二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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めだかボックス『多能力保持者』
日時: 2012/01/28 23:51
名前: 朝鴎 ◆kwRrYa1ZoM (ID: 4CT2wXi/)

初めまして、朝鴎と申します。以後お見知りおきを。
めだかボックスの二次小説を書こうと思います。下手でキャラがぶれたりするかもしれませんが、生暖かいめで見てください。

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Re: めだかボックス『多能力保持者』 ( No.1 )
日時: 2012/01/29 00:07
名前: 朝鴎 ◆kwRrYa1ZoM (ID: 4CT2wXi/)

『だから私は』

 
 世界は残酷だ。運命は凄惨だ。人生は絶望だ。努力は叶わない。願いは届かない。想いは気付かれない。

 努力は才能に届かないし、真実は嘘に塗りつぶされるし、正義は悪に負ける。

 世界には少年ジャンプの漫画のような希望なんて存在しない。そこにあるのはただ虚しく無価値で無意味な絶望だけ。

 
 この世界は酷く不恰好だ。未完成であり不十分だ。何もかもが欠損している。


 だから私は『絶対』になる。


 世界に愛される絶対、『主人公』に。

Re: めだかボックス『多能力保持者』 ( No.2 )
日時: 2012/01/29 01:18
名前: 朝鴎 ◆kwRrYa1ZoM (ID: 4CT2wXi/)

『僕が』

 箱庭学園生徒会室は、目安箱に投書された依頼を一つ叶える度に花を一本ずつ飾っていく、という生徒会長黒神めだかの意向によって大量の花が置かれていた。役員達はやや邪魔そうにしながらも、今日も大量の書類を片付けていく。
 生徒会のメンバーは五人。生徒会長、黒神めだか。副会長、球磨川禊。会計、喜界島もがな。書記、阿久根高貴。雑務、人吉善吉。
 副会長の球磨川はつい数日前までは黒神めだかと対立していたのだが、意外とメンバーの中に混ざれていた。
 
『そういえば、めだかちゃんは?』

 手元に置いてあった書類が片付いたようで、球磨川が背伸びをしながら隣に座っている善吉に話しかける。現在、生徒会室にめだかの姿は無い。球磨川に話しかけられた善吉もめだかが不在の理由を知らなかった様で、首を傾げている。

「今、めだかさんは学園内の設備に不備が無いか見回っているよ。不知火理事長が直々にめだかさんに依頼したらしい」

 不知火理事長。本名、不知火袴。善吉の友人である不知火半袖の祖父に当たる人物だ。

「理事長直々かよ…。またなんかあるかもな」

 善吉が苦い顔をする。不知火理事長は天才を生産する計画、『フラスコ計画』にめだかを参加させようとした黒幕的な存在だ。また何か企んでいるかもしれない。
 

「その通り。まだ『フラスコ計画』は終わっていません。今日、再び新しく始まるのですよ」
『「「「っ!?」」」』

 その声が聞こえた瞬間、善吉達は生徒会室に大量の人間が入り込んでいることに気が付いた。今まで気付かなかった事が不自然な位の人数。それが善吉達を囲んでいた。

「い、一体いつの間に!?」

 役員誰一人として気が付かなかった。異常だ。
 大勢の中で一人だけ、異様な雰囲気を漂わせている男が居た。めだかの持つアブノーマルの様な、球磨川の持つ過負荷のような、それらとは違うような、異様な雰囲気。
 スラリと細長い身体、オールバックにした長い髪、そして眼鏡を掛けていた。さっきの声は恐らくこの男から発せられた物だろう。

「てめえら一体何者だ!」

 善吉が身構えながら男達に怒鳴る。他の役員も臨戦態勢に入り周りを警戒している。男はその様子を見て優しげな微笑を浮かべながら口を開いた。

「申し遅れました。私は土岐啄木鳥(とき きつつき)と申します。以後お見知りおきを」

 男は役員達に向かって深々と頭を下げる。この緊張した空気の中で土岐の行動は浮いており、彼の異様さを強めていた。

『さっき、フラスコ計画がどうとか言っていたけど、どういう事?』

 球磨川が土岐に向かって尋ねる。それはまるで親しい友人に話しかけるような気安さで、またそれが球磨川も普通の人間では無い事を現している。何故なら彼は−13組のリーダーにして最凶の過負荷なのだから。

「そのままの意味ですよ、球磨川さん。しばらく前に貴方方によって潰されたフラスコ計画は、今日、再び始動するのです」

 土岐はクツクツと喉を鳴らしながら笑う。

「そこで今日、ここに来たのは貴方方を仲間になるように誘うためです。“私達”と共に黒神めだかを倒しませんか?」

 黒神めだかを倒す、その言葉を聞いた瞬間、善吉と阿久根は動いていた。物凄い勢いで土岐に向かって突っ込んでいく。

「「!?」」

 だが、彼らは土岐にぶつかる前に何かに弾かれ勢い良く吹っ飛んでいく。机に激突し、書類が一面に散らかってしまう。喜界島はパニックになりあわあわと二人に駆け寄っていく。球磨川は何も言わず、不気味な笑みを浮かべながら土岐の様子を観察している。

「さて。あまり時間が無いので最後にもう一度だけ聞きますね。私の仲間になりませんか? ならないと言うのなら、貴方達にはシナリオから退場してもらうことになる」

 土岐が笑みを浮かべたまま役員達に問い掛ける。土岐の後ろにいる連中は善吉達がノーと答えた瞬間に飛び掛ってきそうな雰囲気を出している。それでも起き上がった善吉と阿久根、喜界島は声を合わせて叫んだ。


