二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 戦国BASARA弐【月夜の歌姫〜罪無き花〜】 ( No.69 )
日時: 2010/08/18 12:56
名前: ターフ ◆lrnC2c/ESk (ID: UFZXYiMQ)
参照: http://yaplog.jp/000331/

奈絡>休んだ分頑張るよww

第3話 〜血族の戦い、竜は地に落ちて… PART1〜
朝の光が眩しい越後…———。
越後の軍神、上杉謙信の館では丁度朝食であった。
いつもはかすがと謙信だけなのだが、今日は違った。
前田の風来坊である慶次も朝食に参加していた。

「かすがちゃん、あんた何でも出来るんだな」

味噌汁を少しすすった後、慶次は後ろにいたかすがに言う。

「あたりまえだ。忍たるもの、あらゆる事に通じていなければならん」

慶次の方に乗っている夢吉はキュウリの浅漬けを見てからかじる。

「特にこの味噌汁、そしてこの漬物絶品だよ。まぁ、まつ姉ちゃんには敵わないけどな」
「…どうせ、そうだろう」

慶次は漬物を口にした。
かすがは味噌汁を手に取り、慶次の前にある御膳を見て言う。

「褒めるわりには、あまり食べていないな」
「え? そうかい?」
「慶次の申す通り、食する事がためられるほど——美味」
「謙信様…」

謙信は浅漬けを取り、口にした。
かすがはその姿に見惚れる。

「毘沙門天の加護とそなたの思いがこもった朝餉。いいえ、朝餉のみならず夕餉、昼下がり、ともに喫する茶等…。私は家宝者です」
「け、謙信様。勿体無きお言」

かすがが言おうとした瞬間、謙信は一瞬にしてかすがの目の前にいた。
謙信は少し微笑む。

「私の美しき剣、これからもこの至福を私に…」
「は、はい…!」

謙信はかすがの頬に付いている米一粒を手に取り笑った。
かすがは幸せすぎて薔薇を撒くが…———。

「あ…」

慶次がいたのを忘れていた。
かすがは少し顔を赤くする。

「…なんでだろうな?」
「い、いや、そう言われて立ち込めると多用が無い」
「…なんでだろう?」
「か、堪忍しろ前田慶次! お前は風来坊だが、武士の情けと言うものも…!」
「なんで皆が——そう言う風に生きられないんだろう?」

かすがは少し唖然とした。
唖然とした後、自分が思い違いをしていたのに気付く。
慶次は未だ分らないような顔をして続けて言った。

「利とまつ姉ちゃんだって、せっかく尾張の魔王さんから縛られない暮らしが出来るって言うのに二人とも戦が嫌いなくせに…」

謙信とかすがは黙って慶次を見つめる。
慶次は青い空を眺めて言った。

「平らで平和の日の本…」
「前田慶次…」
「…かすが」
「はい」
「…酒を」

謙信は縁側に慶次と一緒に座る。

「豊臣秀吉…。第六天魔王の禍々しさとは、その本質を意味するもの…。そして、織田が瀬戸内より九州に攻めるよう背けた毛利の奇策すら、結果として豊臣の掌にあったとも言えません」

慶次は少しため息を付けた。

「豊臣の軍師、竹中半兵衛は稀代の策士と言われた毛利元就よりも上手なのかもしれませんね」
「…毛利は頭の良い武将だ。腹の底はさておき、ひとまず豊臣と組すると思う」
「両者の同盟は事もなき大事。天下は一気に——豊臣に傾く」

慶次はそれを聞いて少し下を向いた。
古き友人、豊臣秀吉の心が読めない。
止められるはずだった事が、半兵衛の誘いによって止められなかった。
俺は…いつもいつも……———。
謙信は慶次の様子を見た後、続けて言った。

「それがなった暁にまず狙われるのは…——瀬戸海を挟んだ四国の地」

慶次の脳裏に、長曾我部軍の頭である長曾我部元親の姿。
互いの攻撃がぶつけ合い、そして武器が互いに腕から外れる。
それから、慶次は元親にお世話になった。

   ——“『西海の鬼、実はあんたに折り入って話が…』”——

   ——“『いいぜ』”——

   ——“『え…?』”——

   ——“『お前の目的は知っているよ。尾張の織田を包囲するデッケェ人為。この俺にも加われって言うんだろ? 俺も腹くくってやるよ。やれるだけやってみな——慶次』”——


「——…元親」

慶次は新しい友になった元親の名を呟いた。