二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Episode1 ( No.4 )
日時: 2010/03/01 21:50
名前: 雫 ◆dflfIJckpA (ID: l/xDenkt)

そうこうするうちに放課後。
恨めしそうに向けられた視線の先には、空一面に敷き詰めた黒い雲。
4限授業の終わりを告げるチャイムが鳴る頃、今朝の天気と打って変わって暗雲になったのだ。
『お天気お姉さん』の予報的中。
面倒くさがらずに傘を持ち出しておけば…という今更ながら後悔の念に悩まされ頭を抱える。
その様を控えめに傍観していた芽依と2人の友人が連って、悶々とする雅を前にそろそろと話しかけた。

「さっきから何悶えてんの?」

返答なし。
ただひたすら悶えては唸っている(鬱陶しい)。
ところがそれに次いで一人の友人が同じ問いを口にした途端、「あのね!」と彼女に掴みかからんばかりの勢い。
芽依はその豹変ぶりに目を瞠り、確信犯めと睨みをきかせるが全くもって効果なし。
騒ぎに騒いでようやく落ち着いた頃、大分逸れた話を友人の一人が戻す。

「どうしたの?」

「…傘を、ね」

「面倒だから家に置いてきたとか。折り畳み傘は「流石は芽依さん!ご名答!」

「人の話は最後まで聞こうね?」

「雅ちゃん、早く帰った方が良いよ!降り出したらきりがないと思うから」

焦った声を出すもう一人の友人。
確かに降り出したらきりがなさそうだ。

「風邪ひいちゃったら元も子もないし」

「大丈夫!そんなに柔じゃないから」

へらりと笑って見せるも素直に頷いて鞄を手に取り、教室の入り口で一旦立ち止まると振り向いて手をひらつかせる。

「じゃあ、お先!」

「はいはーい」

「また明日ね!」

「遅刻すんなよー」

踵を返し、友人等の声を背に玄関へと向かう。
そこで同様に傘を忘れたらしい数人の女子を通り越して一人駆け出す。
コツコツとローファー特有の音を響かせて走る事(途中歩いたり)数十分。
遠雷を耳にし、ふと立ち止まって空を仰ぎ見る。
どんよりとした雲の流れに嫌気がさし、すぐさま正面に顔を戻すと前方にコンクリート製の橋が目についた。
自宅まで近い距離にきたという事に何とか間に合いそうだと安堵。
軽い足取りで歩き出そうとするが、橋の中央に佇む制服姿の少年─青年といった方がしっくりくるだろうか─目に留まり立ち止まる。
この天気の中何やってんだ、と訝しげに凝視。
ここいらでは見かけない制服を身に纏っている事もあって、一層訝しむ(これはどうかと思うが)。
当の青年はというと、何処か宙を見たまま微動だにしない。
無性に気味悪く思えてきて、やや俯き加減に橋を渡る。
ところがあと少しで渡りきろうかという時、不意に背後から視線を感じて歩みを止める。
家までもうすぐそこなのだ、そのまま走り去ってしまえばいいものを、悲しいかな、振り返らずにはいられないのが人の性、雅もまたそれに打ち勝てずおずおずと振り返ってしまった。
するとその先では、一向に動く気配のなかった青年がこちらをじっと見据えているではないか。
澄んだ鳶色の瞳に思わず吸い込まれるような感覚に陥りはっと息を呑んだ瞬間、生温い突風が身を襲い反射的に目を瞑る。
一時的なものだったらしく、それは直ぐにおさまった。
徐に瞼を開けると、先まで遠方に佇んでいた筈の青年の顔が目と鼻の先にありその至近距離に驚いて数歩退く。
途端青年が目を瞠り、何を思ったかそっと雅の手に触れてきた。
頭の片隅で、第六感が警報を鳴らす。

「あ、えっと…!」

やんわりと手を解き、この状況から脱すべく一目散に駆け出そうとするが、そうはさせまいと無骨な手に腕を捕らえられやむ無く青年の前に引き戻されてしまう。 
途端、頭中で被害妄想が爆裂。
赤面、蒼白と忙しなく変わり、終いにはぶつぶつと呟きだす始末。
末期症状が表れた。
青年は、己の手を食い入るように見つめたまま一向に口を開く気配がない。
そんな最中、自転車に乗った年配の女性が通りかかった。
偶然にも隣家に住む懇意にしている人で、我に返った雅は直ぐさま彼女を呼び止め、これ見よがしに青年を指差しながら必死に経緯を語る。
セクハラですよ!とあらん限りの声で主張する雅を前に、彼女は顔を引きつらせながら言った。

「冗談よね、雅ちゃん?」

「じょ、冗談なんかじゃないですよ!」

思いもよらない言葉に我が耳を疑う。
それではまるで──

「誰も…いないじゃない?」

呆然と立ち尽くす雅の横で、青年が静かに瞼を閉じる。
堰を切ったように、雨が降り出した。

Unbelievable!──信じられない!

→Episode2>>7

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ほんとオリキャラ出張り過ぎorz
でもそのうち幸村とか佐助とか登場させるつもりなのでこれもそれまでの辛抱よ!←