二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: バトテニ-無駄な感情- ( No.165 )
- 日時: 2010/02/26 18:06
- 名前: 亮 (ID: 2nrfRM.C)
78 偽りの死
中務と香澄達の間に、微妙な空気が流れる。
香澄達は何も言わなかった。
もう、抵抗の仕方も思いつかない。
中務は、度々ため息をついた。
香澄達が居るのは森の中心の辺り。
中務が、こちらの様子をうかがっていた塔は、少し離れている。
一体、何処から手塚が現れるのか。
もう、死んでしまったハズなのに?
中務は、また自分たちをマインドコントロールしようとしているのだろかう。
色んなコトが、頭の中を駆けめぐる。
・・・後から思えば、どうしてこの時に逃げようとしなかったのか。
逃げようにも逃げられなかったのだろうけれど。
パァンッ
もう1度、大きな銃声がした。
それは、中務の足に当たる。
「なんだ?」(宍戸)
「足に、銃弾が・・・」(リョーマ)
「何が起こってんだよ?」(桃)
混乱する。
もう、自分たち以外、誰も居ないはずなのに。
「全員逃げろ! 急げ!」
草陰から聞こえた、聞き慣れた声。
もう聞けない、そう思っていたのに。
・・・どうして?
「部長・・・?」(桃)
「何をしている、早くしろ!」(手塚)
色んなコトが訳が分からない。
手塚は出てきて、動けない中務から、ボタンを奪う。
「すみません。 しばらく、このままで」(手塚)
初めてだよ、君たちみたいな子供は。
「やっぱり、生きていたんだね。 手塚クン」(中務)
「やっぱり?」(手塚)
「大人を、甘く見るもんじゃないよ」(中務)
「・・・」(手塚)
手塚は一呼吸をおいて、再び口を開いた。
「再び、戻ってくるつもり何て、無かったんですけどね」(手塚)
その言葉を聞いた中務は、小さく笑った。
昔の自分を、重ねていた。
分かるよ、君たちの気持ち。
全部経験したんだから。
大切なコを守りたいと思うこと。
置いて逝かれる辛さ。
そして・・・残った後のことも。 全部。
「何処へだって、逃げなよ」(中務)
リサ、君の望む、俺は何処にいる?
走る。 走る。 海へ向かって。
禁止エリアなんて、関係ない。
首輪は、とっくにはずれていた。
桃達は、1度だって足を止めたりしなかった。
手塚部長が与えてくれた、最期のチャンス。
コイツを守る、最後のチャンス。
優勝者は、お前だ。 香澄。
「何処へ行くの?」(香澄)
香澄は導かれるままに走る。
「大丈夫だ。 もうすぐ、助かるんだぜ」(桃)
香澄も、強く頷く。
そんな香澄を見て、桃は罪悪感を隠しきれない。
それをかき消すように、更に続ける。
「帰ったらよ、テニスするぜ。 もう何日もやってねェからな」(桃)
桃の話を、跡部や宍戸、他の皆も静かに聞いた。
桃の心の内は、痛いほど分かった。
もうすぐ“帰れる”んじゃない“お別れ”だ。
逃げるのは、キミだけだ。
「教えてやるよ、テニス。 ダンクスマッシュとか」(桃)
「あんなの、出来ないよ」(香澄)
香澄は、小さく言った。
まだ、桃達の考えていることが分からない。
中務には、分かっていたんだろうか。
「キミが気がつかなきゃ」
あの意味が、分からない。
何に気付というの?
「何でだろーな・・・ 乾汁が恋しいなんてよ」(桃)
桃がしみじみという。
「作ってあげるよ」(香澄)
桃は笑った。
香澄も、はにかむ。
これが、最期。
「中務が裏切った?」
「はい、連絡が取れません。 それどころか、首輪も取れています」
「子供達に、情でも芽生えたか」
「こんなコトだろうと思ったわよ」
「あの男の時と、パターンが似ているからな・・・困ったモンだ」
「所詮、アイツも、BRの対象者だ」
「今更被害者ぶるのね」
「これだから、子供は恐ろしい」