二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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テニスの王子様〜年上彼女の事情〜
日時: 2012/02/25 19:56
名前: ItsO (ID: QYM4d7FG)


「よし、出来た!」
私はそう声を出して、そっとアイロンを引きはがす。出来た出来た。
しわひとつないズボンができた。
私は誰もいない1Kで、にまにましながら
昨日のことを振り返る。
昨日年下の彼氏が初めて我が家に来た。
今まで散々「そういうのは結婚してからです!」とか「あなたそんなに俺を誘うなんて舐めすぎですよ?」とか憎まれ口をたたいてきたのに、部活の後に【雨宿りがしたい】なんてメールをしてくるなんて、まったく憎たら愛おしいちびだと思う。いやちびといっても身長はもう抜かされてるんだけど。
おまけにあっちは武道もやってるから、圧倒的に力も強いし。
まあそんな訳でその例のちびが我が家に来た。5歳以上年下のちびは最初は戸惑っていたけど、そのうち慣れてきたのか足を伸ばしテレビを見ながら寛いで、最後には(シャワー貸して下さい)まで言ってきた。
どうぞと私。こんなこともあろうかときちんとお風呂は洗っておいたのだ。
「タオルはここね。あ、体冷えたろうし湯船に浸かってのんびりしてもいいのよ」と私は笑ったが、ちびはむすっとしたまま「いいです」と首をそむけた。
その背けたうなじが本当にセクシーだと思う。まだ14だから、肌がつやっとしていて、でも
男らしいたくましさがあって。
あれに腕を回したらどうなるのかなーと考えこみ立ち尽くしていたら、仏頂面のちびに
「早く脱衣所から出てってください」と叱られた。

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Re: テニスの王子様〜年上彼女の事情〜 ( No.5 )
日時: 2012/02/25 20:01
名前: ItsO (ID: QYM4d7FG)



しかし、私は正直だった。
「いや、別件で来たので大丈夫それじゃ」
「待ちな」
これに跡部はたいそうプライドが刺激されたようだった。
「俺様に声をかけられて乗らねえとは許さねえ。どうだ、この後デートに付き合えよ。そうじゃなきゃお前が見に来たって男を叩き潰してやるよ。さあ、どいつだ?」
「やめなさいよあんた王様なんでしょう。何でも手に入るじゃないの。私くらい見逃してよ」
「そうはいかねえ」
跡部は私の手を取って、そっと口元に運んだ。
「王はどんな女を欲しがってもいいんだよ。たとえ誰の女でもな」
逃げられない…私は口を閉じ、いたしかたなく暴力に訴えて脱走を図ろうとした。
その時、
「部長…!」
彼の声が聞こえた。

Re: テニスの王子様〜年上彼女の事情〜 ( No.6 )
日時: 2012/02/25 20:02
名前: ItsO (ID: QYM4d7FG)


「早くコートに入ってくださいよ。みんな待ってますから」
若は飽き飽きしたように言った。が、その目が時折私を見る。
「ふうん…」
跡部はにやにやしながら私と若を見渡した。
「いやだ、と言ったら?」
跡部は不敵に言い放った。
「俺はこの女が気に入ったんだ。お前はとっととコートに戻っていい。ほうっておけ」
これに若は目を尖らせた。
「そうはいきませんよ。確かにこの人は美人ってほどでもないでしょうけど」
そう言うなり私を抱き寄せ、腕の中に入れた。
「俺のものですからね」

Re: テニスの王子様〜年上彼女の事情〜 ( No.7 )
日時: 2012/02/25 20:04
名前: ItsO (ID: QYM4d7FG)


にらみ合う2人に私はすっかり正気を失いかけた。観衆はこの静寂にすっかり目を奪われている。最悪だ。
「何なら、俺様と今から勝負するかあーん?」
「どうしても先輩がひかないのなら、そうなりますね」
「やめて日吉!この人強いんでしょう!やられちゃうわよ!あたしのために争わないで!」

昼ドラあたりでよく発されるセリフを、私はまじめな顔で言った。しかし日吉は聞かない。
「1セットマッチでいいですね」
そうしてコートにずかずかと入っていく。
「いい度胸じゃねえか」
それに対する跡部も、傲岸な顔で見下ろして
コートの中に入る。
百を超える観衆も止めにきた体育の先生さえ黙って見守っている。
私は手すりに身をもたせないと
今にも倒れそうであった。
その胸のうちを知らずに審判は朗々とした声で告げた。
「1セットマッチプレイ!」

Re: テニスの王子様〜年上彼女の事情〜 ( No.8 )
日時: 2012/02/25 20:05
名前: ItsO (ID: QYM4d7FG)


そして今若は私の膝にいる。
頭を乗せ、濡れたタオルを目にあてて、
何を隠そうとしているのだろう、この
ちびすけは。

「ね、タオルなんか取っちゃったら」
「いやです」
「どうして?」
「…男が女に泣き顔なんか見せられますか」
若は強い口調で言い切って、それからしばらく黙っていた。

若は負けた。完膚なき程までに負けた。
若も強くなっていたが、跡部もまた驚異的な進化を遂げていたのだ。
最後は必死にボールをすくう若を見ていられなかった。

若の必死さに、跡部も許してくれたのだろう。
ふらふらの若と私を、
ハイヤーで家まで送ってくれた。
なぜか気を効かせて、私の家へ。

外は薄い雲に光がこもって、
雨が降るとも、光が射すともいえない模様に
なっている。
そこに無音のまま2人でいると、
とても静かで、2人だけの世界に住んでいる気分になる。
「ねえ、なみさん」
「なあに」
しばらくして若が口を開いた。
タオルはまだかけたままである。
「手、貸してください」
言われるままに手を伸ばすと、
若は赤い頬をしてそっとそれを
額に当てた。即座に私は言う。
「風邪引いたね若」

Re: テニスの王子様〜年上彼女の事情〜 ( No.9 )
日時: 2012/02/25 20:06
名前: ItsO (ID: QYM4d7FG)



ぷつぷつとお粥が息を立てるのが分かる。

若はベッドにまどろみ、私はそれへ粥を作っていた。
熱を測らせたら38℃もあったのだから
驚きだ。
とにかく少し休ませて、それから跡部が引き取るというので跡部に若をお任せすることにした。

だからそれまでは、私一人の若だ。

粥の煮立つ間、
私は若の額とほほにキスをする。

「…うつりますよ」
「いいわよ。そしたら若がエプロンかけて看病してくれたらいいから」
「俺の看病は手荒いですよ」
「あら、どんなの?」
私がわざと肩をそびやかすと、若は
急に腕を引いて私をベッドに引き込んだ。
「こんなのかな」
「やめて。あんた病人なのにひどくなっちゃうでしょ」
「かまいませんよ。それであなたを一人じめできるなら」
若は私のシャツに手をかけ、耳元へと口をすり寄せた。
「死んだってかまわない」
私はあほらしくなって、若の頭を撫で、そっと囁いた。
「私は困るから、出してくれる?」
「どうぞ、ご自由に」
そういいつつも若の強い力は外れない。
私は諦めて若の首筋に腕を回した—。


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