二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 銀魂「市女笠篇」【100参照記念イラ公開しましたー】 ( No.20 )
日時: 2010/02/15 14:26
名前: コナ ◆Oamxnad08k (ID: DM8Mw8p7)

それから数十分経った頃。
「遅いですねぇ、八重さん」
新八は、心配そうな表情を浮かべお茶を啜る。
「あーきっとあきらめたんじゃね? 俺たちみたいによォ」
銀時は重たい瞼を擦り、ジャンプをめくりながら適当に言う。
「そんな人間じゃないと思います八重さんは、必ずここに来ると僕は信じています」
「ケッ、女は見た目だけ判断するもんじゃないアル」
「アンタらの頭の辞書に人を信じるって言葉…載っていますか?」
「それによーもう厄介事に巻き込まれたくねぇーよ、面倒くせぇーよ。
 アニメも終わって空知の背の荷が少し降りて一息ついた所なのによー、また銀さんに変な事させるのかコノヤロー」
「オイィィ!! ファンの方に失礼だろうがァァ!! アンタ本当にジャンプの主人公?!」
「でもコノの話は原作者及び関係者とは無縁ネ、ただの高校生が書いた駄作小説アル」
「恋愛物読んでいる読者様の夢ぶち壊しじゃねぇーか!!」
「しっかしよ最近のガキは盛んなこった、漫画のキャラと創作したキャラを自分に置き換えてベットの上で初夜迎えたり××や△△してる事を想像してニヤケてんだろ」
「盛んなのはお前だろがァァァ! 失礼極まりないわ! これ以上卑猥なこと言ったらスレッドごと削除されますよ!」
「第一訓書いた時点で消されてないから大丈夫アル」
「大丈夫じゃねぇーんだよ!」
「兎に角、俺はもうごめんだからな」

銀時は白熱してきた口論を打ち切りジャンプを机に置くと、テレビのリモコンを押す。
たまたま掛けたニュース番組は『市女笠』出現の話題で持ちきりだった。
「また出たか…アイツ見つかったのか」
銀時の呟きを聞いて、新八も神楽もテレビにかじりつく。
「本当だ被害者は一人ですね、」
「銀ちゃーん、八重は大丈夫アルか?」
「大丈夫だろ、被害者は真選組の隊士だって言ってるし」
「…でも」
「神楽ちゃん…」
そんな二人の様子を気にせず銀時は「消すぞ」と言ってテレビを消した途端戸に何かぶつかった音が響く。

「……!!」
三人は一斉に振り返る。
何回も戸を叩く音が聞こえる、確証はないが恐らく八重だろう。
激しくノックしているということはきっと何か危機的状況に巻き込まれたかもしれない。
「八重さん?」
新八がそう呟いて駆け出すそれに合わせて二人も後から続く。
「八重さん! どうしたんで・・・ブッ!!」
新八は戸を勢いよく玄関の戸を開けるなり、顔に黒い塊がダイブする。
あまりの勢いだったので新八はスローモーションで再生したように倒れた。
「八重がぁ八重が大変やぁ! 空に変なもんが飛んどるし! もういややぁ!!」
何かの正体はヘンテコだった。
「落ちつけアル、ヘンテコ! 八重に何があったアルか?」
慌てるヘンテコは神楽の方を向くと、直ぐに胸に飛び込む。蹴られた新八の苦しむ声を無視して。
「八重がァァァ! 連れ去られたー!」
「誰にだ?」
銀時は冷静にヘンテコの叫びに問う。
「可乃達や」
「達って、オイオイ『市女笠』は誰かとグルだったのか?」
「せや、今は色んな事あり過ぎて頭整理つかへん!」
「兎に角一旦中に入って落ちついてから、話してもらいましょうよ」
起き上り鼻血を垂らす新八に言われた三人は、万事屋に入った。
上空には戦艦が数隻江戸城に対峙して留まっている事を三人は知らなかった。

