二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 番外編 過去のプラズマ 前編 ( No.282 )
日時: 2011/07/08 23:46
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: /LylQYeE)
参照: http://pokegai.jp/

ここは、プラズマ団員以外は知らないであろう、プラズマ団の拠点。その一角に、2人の人間がいた。
1人は若く見えるもののどこか威厳と貫禄のある緑色の髪の男。もう1人は少女で、長い銀髪に死者のような眼、さらに目を引くのは失われた左腕。
男はプラズマ団を実質的に牛耳っている者、ゲーチス。少女はプラズマ団に加担している者、メイル。
「よく来てくれましたね、メイル。ですが、いつもはワタクシからの指令をことごとく無視するというのに、今回素直に来たというのはどういう風の吹き回しですかな?」
ゲーチスはやや棘のある言い方をするが、メイルはゲーチスから受ける指令を無視する事がしばしばなので、まあ仕方ないだろう。
「別に。ただ気が向いただけだ。言うなれば気分だな」
「まあ、なんにせよあなたが来てくれた事には感謝していますよ。今回の指令は危険なものですからね。他の団員——例えば7幹部では、失敗する可能性が高いですからね」
「だったらもっと強い奴を引き抜けば良いだろう。奴らはPDOとかいう組織の連中に負けている。もう用済みだろう」
「あなたにとってはそうでも、ワタクシからしたらまだ利用価値があるのですよ。少なくとも、今行っているプランπ(パイ)が失敗するまでは使いますよ。……まあ、このプランが破綻するなんて思いませんがね」
「プランなどどうでもいい。で、今回の指令とやらはなんだ?」
メイルは目付きも表情も変えないが、催促するように言う。
「今回の指令はこの男……PDOという組織のリーダー、ジルウェという男について調べてほしいのですよ」
ゲーチスの言葉に、メイルは反応する。しかし表情は変わらない。
「ジルウェ……あの男か?」
「ほう、あなたがあの男を知っているとは思いませんでした」
「資料で読んだだけだ、面識はない」
「まあ、今回の指令はあの男かどうかを調べてほしいのです。もしそうならば、大事です。いや、傑作……いっそ滑稽と言うべきですか」
「くだらん言葉遊びだ……しかし、あの男はプラズマ団ここまで発展させたとも言える重要人物。そんな奴がプラズマ団を壊滅する組織なんかに加入するとは思えないが」
「どうでしょうね。人間、結構簡単に感情や心境が変わりますからね」
「ふん、まあいい。とりあえず、そいつと直接会って情報を引き出せば良いんだな?」
「ええ、そうです。しかし気をつけてください。もしあの男なら、あなたでも勝てるかどうか。下手をすれば、命が危ないと思ってください」
ゲーチスのその言葉に、メイルは嘲笑うようでいて、しかし最も感情が感じられない声で言った。
「生きるとか死ぬとか、そんな事はどうでもいい。この世は生き地獄あの世も地獄。死ねば地獄、生きても地獄。どっちも変わらない地獄だ」



地下水脈の穴。
天然の洞穴に雨水が染み込み、湧き上がって地下に巨大な水溜りを作った。その規模は水溜りと言うより池——いや、地底湖と言うべきだろう。
その地下水脈の穴の最深部、一際大きな地底湖があるフロアに、2人の人間がいる。
その2人は巨大な地底湖を挟んで向かい合っている。
「えっと、聞くのが遅くなったけど君は誰かな?」
2人のうちの片方、赤を基調とした服を着て、眼鏡を掛けている若い男がそう訊ねる。
「私はメイルだ。お前はPDOのリーダー、ジルウェで間違いないな?」
2人のうちのもう片方、メイルはそう答えた。そしてジルウェと呼ばれた男は首を縦に振る。どうやら合っているようだ。
「で、僕なんかに何の用かな?」
「……私はプラズマ団に属してこそいないが、プラズマ団の加担者だ。そして今回、お前について調べに来た」
「僕について? それは随分と暇なんだね」
ジルウェは陽気に言うが、メイルの表情は変わらず無表情。
「……しらばっくれるという訳か。いいだろう。元より無理矢理吐かせるつもりだったからな」
言ってメイルはモンスターボールを取り出す。
「出て来い、アーケオス!」
メイルが繰り出したのは、始祖鳥のようなポケモン、アーケオスだ。
「アーケオスか……だったら僕は、出て来い、キリキザン」
ジルウェが繰り出したポケモンは、腕や体に刃が付いた怪人のようなポケモン、キリキザンだ。
「アーケオス、アクロバット」
先に動いたのはアーケオスだった。アーケオスは文字通り目にも止まらぬスピードでキリキザンを攻撃し、寸分違わぬ位置へと戻る。
「速いねぇ、そのアーケオス。でも、鋼タイプであるキリキザンに手傷を負わせるのは失敗だね」
「……?」
ジルウェの言葉に、メイルは無表情で疑問符を浮かべる。
と、その瞬間。キリキザンの体が銀色に光り、キリキザンはその光を光線にして放つ。
アーケオスは銀色の光線をまともに受け、吹っ飛ばされる。
「メタルバースト。鋼タイプのポケモンを相手にするなら、これくらいは警戒しないとね」
ジルウェは閉じているように見える眼を少し開け、臨戦態勢に入る。
「……成程。確かにこれは、命がけのバトルになるかもしれないな」
そしてメイルは戦闘不能となったアーケオスをボールに戻し、次のポケモンが入ったボールを手に取る。
「まあ、命なんて賭ける価値すらもないがな」
そして、そのボールを投げ、新たなポケモンを繰り出す。



クライマックスが近いですが、今回は番外です。今回の番外は1番最初にオリキャラを投稿してくださった、不思議のプレートさんのオリキャラ、メイルです。えっとですね、今回はかなり最初の会話が多くてつまらなかったでしょうし、何かの伏線みたいな事も喋っているので『意味分かんねえよ』みたいな感じしょうが、ご了承願います。次回はバトルメインですので、次回もお楽しみに。