二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【学園アリス】幸せを求める愚か者 ( No.3 )
- 日時: 2010/12/04 15:11
- 名前: 無幻 (ID: 8hgpVngW)
大分前から入院してて、今日やっとの事退院した。
「皆変わってないかなぁ」
そっと呟いてみる。今、この部屋には誰一人として存在してはなく、ただ私の声が壁に反響し、私の耳に戻ってくるだけだった。
そう、存在しない筈だった。
「皆変わってないよ」
優しそうな、男の人の声が聞こえた。私の耳の中ですっと溶け、不思議と笑顔になる。
「鳴海先生」
「そろそろいーかな」
腕時計をチラッと見て私に言う。私は無言で首を縦に振り、疑問の肯定をする。ていうか、病室に掛け時計あるんだけどさ。
「私が入院した後、転校生?が来たんですよね」
「うん、そうだよ」
廊下を歩く際、他愛もなく話をする。教室の外の自然を眺め、昔はよく棗君達と脱出を試みたなぁとか思い出してみる。棗君は何度も病室に来てくれてたみたいだけど私が熟睡してて全然気付かなかったんだよね。時々手に人の温もりを感じたのはその所為かな。
教室の前に着くとドタバタ駆け回る音が聞こえてきて思わず笑ってしまった。私が笑ったのをみて鳴海先生も微笑んだ。それと、副担先生の悲鳴みたいな声も聞こえて、皆が変わってない事に安堵した。
「んじゃ、待っててね♪」
「はーい」
軽く返事し、副担先生が鳴海先生に助けを求めてる声が聞こえて、その姿が想像出来る辺り、私はまだ初等部B組の事は忘れてないなぁとかちょっと嬉しくなったり。
「入ってきて〜」
鳴海先生の声に連れられ、私は教室の中へと足を踏み入れる。病室からあまり出なかった所為でちょっと歩くのもしんどくて、少しだけ足がフラつく。
「皆、久しぶり」
教室の生徒達からはわっと拍手が起こり、プチ芸能人気分を味わう。生徒の中にはやはり見知らぬ女の子が一人居て、その子に向けて微笑んでみる。
「えーっと、雅楽乃ちゃんは今日やっと退院したので戻ってきました。席は——蜜柑ちゃんの隣にしようかな」
言われた通りの席に移動する。移動してる時「久しぶりだねー」とか「元気だった?」とか聞かれて中々席まで辿り着かなかったけど。
「よろしくね、蜜柑ちゃん」
「え、あっ、よろしく!!」
どもりながら挨拶しているのが可笑しくて少し笑ってしまった。横から棗君が本を顔に置いて寝たフリをしてるのに気付いたので本をどかしてみた。
「……おい」
「起きなよ」
言葉を掛けると仕方が無さそうに起き上がった。流架君が「棗、大丈夫?」と声を掛けていた。流架君は将来、いいお嫁さんになれそうですな、ふむふむ。
「それじゃーねー♪」
そう言って鳴海先生は帰っていった。帰っていった直後、また教室ががやっと五月蝿くなり、耳を塞がざるをえなかった。…そこまでじゃあないけど。私に話しかけようとする生徒達を有無を言わせない顔で通り抜け、教壇の近くまで行く。其処には一枚の紙が落ちていた。拾い上げて読む。
「————ッ?!」
私は鳴海先生の元へと駆け出した。その後ろに棗君と流架君も着いてきていたのを、私は知らなかった。