二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re:   Pure love 君とずっと君と  (テニプリ)  ( No.43 )
日時: 2011/03/30 12:28
名前: 扉 ◆A2rpxnFQ.g (ID: ycpBp.uF)
参照: 大切で、大好きで、それなのに。

007



"You betrayed!! "
"Is it what you were able to say?"
"What meaning"
"Have not you already betrayed him there?"




 黒鳥左京は、目を覚ました。

「大丈夫?? 随分寝返りしてたけど」

 鳳長太郎の優しい声が、やけに遠くで聞こえたので起きあがってみると、目の前には彼の姿がない。振り返ってみると、少し上の方に彼が見えた。

「あれ、長太郎?? そんなに遠くにいたっけ??」
「君が動いたんだよ。転がって」
「あぁ・・・」

 左京達は学食で昼食を取ろうと交流棟へやってきたのだが、人混みを左京が嫌い、結局棟から少し離れた、テニスコートの近くの芝生の上で食事することとなった。弁当を広げる長太郎だったが、左京は早々と昼寝モードに入ってしまい、結局寝ている左京の隣で1人のランチタイムを過ごしたのだ。
 寝相の悪い左京は、長太郎の隣からどんどん動いてしまったようだ。寝ぼけた表情のまま、這うように此方に戻ってくる。

「なんか、すんごい嫌[ヤ]な夢見た」
「え??」
「すごい、嫌・・・・・・」

 左京はそう言って子供のように目を擦る。

「大丈夫??」

 長太郎の声に左京が頷き、出ている右目をパチっと開いた。

「ん、長太郎の卵焼きちょーだい」
「今度から、ちゃんとお弁当持ってきなよ??」
「んー気が向いたら」

 左京の昼食と言えば、いつもお菓子ばかりだ。そんなのでは栄養は取れないよ、と忠告をしてみるが「糖分はバッチリだ」と言って聞く耳を持たない。そんな彼だが、自分が食べ終えると華張らず長太郎のおかずをつまみ食いする。
 沖レながらも、長太郎は快く左京に卵焼きを渡す。
 左京は卵焼きを頬ばりながら考える。

(夢を見た。久しぶりに。あの日の夢を見た。こっちへ来てからは1度も、見ることも思い出すことも無かったのに———)

 夢で見た光景が、はっきり脳に焼き付いている。
 彼女の声が、はっきり耳に残っている。

「嫌だなぁ」
 
 長太郎はいつもと違う様子の左京に、首を傾げるばかりだった。



——————



「私の彼を、見つけたわ」


 そんな言葉を放った。
 表情が見えなくとも解る。電話の向こうの彼は、確実に悲しい顔をしているだろう。それでも良い。

「リョーマ、これは貴方のためでもあるのよ??」

 操緒は、そう言い残して電話を切った。
 きっと、彼はこう思うだろう。 「全部全部、お前のせいだ」と。それでも良い。いつかはきっと、理解しなければならない時が来る。彼もいずれ、私を理解しなければならない。
 そして、今芝生で楽しそうに食事をしている“彼”は、此方へ戻ってこなければならない———

「これは偶然?? それとも必然??」

 1人きりの廊下で呟く。何故誰もいないか、と言えば簡単な話だ。此処が使われていない空き教室の並ぶ廊下だから。操緒は、転校初日にも関わらず誰に案内して貰うワケでもなく、此処へたどり着いたのだ。
 やはり必然なのだ、と少女は嗤う。
 
「そんなの、必然決まっているわ」

 あぁ、やっぱり、離れる運命じゃないのよ。
 さぁ、行こう。彼の元へ。



——————


 放課後、テニスコート。


「さーきょうっ」

 ビクっと、左京は肩を揺らせた。

「な、何だよ??」
「あ、何だ、慈郎先輩」
「どったのー そんな怖い顔してー」

 慈郎の無邪気な問いに、左京は少しだけ微笑んで見せた。

「考え事を、してたんですよ。ってか、慈郎先輩、重いです」

 ごめんごめん、と良いながら芥川が左京から離れる。
 彼の後ろには、既に跡部たちレギュラー陣がやって来ていた。関東大会まで後一週間無い。余裕の表情をしているものの、油断は気ほどもしていないらしい。早々と練習の準備が終わり、皆コートへ着いた。
 “準レギュラー”という微妙な立ち位置にいる左京は、いつも跡部に指示を聞いてから行動する。今日は、レギュラーと同じメニューをこなせ、とのことだ。と言うわけで、左京は岳人の隣へやってくる。

「何だよ、今日はお前もこっちか??」
「らしいですね」

 左京は球出しをしている侑士にペコリ、と頭を下げて練習へ入った。
 そして間もなく、休憩の時間がやってくる。

「皆ーっ ドリンクどうぞー」

 美波が一生懸命手を振いるのが見える。美波の作るドリンクは、少なくとも乾汁よりはマシである。
 そのドリンクを飲みながら、岳人はふと口を開く。

「そう言えば、」

 誰に声をかけるともないそんな言葉に、左京も振り返る。

「今日の転校生、左京と話がしたいっつってたぞ。なぁ、侑士??」
「あぁ、せやったな。 名前は、何やったけ??」

 左京は、自分の話にもかかわらず、会話に入れずただ立ちつくしたまま、侑士と岳人の会話を聞いていた。ただただ、嫌な予感だけが左京の脳を占領する。左目が、妙に疼いた。
 侑士は美波に向けて尋ねる。美波は笑顔で、その名前を口にした———



「操緒ちゃんだよ。春名操緒!!」



 刹那、左京は電撃が走ったような、そんな衝撃を受ける。
 数々の“思い出”と呼ぶべき記憶が、彼の脳を駈け巡った。




















“さーきょうっ”
“ねぇ、一緒に遊ぼう”
“左京は、なんだか、寂しそうね??”



















楽しくて楽しくて。それなのに、






















"You betrayed me. "

"Is it what you were able to say?"
"What meaning"
"Have not you already betrayed him there?"

























「みーつけた。久しぶり、左京」