二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: [銀魂] れんれん. | 2up ( No.75 )
- 日時: 2010/10/11 22:04
- 名前: みんと水飴 ◆DUNn3svPYc (ID: BmxuFWGD)
- 参照: http://amenomori22.jugem.jp/
銀時誕生日特別企画
〓伝えたい事
「はぁっ、はっ、はっ…!」
銀時は宛もなく、そして柄にも無く焦りながら林に囲まれた道を走る。
肌寒くなって来たこの季節、少し風が冷たいが走っている為体温が上昇し、彼の体は少し暑い。
(クソッ、いねェ。何処に行ったんだ……!)
何故彼は慌ててるのかと言えば、今日は勉学に励む日では無い為に無黯の自室へと向かったのが、事の発端だ。
「銀兄ィー」と、何時もの調子でニコニコと笑顔で自分にすがりつくだろうと思いながら、部屋へと向かった。
しかし、何時ものように迎えてくれる無黯がおらず、部屋の中は裳抜けの殼だった。
暫しそこで待ってみたものの、普段ならば戻って来る時間になっても戻って来ない。
妹分のような存在の無黯を誰よりも可愛がっていた銀時が探さぬ訳が無い。
故にこうして焦りながら辺りを隈無く探しているのだが、無黯の姿は中々見つからない。
「無黯ー!! 何処だー!?」
大声で名前を呼んでも、竹林に自分の声が響くだけで、返事は返って来ない。
(何処だよ、マジで……!)
彼女の行きそうな場所は全て探したのだが、何処にもいない。
まさか、無黯が誰かに拐われたのでは無いかとあらぬ考えに行き着いてしまう。
(無黯は純粋で可愛いからなァ、誰かに着いて行ってたりって可能性も無くは無いんだよなぁ……)
無黯がその笑顔で、誰かについて行くという想像を安易にできてしまう。
それが恐ろしい。
自分は最早親バカの域に達しているのかもしれないが、それ程に心配なのだ。
「……っ! 無黯ー!!」
一体何処にいるのだろうか。
お願いだから、出てきてほしい。
何時もの笑顔で、“銀兄”と、呼んでほしい。
「……海か……」
息絶え絶えに竹林を走り抜ければ、そこは青い海が無限に広がっていた。
波の音が、辺りを優しく包み込んでいる。
「——無黯?」
ひいては寄せる波を眺めていた時、視界に小さな人影を見つける。
それは、紛れもなく、ずっと探していた———無黯の姿だった。
「無黯!!」
「あ、銀兄ィー」
「おまっ! あ、じゃねェだろ」
一目散に彼女の元へ駆けつければ、彼女は何時もと何ら変わらない無邪気な笑顔を向けて来た。
心配していた分その笑顔に安堵すると共に拍子抜けしてしまい、ヘタリとその場に座り込んだ。
まあ、なんにせよ。無事で良かった。
何事も無く、再び彼女の姿を見る事が出来た。
それだけで、良かった。
「はぁ、皆も心配してっから、帰るぞ」
「あ、待って! 銀兄これ!!」
兎に角見つけたのだから、顔を青くさせ心配しているだろう桂の元へ行こうと考えて踵を返す。
すると、ふと無黯が静止の声を上げる。
無黯が差し出すものに視線を移せば、色鮮やかな貝が無黯の小さな手を埋めていた。
「……これ」
「銀兄、誕生日おめでとう」
「誕生日……?」
「今までの誕生日は大した事してなかったけど、今年は銀兄と逢って丁度5年目だもん。お祝いしなきゃ」
無黯の言葉を深く刻み込み、頭の中で自分の誕生日と今日の日付を確認する。
そして彼女と出逢った日付を思い返してみる。
すると、頭の中で誕生日と今日の日付が一致し、5年という数字が現れた。
「本当はケーキとかあげたかったけど、時間もお金もないから……」
「まさか、これ、プレゼントか?」
「うんっ」
早朝に起きてここに来て、彼の誕生日の為にここで一人せっせと貝を集めていたのだ。
誕生日プレゼントを。
「銀兄、おめでとう! 大好きっ」
「……オウ、サンキューな」
近づいた無黯を抱き締め、ポンポンと頭を撫でる。
(祝ってもらえるって、こんなに嬉しいんだな)
松陽先生は毎年祝ってくれるが、友である桂や高杉は興味がないのか、祝ってくれやしない。
それはそれで気を遣わないから幾分楽と言えば楽だ。
だから銀時自身も特に彼らを祝ったりはしない。
だから、祝われる事がこんなにも嬉しいと知らなかったのだ。
それは、あまり祝われた事が無いからか、嬉しいと感じるのか。
それとも、彼女だからか———。
「……ありがと、な」
何時の間にか彼の胸の中で踞り眠っている彼女に、お礼の言葉を呟く。
銀時はポンポンと無黯の背中を撫でてから、その侭彼女を抱き抱え、家へと足を動かした。
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「あ、わりぃ。寝てたみたいだな。え、涙ァ? ああ、多分今見た夢の所偽だろーな。
素敵な夢だったよ。昔、大切な奴が誕生日祝ってくれて……俺だけの我が儘な夢。
まあ、今はお前等が誕生日祝ってくれるだけで、俺ァ幸せもんだけどな」
伝えたい事
(天国の君に)(もう一度ありがとう、と)