二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: *小さな初恋* 【イナズマイレブン】 ( No.167 )
- 日時: 2011/04/18 11:55
- 名前: 桃李 (ID: yCBA8YKv)
第五十二話【小さな変化】
何もできない自分がここまで愚かに思えたのは、初めてだった。否、あの日以来、初めてだと思う。選手にアドバイスするにあたって、目を凝らして試合を観戦していた私。けれど、もうその時点で無理だった。相手チームの攻撃を受け、ぼろぼろになっても立とうとする雷門イレブン。そんな十一人を見て、冷静さを失わずにいられるほど、私は大人じゃない。どうすればいいのかわからなかった。ただただ、冷たい水の中に突き落とされたような閉塞感に襲われるばかりで。怖くて、怖くて、どうしようもなかった。
*。+
「私たちの代わりに戦って下さり、本当にありがとうございました」
漫遊寺中サッカー部のキャプテンさんと円堂くんが、ガッチリと握手を交わしている。今から私たちは、また新たな仲間を探しにここ、京都を旅立つのだ。言葉では言い表せないほど、複雑な心境です。そう言えば、彼——木暮くんは、どこに行っちゃったんだろう? お見送り、してくれないのかな。春奈さんにお世話になったんだから、一言ぐらいお礼を言っても良いと思うけど。それにあの時の試合で大活躍したんだから、皆、木暮くんのこと受け入れてくれたのに。そう、あの試合の時。
三分で終わってしまった、雷門イレブン対イプシロン戦。こちらは二回、シュートチャンスを手に入れたが、得点には繋がらなかった。しかし、相手には一点を決められてしまい、そのうえ激しい戦いに体力の消耗も大きかった雷門イレブンは、立つ事だけで精一杯だったように見える。けれど最後の木暮くん、デザームのシュートを止めちゃって。彼の真の実力を、見せ付けられた気がする。
けれど私には、もっと心配なことがあるのだ。
「打倒エイリア学園! 頑張って下さいね!」
「ああ! またいつか、サッカーやろうぜ!」
イナズマキャラバンが進みだす。ふと士郎を見てみると、染岡さんを仲良さげに話し込んでいた。今は、大丈夫みたい。だけど、試合直後の士郎の表情を、忘れることができなくて。
『……何も役に立てなかった。僕は、完璧にならないといけないのに』
苦しそうに歪められた瞳。なんて声を掛ければいいのかわからず、ただ黙って見守ることしかできなかった。完璧、か。この単語そのものは知っている。けれど、士郎が求める完璧がどういうものなのかは、本人と——もう一人の彼しか、知らないのだろう。
デザームによって、片手で止められた"エターナルブリザード"
————あの瞬間から、大切なきみも、儚い世界も。少しずつ少しずつ、壊れていった。