鳥は防げずにわき腹に直撃、真横に吹っ飛んだ。
演算が途切れ、蔦が消滅し悠一がげほげほっ、と咳き込むところに雪が慌てて駆け寄る。

「兄さんっ!?大丈夫!?」
「はーっ……死ぬかと思った。あ、うん大丈夫」

兄を助ける妹の姿に観客は大いに湧いた。物凄い剣幕に思わず二人は身を縮める。だがそこに砂鉄で出来た鞭が飛来、咄嗟に雪を庇いその鞭の一撃を悠一は諸に受けてしまう。

「兄さんっ!!」
「……ごめん、油断してた、かも」

倒れこんだ悠一に真っ青な顔で近寄る雪。だが悠一のその言葉に反応、今度は彼女が悠一を庇うように御坂と金鳥に立ちふさがる。
悠一は戦闘不能になったと彼女は思っていた。実際、今悠一の体は滲み出た血で真っ赤な染みを作っているが。悠一には子の程度の痛み、どうということはない。
さて、この勝負、一体どうなるか……。

Re: とある科学の超電磁砲 学園黙示録 第二章突入 ( No.191 )
日時: 2012/02/18 15:49
名前: 黒猫参謀 ◆HbpyZQvaMk (ID: Y8BZzrzX)





40話 ブチ切れ雪、本気の悠一



「兄さんを……よくも……許さない、絶対許さない。御坂先輩も、金鳥も……絶対」

強い怒りで視界がどんどんおかしくなる。
頭が沸騰したように熱くなる。
彼女の怒りに連鎖するように、彼女を中心に会場の床がどんどん凍っていく。表面がただ凍るだけではない。それこそ剣山を逆さにしたような鋭利な刃先の氷が上を向き、間違えてそこに倒れこんだら体を貫通するような鋭さの氷が表面に幾つもできる。

「いった……本気でやるって言ったでしょ。なんだろうが、私を本気を出しただけ」
「大丈夫ですか、御坂先輩?……それに、悠一先輩はこの程度で死ぬような人じゃないでしょ、雪」

割とボロボロの二人は助け合うように立ち上がる。悠一の最大電力を受けながらもしっかりと立っているあたり、何回も修羅場をくぐっているだけの事はある。ただ、相手が悪いが。
頭に血が上った雪に、二人の言い分など通らない。
兄さんを傷つけた、それだけが今の彼女の真実であり事実。
会場一帯の気温まで下がり始めた。雪の能力が暴走を始めている証拠だ。冬にこの状態は流石に寒い。だが雪には関係ない。

「金鳥……さっき、兄さんが呼吸出来ないようにしたでしょ」
「……それが?」
「殺すつもりだったんだよね。じゃあもういいよ。今回は金鳥だろうが、知ったことじゃない。全力で殺してあげる」
「ッ」

雪が走る。周りには尖った氷を浮かべて。
御坂が迎撃の電撃を飛ばすが、それを喰らっても止まらない。御坂の顔が驚きに変わる。あの電撃は生物の神経を刺激して動けなくする電撃。それを受けて止まるどころか加速して走ってくる。
氷が発射される。物凄い速さだ。御坂の砂鉄の鞭、金鳥の蔦の鞭で叩き落そうとするが早すぎて不可能だった。次々と二人の少女の体に直撃、当たった箇所を瞬間凍結させる。
一発殴ろうとでも思ったのか、特大サイズの氷塊を作り出し、両手で持ち上げる。逃げようとする二人、だが足が動かない。視線を下にすると足が靴ごと凍って床に縫い付けられていた。しかも靴が抜けないように足首まで凍っている。
夜叉のような顔で迫る雪。そしてその氷塊を二人目掛けて放り投げた。
それだけではない。氷の飛礫を一瞬で大量に精密に作り出す。それも動けぬ二人に向かって発射。二人を襲った。






「はぁ……はぁ……まだよ。まだ、兄さんの仇はとってない。倒す、殺す、氷付けにしてやる……」

荒い息の雪。服は御坂の電撃で焦げ、両手は霜焼けを起こしていた。能力を暴走させた結果。自分にもダメージが残った。
頭が割れるくらい痛い。この痛みは能力負荷が限界突破した時の痛み。
それが今雪を襲う。立っていることがやっと、なのに雪はまだ能力を使おうとする。
御坂と金鳥は植物の籠のようなもので包まれていた。金鳥が直撃前に作り出した防御壁。それごと凍結し、中の二人は凍えているが。
雪は更にそこに吹雪でもぶつけようとして、意識が途絶え前のめりに倒れた——
筈だった。

「……?」
「随分派手にやったな、雪。お前一人で相手出来るんだな。いや、驚いた」
「に、兄さん……っ!?」

悠一だった。彼女をお姫様抱っこし、てろてろに力が抜けている彼女をみて笑った。瞬時に羞恥で顔が赤くなる。暴れようにも激しい頭痛で出来ない。

「よしよし、こんな限界以上に頑張る必要ないぞ。今、治してやる。『鳴り響け、癒しの鐘(メンタルベル)』」
「……?あれ?」

錯覚か、今鐘の鳴り響く音が聞こえた。キョロキョロと兄の腕の中で首を回すが鐘なんて何処にもない。
観客も一同にキョロキョロしている。そう、悠一の使った『癒しの鐘』の音が聞こえたのだ。この能力は体の不調を音によって回復させる回復系能力。これは悠一のオリジナルであり、本来は存在しない物だ。

「ほら、これでもう大丈夫。後は……」

雪を優しく下ろすと、悠一は凍結した籠に向かって叫んだ。

「御坂、柊!!今出すから、ちょっと伏せてろ!!」
『そんなこと出来ないわよ!!足首まで凍って——』
「あぁ?何言ってるか聞こえねえから行くぞー」
『ちょ、悠一さんすと」
「『滅せよ、黒き爆炎』」

滑らないように一歩下がり、能力解放。
凍りついた会場の床を溶かすような黒い炎が目の前一杯に広がった。
凍りついた床を加熱し氷を溶かす。籠を覆う氷を溶かすというより焼き、植物の籠まで焼き始める。中で二人が悲鳴を上げているが炎の爆ぜる音が大きくて悠一には聞こえていない。
悠一はというと。

「いっやーすげえな雪。お前この会場の温度まで下げて真冬——いや、これは地球上の極寒って言われるレベルまで下げようとしたのか。アブねえな、観客凍死するぞ」
「痛」

べしっ、と叩かれた。むーっ、と納得いかないと拗ねる雪。そんな彼女の頭を優しく撫でる。その時の悠一の言葉が彼女の印象に残った。

「お前が……こんな俺のために強くなろうとしてくれたんなら、お前もお前に追いつかなきゃいけないな」

その言葉の真意を聞く前に悠一は脱出した御坂に怒鳴られて聞けなかった。


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