「成程ね…また高杉のヤローか」
「か弱い女の子を人質にするなんて卑怯アル」
ヘンテコの説明を受けた二人は次々口を出す。
「本当ですよ…次の襲撃っていつなんですか?」
「わからへん、ただ…こっちに向かう途中空にでっかい船がいくつも浮かんでいたで」
「まさかもう襲撃準備でも」
「んなワケねぇーよ…だいたい考えてみろよ、昨夜ギリギリになって攻めるんだ?
 そんなでけぇー事になってんならニュースでもやっているだろ?」
銀時は半信半疑、怪訝な表情を浮かべ再びリモコンに手を伸ばしスイッチを入れる。
『今の状況はどうですか? 渡辺アナ』
スタジオ画面から、逃げまどう人々と渡辺アナと呼ばれた女性がマイクを持ってカメラに向かい淡々と話し始めた。
『はい。突如現れた謎の戦艦は江戸城に向けて止まったままです。現在、城下町区域の住民に避難勧告が出され、真選組もこちらに向かっているとの情報です。
 また大きな動きがあったら中継を繋ぎます。』
『はい。ありがとうございました』
右上に“緊急中継“とテロップが載っているテレビ画面はそこで切れた。
真っ黒な画面に映るのは、リモコン握った銀時が冷や汗を流し絶望に染まった表情を浮かべる姿だった。

第七訓「ニュースはきちんと最後まで見ろ」
新八と神楽はこれを見るなり俊足で窓を眺める。
「本当だ…これはやばいっすよ銀さん」
「銀ちゃーんまた厄介事に巻き込まれたアルな」
「……」
銀時は神楽の言うとおりショックのあまりリモコンを落とす。
窓からアナウンスのメロディーが流れ、町長は告げる。
『歌舞伎町の皆様にお知らせです現在警察庁から避難勧告が出されました、至急大江戸公民館へ避難してください』

「銀さん…どうしましょう」
「銀ちゃん!」
銀時に振り返る二人はどよめいている。
「……しょうがねぇーな、余計な仕事増やしやがって」
銀時は、木刀を腰に差して立ち上がり玄関に向かう。下階したの騒がしい足音がこちらに向かってくる。
「お前さん達急いで荷物まとめて避難しな、ここが火の海になるかも知れないんだよ!」
家主であるお登勢が玄関で叫んでいる所を銀時は遭遇する。
「その必要はねぇーよババァ」
「まさかアンタあれを止めにいくんじゃないだろうね?」
「心配するな俺はただ…散歩するだけだ」
「散歩で誤魔化して…また無茶でもするのかい? アタシは素直に避難した方がいいと思うね」
確かにお登勢の言うとおりだが八重が人質とられていることを知ったら、お登勢は銀時達を止めたのであろうか。
「まだ避難してねぇー奴がいるんだよ」
そう銀時は捨て台詞を吐き、止めようとするお登勢をよけ万事屋から出た。
「銀時…」
「お登勢さんすみません、依頼者があの戦艦にさらわれたかも知れないんです」
「ヘンテコの為に八重を助けなきゃいけないネ」
木刀を差す新八とヘンテコを肩に乗せ傘を差す神楽は凛々しい表情を浮かべ銀時に続く。
「皆さんほんまに感謝します」
ヘンテコは自らの危険を顧みず飼い主を救おうとする三人に感激しその印として神楽の頬をすり寄った。



「たく手間かけさせて…」
「っ…」
「次逃げ出したら殺すからね」
血を欲するように煌めく刃先を全身を縛られた痣だらけの八重の喉元に向け、納刀する可乃。
「ようやく討てる…仲間と父上の仇ィ! 全て奪われた気持ちをたっぷりと味あわせてやる…ククククッ…アハハハハハ!! アハハハハ!!」
整った顔立ちは憎悪で醜く歪み、瞳孔を開いたまつ毛の長い黒真珠のタレ目は狂気に満ち溢れていた。
最早面影のない可乃を乗せた戦艦と八重は静かにその様子を眺めていた。