二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 57章 それぞれの理想 ( No.119 )
- 日時: 2011/05/05 23:33
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: /LylQYeE)
- 参照: http:/ARUGRIZMU
「僕は負けたと言うのに、英雄になれるとか言われてもね」
イリスは肩を竦めて言う。もう負けたからといってショックを受けて倒れたりはしない。
「君は英雄になって自分の真実を貫くんじゃないのかい?」
「それは君が勝手に思い込んでるだけだ。僕は英雄と言われるほど、大層な人間じゃない」
「まあ、いいさ。君が英雄になりたくてもそうじゃなくても、英雄になるのは僕だからね」
Nは確信的に言う。
「だが、僕が真の英雄になるには、他の英雄の素質がある者を、即ちレシラムに選ばれた者と戦って勝利するしかない。だから、君はその運命から逃れられないよ」
「……本当、僕の意見ガン無視かよ」
イリスは吐き捨てるように言う。
とその時、背後から数人の足音が聞こえてくる。
「師匠ー!」
「イリスー!」
ミキにベル、それからアララギだ。
「3人とも……無事だったんだね。他の皆は?」
「他の人——PDOの人たち——は他に散らばっているプラズマ団の下っ端たちを倒しています」
「そう。ってことは、全員無事なんだね」
「はい」
とりあえず、胸を撫で下ろすイリス。だが目の前のNは、どこか不機嫌そうだ。
「アララギか。ポケモンを人間の都合で勝手区分し、白黒混ぜ合わせ灰色に染めた人物。お前のような人間がいるから、この世界は濁色に染まっているんだ」
どうやらアララギが気に入らないらしい。しかしアララギはいつも通りの態度で反論する。
「あら、随分と嫌われているようね。でも、君には君が信じる理想があるように、人はそれぞれ自分の信じる理想があるんじゃないかしら? 君はまだそれが理解出来ないようね」
「黙れ。何を言おうとお前がこの世界の白と黒を混ぜ合わせた首謀者の1人には違いないんだ。そんな言葉に僕は惑わされない」
「別に構わないわ。君が君の理想を貫くなら、私は私の理想を貫くだけだから。それに、君はどうも既に何かに惑わされているような気がするわ」
「黙れと言ったんだ、聞こえなかったか……それに、僕は何にも惑わされてなどいない。適当なことを言うな」
「それは、失礼したわ」
かなりアララギを憎んでいるらしいNだが、アララギは全く動じない。
「ふん、まあいいさ……イリス、僕はもう去るけど、これだけは忘れるな。君はいずれ僕とどちらが英雄に相応しいかを賭け、戦うことになる。絶対だ」
それだけ言うと、Nは電気石の洞穴から出て行った。
「N……」
「師匠!」
イリスがNについて少し思考を巡らせていると、憤慨したようなミキの声が聞こえる。
「え、なに? どうしたのミキちゃん?」
「どうしたのじゃないですよ! さっきの人の言ってた英雄がどうのこうのってどういう事ですか! 何で私に言ってくれなかったんですか!」
「あ……」
イリスはすっかり忘れていたのだ、ミキにNとの事を。ライモンシティでははぐらかしたし、ミキがNと直接接触したのは今まで1度しかない。それもただのすれ違いという形で。
「あ、ああ。それはポケモンセンターでゆっくり話すよ、長くなるから」
「本当ですね」
ズイッと顔を近づけるミキ。凄い怖い。
「おーい、イリス君!」
するとまた、後ろから声が聞こえる。ジルウェと、他のPDOメンバーだ。
「ジルウェさん」
「皆のお陰で、この電気石の洞穴にいるプラズマ団は全員倒したよ。まあ、邪魔が入って逃げられたけどね」
「邪魔?」
イリスは首を傾げるが、ジルウェは構わず続ける。
「さて、それじゃあ早くここから出ようか」
「え、あ、はい」
こうして、電気石の洞穴でのプラズマ団との大バトルは、幕を閉じた。
電気石の洞窟を抜けると、フキヨセシティに着く。
「それじゃあバルジーナ、飛んで」
リオはモンスターボールからバルジーナを出し、飛翔させる。
「……一応聞くけどリオ。そのバルジーナには僕も乗せてくれるんだよね?」
キリハがおずおずと聞く。それに対しリオは
「私のバルジーナ1人乗りだから。ヒウンまで歩いて戻ってきて」
「いやいやいや、フキヨセからヒウンまでどんだけ掛かると思ってんの!? 歩いたら1日2日で行ける距離じゃないよ!? ていうかそのバルジーナは2人は乗れるから!」
「それじゃあ行こうか、バルジーナ」
リオはバルジーナと共に飛び立っていった。キリハを置いて。
「…………」
キリハは精神的に瀕死状態になった。そして、うわ言のように「仕事が……書類が……」と呟いている。
「それじゃあ、私もホドモエに戻るとしよう。頼む、ケンホロウ」
ミナアキもケンホロウを出し、飛び立っていった。
「それじゃあ僕らも」
と言ってジルウェとシスタは徒歩で電気石の洞穴とは逆方向に向かった。どこに行くのだろうか。
ちなみにアララギはまだ研究が済んでないとかで電気石の洞穴にいる。もちろんボディーガードのベルもだ。
「さて師匠。ポケモンセンターでじっくりと話を聞かせてもらいますよ?」
「あ、うん。ちゃんと話すよ……」
今のミキはなんかやばい。目が据わってる。
「おお? ひょっとしてお前さんイリスじゃないか?」
とその時、見知らぬおじさんに話しかけられた。
「……えっと、どちら様で?」
「ああ、スマン。わたしもアララギ。お前さんにポケモン図鑑を託したのは、わたしの娘だ」
「……え?」
なんだか中途半端な感じの終わりですが、まあ良しとします。今回は特に大きなイベントがあるわけはないので、なんと言えばいいのやら。とりあえず、アララギ博士のお説教についてですが、どうもあのシーンをよく覚えていないため、所々僕が考えました。(ほとんど僕が考えたような気もしますが)Nのアララギ博士に対する嫌悪感も、ゲームより強いです。さて次回ですが、次回は……何しようかな……とまあ、特に決まってません。では、また次回で。