二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: [銀魂]拝啓、大嫌イナ神様ヘ。 |8up ( No.75 )
- 日時: 2010/08/28 19:51
- 名前: 瓦龍、 ◆vBOFA0jTOg (ID: /4zHEnTD)
■9 破壊の音が聞こえた
戦場の空を覆う重く厚い雲。
自分の心中を映したかのような、暗い鉛色。
そんな曇天でも、何時か雲の合間からは陽光が射す。晴れない雲はない。
自分の心を覆う雲も払える日が来るように、自分は天人を斬り続けた。
大事なモノを護りたいから——それが自分の戦う理由。
だけど自分の掌からは一つ、また一つ零れ落ちていく。
自分の力が足りないのか……。自分には仲間を護る強さが足りないのか。
悔しい、もっと強くなりたいと力不足を仲間を奪った天人への怒りに変えて剣を握り続けた。
そして自分は敵からも味方からも恐れられる“紅の蝶”と呼ばれるようになった。
◆
その日は何時もと変わらず過ぎて行くものだと、ずっと思っていた。
なのに……現実は違ったんだ。
あの人が幕府に呼び出されて一週間程経った。
彼は、松陽先生はいってきますと、変わらない笑顔で幕府の人間に連れられ去っていった。
それからずっと彼が帰ってくるのを待っていたが連絡は一つもなかった。
そして、運命の日。
今日は桂と高杉と他愛も無い話をしながら先生の帰りを待っていた。
そんな時だ。
銀時が息を乱し、自分達の前に現れた。彼は肩で息をし、呼吸を整え叫んだ。
「し、松陽先生がっ、処刑だってっ!!」
それを聞いた後の自分達の行動は速かったと思う。
その時は頭が真っ白で、兎に角あの人の元へ行かねばと自分を突き動かした。
塾の門を潜り、石階段を転げ落ちそうな勢いで駆け下り、土手道を駆けて。
人の隙間を縫うように走り抜け、処刑場へと一気に走った。
処刑場には多くの村人が集まっていた。自分達は人波をかき分け列の最前まで出た。
視界に映ったのは優しいあの人。両手首を後ろで縛られ項垂れていた。
松陽先生っ!!と叫んだが、彼の人は此方を見向きもしなかった。
なんでなんでなんでっ。
どうしてあの人が殺されようとしているの?
どうして?
ねぇ、松陽先生っ。
ザシュッと、ものの斬れる音が耳に届いた。その後ドサッと何かが落ちる音がした。
幕府の人間が持った刀には鮮やかな紅が色付き、彼の人は胴と首を斬り離され、崩れ落ちていた。
「うあ゛ぁぁぁ゛あぁぁ゛っ!!」
泣き声とも叫びとも呼べる声が空に響いた。
貴方はただいまを言わずに、逝ってしまった。
◆
一度目に世界が壊れたのは、あの人が幕府の勝手で殺されてしまったこの時だった。
邪魔だからと、そんなくだらない理由の為に、先生をこの世から奪われた。
幼かった自分の中で、先生は世界そのものだった。
先生を奪われて、それでも自分が壊れなかったのは、銀時や桂や晋介が側に居たからだろう。
戦中の最中に、自分が自分で居られたのは、自分を慕ってくれる沢山の仲間が居たからだ。
世界が二度目の崩壊を迎えたのは、其奴等が目の前で天人に殺された時だった。
彼奴等の変わり果てた姿を見た瞬間、ガラガラと音を発てて、意図も簡単に世界は崩れ去った。
何故、此奴等が殺されなければならない。どうして、此奴等はこんな姿で此処にいる。
嗚呼、答えは簡単だ。
——──自分の、所為だ。
自分の所為で、此奴等は死んだ。
まだ、死ぬべきでは無い此奴等を、自分が殺してしまったのだ。
自分がまだまだ弱く、未熟者だから。
その考えに辿り着いて、じわりと目頭が熱くなった。
その侭止めること無く、ぽたりぽたりと地面を濡らしていった。
「ねぇ……、自分はどうすればいいの……ッ!」
大切なモノを失って、自分は何の為に刀を振るえば良い。
国の為にと戦ったお前等を見殺しにした世界を守る為になど、もう出来ない。
ならば、するべきことは一つしかあるまい。
「世界を、壊してやる……ッ!!」
自分の瞳には、もう光は無くなってしまった。
獣は闇に呑まれ、まだ己に手を差し伸べている存在に気付かなかった。
否、気付こうとしなかった。
(崩壊の音が聞こえた)
今度はこっちが、壊す番