「「「断る!!」」」




「じゃあ、退場してもら————」

 土岐が後ろに控えている者に指示を出そうとした一瞬前、何本もの螺子が善吉達に向かって投げられた。それが両手両足の服を貫通し、生徒会室の壁に身体を縫い付けてしまう。善吉は『欲視力』を発動して、かろうじて螺子を回避していた。

「どういうつもりだ! 球磨川!」

 螺子を投げつけたのは球磨川だった。
 球磨川は両手に大きな螺子を持ったまま仄暗い笑みを浮かべて善吉を見ている。

「ほう……−13組を率いる男、球磨川禊。貴方を見誤っていたようですね。貴方は賢い」

 土岐が微笑みながら球磨川にそう言った。

「なっ……まさか、てめえ裏切ったのか!」

 善吉が球磨川に怒鳴る。球磨川はそれに臆した様子も無く、笑みを浮かべながらこう言った。

『やだなあ善吉ちゃん。闇討ち不意打ちだまし討ち、僕の専売特許だろ? 忘れて貰っちゃ困るなあ』
「ふざけんじゃねえ! 改心したんじゃなかったのかよ!」
『改心?あは。善吉ちゃん。本当に忘れちゃったのかな』



『僕が一体誰なのかを』






 

Re: めだかボックス『多能力保持者』 ( No.3 )
日時: 2012/01/29 22:41
名前: 朝鴎 ◆kwRrYa1ZoM (ID: 4CT2wXi/)

『安心しておいてね』


 −13組のリーダーにして負完全。最凶最弱、最低最悪の過負荷。
 球磨川禊。
 箱庭学園のエリートを皆殺しにするために転校してきた男。
 

 生徒会戦挙で黒神めだかに敗れ、生徒会に入った。
 だがしかし、しっかりとめだかに勝てて幸せになれたとはいえ、生徒会副会長になって仲間になったとはいえ、彼は彼そのままだったのだ。

 過負荷、球磨川禊。



『えーっと、土岐さん。取り合えず君に仲間になろうと思う。だから新しい仲間として、善吉ちゃん達は僕が螺子伏せるね』

 球磨川は裏切ったことに何も感じていないようで、いつも通りの笑顔を浮かべながら土岐にそう言った。仲間を裏切ったというのに、何も無かったかのようなこの態度。まさしく過負荷。常人ならば面と向かって会話することも出来ないような、気持ち悪さ。

「そうですか。では是非お願いしますよ。貴方の実力を見せてもらいます」

 土岐啄木鳥。
 過負荷である球磨川に対して全く物怖じした様子も見せず、穏やかな笑みを浮かべてそう言った。やはり彼も『普通』の人間ではないのだろう。

(クソ、あの球磨川を一瞬一秒、刹那でも信用した俺が馬鹿だった!)

 それに対して人吉善吉は『普通』の人間だ。『欲視力」というスキルを持っていたとしても根本ではどこにでも居るただの高校生。球磨川の様子に顔を顰めながら戦闘体制を取る。

『んー。さてと善吉ちゃん。そういう訳だから螺子伏せさせて貰うね』

 球磨川がどこからか巨大な螺子を二本取り出す。彼の武器はプラス螺子だ。対して善吉の武器はその身一つ。母親から習ったサバット、足技で戦うのだ。
 善吉向かって球磨川が二本の螺子を投げつける。向かってくる螺子を善吉は横にステップして回避し、そのまま球磨川に向かってダッシュする。もともと大した距離も無かったため、善吉はすぐに球磨川の側まで近寄り、腹に向かって強烈な蹴りをお見舞いした。

『う、ぐ』

 球磨川はその勢いで吹き飛び、生徒会室の壁にぶち当たる。そのままグッタリとする球磨川だが、善吉は気を緩めない。知っているからだ。球磨川という男がどのような人間なのかを。彼の前に立つなら一瞬一秒、刹那でも気を緩めてはいけない。
 グググ、っと球磨川がおもむろに立ち上がる。ゆったりと気持ち悪く起き上がるその様子は、まさに夏休みに見たそれそのものだった。

『……善吉ちゃんも酷いねえ。手加減無しなんてさぁ』
「カッ、裏切った奴がよく言うぜ。戦挙の時は油断したがもう同じ手は喰らわねえぜ球磨川!」

 善吉はそう言いながら球磨川に攻撃を仕掛ける。連続で繰り出される足技に成すすべなく蹴り抜かれる球磨川。技が出尽くしたとき、球磨川はグッタリとして善吉に倒れ掛かる。その耳元で、小声で球磨川は善吉に話しかける。

『今、この状況じゃ僕達が負けるのは間違えない。だから僕が油断させて後ろから螺子伏せるから、善吉ちゃんはその時にサポートを頂戴』
「っ!?」

 球磨川のその言葉に善吉は目を見開く。今までのは演技だったというのだろうか。そんなわけが無い。球磨川は堂々と裏切るような男だ。だが、しかし————。

『あは、善吉ちゃんは学ばないねえ』

 次の瞬間、僅かに警戒を解いた善吉の胸に螺子が突き刺さった。

「ぐあ!?」
『でも、安心しておいてね』

 球磨川はぐら付いた善吉を突き飛ばし、そこへ何本もの螺子が襲い掛かる。善吉は対応できず、その全てを螺子込まれてしまう。

『「大嘘憑き」は取り戻してあるからさ』

 球磨川の過負荷、『大嘘憑き』。安心院なじみに貰ったスキルを改悪して作った過負荷。戦挙の時に球磨川の始まりの過負荷『却本作り』と交換してなくなった筈の過負荷。だが球磨川は後に残った『大嘘憑き』の欠片をかき集め、無理あり過負荷を作り上げたのだ。

「く、そ」

 善吉はそのまま床に倒れこんだ。

『これで良いかな? 土岐さん』
「ええ。上出来ですよ、球磨川さん」


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