二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 少年陰陽師*双月恋妖絵巻* ( No.63 )
日時: 2011/04/08 16:47
名前: 翡翠 (ID: JPHHUoHb)

〜緤菜〜

怖かった。

牛鬼の声が頭に響くたびに自分が自分でなくなるようで。
何もかも忘れて、ただ牛鬼の命に従う人形になってしまいそうで、怖かった。
誰も傷つけたくないのに、傷ついて欲しくないのに。
私は自らの手で麗菜を母様を傷つけたんだ……。


*     *       *

騰蛇の緋色の神気によって妖気の結界は音も無く崩れ去った。

「これで良いんだな?」

結界内に閉じ込められていた王龍にそう問いかける。

『あぁ、感謝しようぞ、紅き神将よ』

王龍はそう言うと、牛鬼と相対している緤菜の母親の元へと歩いていった。

『久しいな、燐菜よ』
『あら、王龍様、貴方もここに居たのね…会うのは数十年ぶりかしら?』
『どれほどの時が過ぎようともお前は変わらないな』
『そうかしら?…王龍様お力お貸し願えますか…?』

王龍と緤菜達の母、燐菜のやり取りを遠くから見ていた騰蛇は思った。

あの二人…知り合いだよな。

『あぁ、力を貸そうぞ、燐菜』
『お力添え誠に感謝します』

丁度二人が会話を終えた直後の事だ。

「えぇい!ごちゃごちゃと五月蝿い。貴様らなど我が相手をするまでもないわ!」

そう牛鬼は叫ぶと緤菜に命じた。

「あやつらをお前の手で始末しろ!!」

その言葉を合図に緤菜はまた刀印を結ぶのだった。