二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: バトテニ-無駄な感情- ( No.71 )
日時: 2010/02/06 19:17
名前: 亮 (ID: 2nrfRM.C)


 61 追い打ち



放送が終わった。
これで、4日目も残り半分。

「不二が、死んだか・・・」

運良く、この木陰は初日から禁止エリアにはされず、
俺たちはずっとこの周辺で隠れていた。
木が大きく、雨もあまり当たらない。
俺は、ふと隣で寝てしまっている相棒を見た。
とは言え、俺が寝かせたのだが。
俺の武器は、ただ1つ。 睡眠薬。
もうすぐ、その効果が切れてしまう。 その前に。

相棒の武器、拳銃を手に取る。

「俺は、絶対人を殺さない。 だから、こんなモノ必要ないよ」

強く言いはなった、彼の言葉が蘇る。

お前に、生き残って欲しい。
だから俺は、お前を守るために、これを使う。
俺は死ぬけど、お前だけは・・・生き残ってくれ。
なんて、ただの口実で。
本当は、ただ、お前が苦しみ、悲しみ、死んでいく様を見たくないだけ。
弱い俺を許してくれ。

さよなら。



パァンッ・・・



どこかで銃声が鳴った。
香澄達は、一斉に辺りを見渡す。
ここにいないのは、真田、英二、大石、の3人。
一体、誰が誰と殺し合うというのか。
残り時間が少ない。
次第に焦ってくるこの状況では、殺し合いが起こるのは自然なことなのか?

「行ってみますか? 禁止エリアで島の中心に集められていますから、結構近いですけど」(赤也)

赤也はレーダーを見ながら全員に向かって言う。

「見ないふりをするわけには、いかねーだろ」(宍戸)
「ですね」(桃)
「行くぞ」(跡部)

誰が何処で戦っていようが、関係ない?
自分さえ生きれればそれでいい?
そんな考えの人なんか、ここには何処にもいない。

これは、私たち全員の問題。

不二の死で絶望していたリョーマも、再び立ち上がった。
いつまでも悲しみに浸ってはいられないのだ。
不二自身も、そんなことは望まない。

リョーマを、香澄は心配そうに見つめた。
このゲームが始まってから、今まで見たことのないリョーマを幾度となく見ている。
いつも自信に溢れて、不敵な笑みを浮かべ、生意気なリョーマ。
だが、そんなリョーマはまだ見ていない気がした。

「何スか? 香澄先輩」(リョーマ)
「何でもないけど・・・」(香澄)

心配してた、なんて少し照れくさくて。
ウソを口走る。

「・・・俺は、大丈夫ッスよ」(リョーマ)
「え?」(香澄)

「おいッ はぐれんなよ! 2人とも!」(宍戸)

立ち止まっている2人を、宍戸が大声で呼ぶ。
リョーマはため息をつき、返事をした。

「はいはい」(リョーマ)

大丈夫。
彼は強い。
心配なんて、無要だね。

赤也を先頭に、香澄達は走り出した。



目を覚ますと、そこには。
血が汚れた、自分の手。

「何だよ・・・コレ・・・」

誰の血?

「どうして、こんなコトに・・・」

誰の血か、なんて隣を見れば分かるのに。

「何が起こって・・・」

自分の手から目を上げられなくて。
でも、起こった現実はこの手に着いた血が物語っていて。
何が起きたか、すぐに把握できてしまう。

現実から、逃げられない。


「大石ィ・・・」


ようやく、顔を上げる。
変わり果てた相棒を見る。
さっきまで、隣で笑っていたのに。
温もりだって、消えちゃいないのに。

・・・さっきって、いつだろ?
いつから、寝ていたんだろ?


目を覚ますと、そこには絶望。


「大石、生きて帰れたらさ、まず何がしたい?」

「そうだな・・・ やっぱりテニスかな」


もし、生きて帰れたら、ね。