二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: ムントVSレンジ 4 ( No.195 )
- 日時: 2011/06/13 23:17
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: /LylQYeE)
「……出て来い、ズルズキン」
ムントが繰り出す最後のポケモンは、ズルズキンだった。
「ズルズキンと来たか。攻防ともに優れていて、良いポケモンじゃねえか。それに随分と鍛えられている」
レンジはムントのズルズキンを見て、称賛の言葉を投げ掛ける。
「じゃあ行くぜ。シュバルゴ、メガホーン!」
シュバルゴは全速力でズルズキンに突撃し、それと同時に槍を突き出す。
「ズルズキン、龍の舞い」
しかしズルズキンは龍の様に舞い、シュバルゴの一撃をかわす。
「ならもう1度、メガホーン!」
だがシュバルゴもめけずに槍を突き出す。
「かわせ」
龍の舞で素早さの上がったズルズキンはその一突きをヒラリのかわす。
「引け」
しかしズルズキンはそこで攻撃せずに、後に下がった。
「ハッ、怖気づいたか? だったらすぐに決めてやんよ。シュバルゴ、アイアンヘッド!」
シュバルゴは鋼鉄のように硬い頭を突き出して、ズルズキンに突撃する。
「ズルズキン、諸刃の頭突き」
そしてズルズキンもまた、トサカの付いた頭を突き出して、シュバルゴに突撃する。
2体はそれぞれの頭をぶつけ合い、押し合っている。
だがすぐに決着はついた。ズルズキンがシュバルゴを吹っ飛ばし、戦闘不能にさせたのだ。
「ぐっ……シュバルゴ、戻れ」
レンジは苦々しげにシュバルゴをボールに戻す。
「まさか俺のシュバルゴをこうも簡単に吹っ飛ばすとはな。恐れ入ったぜ」
しかしすぐに気楽な態度に軟化させ、新たなボールを取り出す。
「さあ出て来い、ワルビアル!」
レンジが最後に繰り出したのはワルビアル。だが通常の固体よりも大きく、2m以上ある。
「コイツは俺の相棒でエースだ。そう簡単にはやられないぜ」
「なら俺のズルズキンは最後の砦といったところだな」
ムントがレンジに言葉を返す。これはこれで珍しい。
「ハッ、『最後の砦』ねぇ……まあいいさ。ワルビアル、噛み砕く!」
ワルビアルはその巨体からは考えられないようなスピードでズルズキンに特攻する。
「ドレインパンチ」
しかしズルズキンはワルビアルの懐に素早く潜り込み、アッパー気味の拳を叩きつける。
「ワルビアル!」
ワルビアルは今ので倒れこそしなかったものの、後に後退してしまった。
「ハッ、諸刃の頭突きの反動ダメージをドレインパンチで回復しようって腹か? 随分とちょこざいなこと考えるな」
レンジは上機嫌なのか不機嫌なのか分からない笑みを浮かべる。
「ワルビアル、焼き尽くす!」
ワルビアルは口から高温の炎を吐き出し、ズルズキンを包み込む。
「ズルズキン、諸刃の頭突き」
しかしその程度の攻撃ではズルズキンに有効なダメージを与えられず、むしろ反撃させてしまう。
「うおぉ!?」
諸刃の頭突きを受けたワルビアルは、かなり後方に吹っ飛んだ。ワルビアルは巨体で、それゆえに重い。なのでレンジはズルズキンの頭突きの威力に、ただただ驚愕するだけだった。
「だったら、地震!」
ワルビアルは吹っ飛ばされこそしたものの、戦闘不能ではないためすぐに起き上がり、地面を大きく揺らしてズルズキンを攻撃する。
「ぐぅ……」
流石のズルズキンもこの地震は効いたみたいだが、まだ倒れない。
「ドラゴンクロー!」
ワルビアルは両手の爪に龍の力を込め、ズルズキンを襲う。
「ズルズキン、思念の頭突きだ」
ズルズキンはワルビアルの攻撃をかわすと、一旦距離を取って地面に頭を打ちつける。
「あぁ? ついに頭壊れたか?」
冗談半分でレンジは言ったが、実際ズルズキンのその行為はそう思ってもおかしくないものだった。
「ハッ、まあいいさ。どっちにしろ逃がさず引き裂いてやるからよ。ワルビアル、地震!」
ワルビアルはズルズキンに接近せず、その場で地面を大きく揺らしてズルズキンを攻撃する。
しかしズルズキンは今だ立っている。
「ハッ、結構しぶといな。だがもう決めてやるよ。ワルビアル、ドラゴン——」
レンジがそこまで言ったところで、地面から大量の水が噴き出された。
「!? なぁ!?」
流石のレンジもこの光景には驚きを隠せず、動揺する。
「思念の頭突きは本来、弱点である格闘タイプ対策として覚えさせていたが、こういう風にも使える」
レンジとは対照的に、ムントは静かに言う。
「思念とは、つまりは思い。思考だ。思念の頭突きはそれを相手に直接ぶつけて心身ともにダメージを与える技だが、悪タイプを持つワルビアルには効かない。だから別の方法を取らせてもらった」
それが、この大量の水である。
「地面に思念を送り込むことで、吸収された水を再びこの周辺に集めた。後は地面に大きな衝撃を与えれば、水が辺りに爆散する」
ワルビアルは元々砂漠に住むポケモンなので、極度の水を浴びるとそれだけで力が半減してしまうのだ。
「ズルズキン、ドレインパンチ」
ズルズキンは大量の水を浴びて動きが鈍くなっているワルビルに急接近し、その顔面に渾身のストレートを決める。
「ワルビアル!」
ワルビアルは彼方後方に吹っ飛ばされ、今度こそ戦闘不能だろう。
「戻れ、ズルズキン」
ムントはズルズキンをボールに戻し、もうここに用はないと言わんばかりにセッカの湿原を後にする。
ムントVSレンジのバトルは、地形を巧みに利用したムントの勝利である。