二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 春夏秋冬、いつまでもずっと。【VOCALOID】 ( No.2 )
- 日時: 2010/11/21 14:18
- 名前: 無幻 (ID: 8hgpVngW)
♪
マスターは、歌えない私を否定し、決して見てはくれなかった。
「歌えないVOCALOIDなんて聞いた事ないわ!!もういいっ!!こんなのガラクタ同然じゃない!!」
心が重く、目が霞む。
私は雨の道に放り出され、一人涙で頬を染める。
マスターは、とてもいい人だった。
——私が、マスターの期待に応えられなかったから…
寂しさは、嵩を増すばかり。
でも、そんな私にも神様が居たのかもしれない。
目の前の影を侵食する緑色の髪の毛。私の周囲だけ、雨が侵入するのを防がれている。
上を向くと、緑色のツインテールで同い年くらいの少女が傘を差し出してくれていた。
右手には、葱とアイスが大量に入った買い物袋があった。
マイクが装着されてあるから、彼女も同じ、VOCALOIDなのだという事が分かる。
「ねえ、お名前何て言うの?どうしたの?一人なの?」
初対面の人からこんなに質問を投げ掛けられたのは初めてだ。
ちょっと焦る顔の少女を見て、自然と笑顔が零れた。
すると、彼女も笑って、
「良かった。きちんと笑えるのね」
私は自分の顔を触る。
——笑、えた?
「ねっ、名前は、名前は!?」
急かす彼女に釣られて、私も少し早口になる。
「よ…夜音、ヤミ。う、たえなくて、マスターに、捨てられ、ちゃった…の」
早口と悲しみから、言葉が詰まる。
彼女は、一瞬寂しそうな表情をした後、何かを思いついたのか、頭に電球を浮かべる。ただの比喩表現です、本当に浮かんだわけじゃないよ。怖いでしょ。
「私はね、初音ミクっていうの!!ね、ヤミちゃん、私のお家にこないっ!?一緒に暮らそうよ!!」
ね、そうしよう!!と言った後、少女——ミクは私の手を引っ張り、道の真ん中をスキップしながら駆けて行く。
「〜♪〜〜♪」
ミクは鼻歌まじりでルンルン気分のようだ。
数分経って着いたのは、少しぼろっちい『ぼかろ荘』と書かれた建物だった。
「今日から此処が、ヤミちゃんのお家だよ!!」