二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
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- 残酷な天使のテーゼ エピソード0
- 日時: 2012/01/06 16:37
- 名前: noeru (ID: mW7zBAGR)
- 参照: http://s-tomoda@tcat.ne.jp
『あら、メリサおはよう。』 『エヴァさんおはよう!』
『メリサ、今日もお手伝いしてもらっていい?』 『はい!任せてください!!』
『メリサ、うちのシスターが喉風邪引いちまって・・・』 『大変!!後で薬草持ってお見舞い行くわ。』
『メリサ・・・』 『メリサ・・・』 『メリサ・・・』
『メリサ!!どうして死んじまったんだ!!』 『メリサ、メリサ!!』 『お姉ちゃん、メリサお姉ちゃん、死んじゃやだ!!』
『ママ・・・!!ママ、死なないで。ママ!!』
「ドロシー、起きなさい。ドロシー!」
「分かってるよ・・・」
朝日が差し込む。あまりのまぶしさに、ドロシーは目を細めた。
「今日は10年に1度の大祭の日よ!!あんたは今年、巫女に選ばれたんでしょうが!」
「・・・忘れてた!!!」
ドロシーはまるで漫画のように跳ね起きると巫女の服に着替え、髪をとかして神に祈りをささげた。そして母親の写真に「行ってきます。」と言い、広場へ急いだ。
広場は美しい飾りで溢れていた。つややかなサテンのテントには金の糸で豪華な刺繍がしてあり、村中の女たちが腕を揮って作ったご馳走をもっとおいしそうに見せていた。
ドロシーがうろうろしていると、ようやく巫女のテントが見えてきた。テントは裏方専用の古いテントだったが、ドロシーは派手なテントよりも小さなこの村にはこっちの方が合っていると思った。
テントにはもうほとんどの巫女が集まっていた。花屋の家の子もいたし、牛乳屋の子もいた。生まれてからずっとこの村に住んでいたドロシーにとっては、全員顔見知りだった。
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- 残酷な天使のテーゼ エピソード0 ( No.1 )
- 日時: 2012/01/07 12:52
- 名前: noeru (ID: mW7zBAGR)
- 参照: http://s-tomoda@tcat.ne.jp
ただ一人、ドロシーにとってそこにいてほしい人はいなかった。生き別れとなった双子の姉・カフィアがいなかったのである。カフィアは母が死んだときに父に引き取られた。しかしドロシーは母の弟夫婦に引き取られたのだ。
がっかりしているドロシーをよそに、長い長い説明が始まった。大祭の大事なメインイベントのときは村の赤ん坊から老婆まで、全ての女性は『天使の笛』を吹かなくてはならない。しかし選ばれた者以外はその音を鳴らすことはできない。順番が終わったらすぐに持ち場について、選ばれし者が笛の音を鳴らした瞬間に巫女の踊りを神に捧げるのだ、など・・・。
「それではこの大祭のメインイベント、『天使の笛』です!」
始まった。台座の前にはたくさんの女性がならんでいて、『天使の笛』はよく見えなかった。
「ねえねえ、今年は誰が選ばれるかしら?」
「さあ・・・でも私、選ばれてみたいけど選ばれたらどうなるのかしら。」
「知らないの?!あの笛に選ばれれば『天使の花嫁』になれるのよ!!」
「『天使の花嫁』?!」
きっと多分、巫女のほとんどが叫び声を上げただろう。そのくらい、『天使の花嫁』に選ばれることは光栄なことなのだ。
『天使の花嫁』はその名の通り、大祭の日に選ばれ『天使界』へと迎え入れられる存在である。しかしその天使は残酷で、10年ぴったりで愛が冷めてしまい魂だけを抜き取ると亡骸は地上に落とすのだ。けれども魂は『天使界』に残るので、最終的に天使になれる。
「はい、残念!次はカフィア・デスカさんです!」
カフィアだ。カフィアの番がきたのだ。
そっと笛に口をあてる。その時だった。
まるで柔らかい絹のような音色だった。でもどこか寂しげで、なんとなく懐かしい。そこにいる誰もが、この曲を知っているような気がした。
・・・終わった。
会場が喝采の拍手で包まれた。中には泣いている者もいた。ただそこに、カフィアの姿は無かった。
『カフィア!!カフィア、行っちゃだめ!!カフィア!!』
『もうやめなさい!カフィアの名誉を汚すでない!』
『あんなの名誉じゃないわ!なにが残酷な天使よ!!残酷なのはカフィアを見殺しにする皆よ!!』
『落ち着いて、ドロシー!』
『いやよ、いや!!絶対に絶対に・・・』
『カフィアを助けだす!!』
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