二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

黒ずんだ嘲笑 ( No.81 )
日時: 2010/07/19 22:01
名前: 烈人 ◆ylmP.BhXlQ (ID: WPWjN3c4)

「佐久間」

 ああ、なんて愚かなんだろう。背中に投げかけられた言葉を聞きながら、佐久間は改めて思う。
 その表情に浮かんでいるのは、明らかな蔑みと悪意を含んだ優越感。少々嫌悪が交じった、しかしそれでも晴れやかな笑みが顔いっぱいに広げられている。
 首だけ後ろ——声を掛けられたほう——へ向けると、そこには先程の声で予想したとおり、鬼道がいた。
 鬼道有人。かつて佐久間が尊敬していた、いつでも保たれている冷静さに仲間のことをいつも考えて行動している、帝国学園のキャプテン。
 しかし今は雷門中へと転校したため、言ってしまうともはや帝国学園のキャプテンではない。

 それでも、彼ら——佐久間を含めた帝国学園サッカー部のメンバー——にとっては、今でも立派なキャプテンだ。
 そう思っている鬼道に、佐久間は蔑視の眼差しを向けて、小さく言った。

「……なんだ?」
「いや、……なんでもない」

 佐久間の問いかけに、鬼道は居心地悪そうに答えた。その表情には、戸惑いがはっきりと刻まれている。
 わかっていた。鬼道が何故あんな様子なのか、佐久間には手に取るようにわかっていた。

 自分が原因。

 それを改めて確認した佐久間は、「そうか」と鬼道に返して前を向き、小さく笑った。
 純粋な笑いではなく、嘲笑。鬼道へと向けた、見下した嘲笑。

「(——ねえ、鬼道さん)」

 今日、雷門中の部活を休んで帝国のサッカー部へ顔を出した鬼道に、佐久間は静かに心の中で語りかける。
 真・帝国学園で、結局真・帝国学園が勝ち——佐久間も源田も一時期はサッカーが出来なくなったが、今はもう体はすっかりと回復した、そのことを頭の中にありありと思い浮かべながら。


「(俺はもう、あなたを越えてるんですよ)」


 隠すようにして首に掛けている“エイリア石”を、服の上から握り締めながら。




(いつ、あなたは気付くのでしょう)



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