二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜 ( No.217 )
日時: 2011/02/08 18:26
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: Ua50T30Q)

 木暮が見えなくなると、代わりに縦に細長い楕円形の顔を持ち、オレンジのバンダナを頭に巻いた人間が焦った顔つきで、穴の中を覗き込んできた。見えている衣装は木暮と同じもので、漫遊寺の生徒らしい。その少年に続いて、雷門サッカー部のメンバーも心配そうに穴の中を見てくる。

「お、お二人とも大丈夫ですか!?」

 少年が呼びかけてきて、蓮と円堂は安全だと言うことを示すために手を振って答えた。


 雷門サッカー部のメンバーが総出で蓮と円堂を穴の底から引っ張り上げ、穴の底から救出された二人はジャージに着いた砂埃を手で払っていた。払っても後は消えるわけではないので、青と黄色のジャージにはところどころ茶色い斑点がこびりついてしまっている。蓮は円堂の上に落ちたので、痛みはない。しかし蓮の下敷きとなった円堂は背中が痛むらしく、しきりにさすっている。埃(ほこり)を擦ったせいで喉はからからに乾き、いがらっぽい。二人とも長い間咳き込んでいた。

「ぷはぁ……喉がカラカラだ」

 円堂の声は少し擦れていた。蓮も喉がかゆいような感覚が残っていて、時折喉を指でさすっている。

「ひどいめにあったね、円堂くん」

「我がサッカー部の部員、木暮がご迷惑をおかけして。本当にみなさまには、謝っても謝り切れません」

 少年こと漫遊寺サッカー部のキャプテン——垣田(かきた)は、深々と頭を下げた。
 垣田のすぐ後ろのグラウンドでは、木暮が一人でグラウンド整備をやらされている。今は雑巾でゴールのポストを拭いていた。クロスバーの上に乗っかり、嫌そうな顔で黙々と拭き掃除を続けている。

「あの子は、いつもあんな感じなんですか?」

 木暮を軽く一瞥した春奈が、垣田に尋ねる。すると垣田は顔を上げ、呆れたようにため息をついた。

「はい。木暮はあんな風に毎日いたずらばかりですよ……周りをすべて敵だと思い込んでいまして、あやつからすると復讐のつもりなのでしょう。ですから、サッカーをやらせるよりも、精神を一から鍛えるべきだと思い、あのように修行をさせているのですが」

 垣田は振り向き、背後で掃除をしているはずの木暮の姿を探した。しかしいつの間にか木暮の姿はなくなっている。クロスバーの上に雑巾だけがかかっていて、当の本人がお寺の様な漫遊寺校舎の中へと走り込んで行く後ろ姿があった。
 垣田が再度大きな声で怒り、雷門サッカー部は一斉に両手で耳を塞ぐ。木暮はわざとらしく立ち止まると、ニヤリと性根が悪い笑みを作りながら振り返る。そして、何事もなかったかのように、校舎の中へと駆けこんでいった。顔をしかめ頭を抱えた垣田が、

「……徒(いたずら)に終わってしまいます」

「もう! どうして人にいたずらばかりするのかしら」

 苛立った様子を見せる春奈に蓮がなだめるように声をかける。

「木暮くんって、寂しがり屋なのかも」
「寂しがりにしてはやりすぎだわ」
「でも、どうしてそんな性格になったのかしら」

 何気なく秋が呟き、垣田の顔が少し暗くなった。話すのを逡巡(しゅんじゅん)しているのか、視線が宙をさまよっている。やがて覚悟を決めたように雷門サッカー部をぐるりと見渡し、キャプテンである円堂をしっかりと見据える。

「それは恐らく木暮の過去のせいだと思います」
「過去?」

 続きをためらうように垣田は視線を少し下げ、

「……あやつは幼い頃、母親に捨てられたのです」

 重い口調で口を開いた。

「……捨てられた」

 春奈と鬼道がわずかに眉根を寄せる。蓮が無表情で氷のように冷たい声で言ったが、誰も気にしなかった。垣田は憐れむような悲しげな表情で話を続ける。

「母親と一緒に出かけていたところ、駅に置き去りにされたようでして……それ以来、人を信じることが出来なくなり、あんなひねくれた性格になってしまったのです」
「……バカ」

 蓮が低い声で呟いたが、誰も気にしなかった。

「立ち話は何ですから、中にご案内しましょう。どうぞこちらへ」

 垣田の先導で、重苦しい空気の雷門サッカー部はゆっくりと校舎の中へと歩みを進めていく。その時、蓮は春奈がひとりでみんなとは逆方向——先ほど木暮が姿を消した方向に進んでいくのが目にとまった。

「あれ、春奈さんどこに行くんだろ」

 蓮はそっと気付かれないように列から抜けると、春奈の後を尾行し始めた。

〜つづく〜
久々に書いたせいで小説の腕が落ちた気が……!
あ、次回は蓮の過去がちょーっこし判明いたします。薔薇結晶さんに応募していただいたオリキャラも出します!

ここで少し残念なお知らせがあります。小説打ち切り!……嘘です^^;一月下旬までお休みさせていただきます。

 いよいよ受験が間近に迫り、能天気に小説を書いている時間がなくなってきてしまいました;;試験自体は一月下旬で、終わってしまえばあとは面接だけなので書きたい放題かけると思います。
 短編リクなんかも一月以降に消化します。書きかけで止めてしまっている、夢幻さんにはとくに謝りたいです。

あ、後。年末なので人気投票をやってみたいと思います!期間は私が次に小説を書きに来る一月の下旬までです^^票が来るか不安だ^^;