二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 147章 ゲームタクティクス ( No.310 )
日時: 2011/07/19 23:43
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: /LylQYeE)
参照: http://pokegai.jp/

「エンブオー、ニトロチャージ!」
「キリキザン、サイコカッター」
エンブオーは炎を纏って突進するが、キリキザンが放つ念力の刃によって止められてしまう。
「だったらこの技で……エンブオー、大文字!」
エンブオーは大きく息を吸い、大の字の巨大な炎を放つ。
「アイアンヘッドで貫け」
しかしキリキザンは銀色のオーラを纏い、鋼の頭を突き出して大文字の炎に突撃し、突っ切った。
「辻斬りだ」
そしてその勢いを殺さずにエンブオーの脇を通り過ぎ、その通り間際に腕の鋭い刃で切り裂く。
「エンブオー、アームハンマー!」
エンブオーは反撃のために振り返ると同時に重量感のある拳を繰り出すが、キリキザンはバックステップでそれを回避する。
「キリキザン、アイアンヘッドだ」
そしてキリキザンは鋼鉄の頭を突き出し、エンブオーに突撃する。
「瓦割り」
さらに手刀を勢いよくエンブオーに叩き込む。
「そして辻斬りだ」
最後にエンブオーの脇をすり抜けるように動き、すれ違い間際に切り裂く。
「サイコカッターだ」
キリキザンはエンブオーから距離を取ると、念力を込めた刃を飛ばし、切り裂く。
「どうした? そろそろそのエンブオー、終わるぜ?」
ギーマの言う通り、エンブオーはキリキザンの攻撃をしこたま喰らってズタボロだ。もういつ倒れ、戦闘不能なってもおかしくないほど疲労困憊、満身創痍だ。
「自ら勝負を捨てるのは愚の骨頂であり、愚者の行為だ。だからここで降りるとか言うなよ?」
「うぅ……」
いくらマイペースなベルでも、この状況でプレッシャーを感じないほど鈍感ではない。
「ほら、行くぞ。キリキザン、辻斬りだ」
キリキザンは素早くエンブオーに接近すると、目聡く隙を見つけて切り裂く。
「エンブオー……」
効果いまひとつの技で、当たりも浅かったためエンブオーは戦闘不能にはならなかったが、それでもきつい状況なのには変わりはない。
「どうしよう、このままじゃ……負けちゃう……」
ベルは沈んだ顔で呟く。
「イリスやチェレンは、こういうピンチを何度も乗り越えてきたんだろうなぁ……」
ベルは足りない頭をフル稼働させ、考える。この絶望的状況から抜け出し、逆転するための作戦を。
「威力が高くて広範囲にも攻撃できる技で攻撃すれば、勝てるよね……」
ベルは作戦を思いついたものの、それは子供が考えたような、大雑把な作戦だった。
「……大丈夫、出来るよ。絶対に出来る」
ベルはそう呟き、エンブオーを見る。エンブオーはそれに対して、力強く頷く。
「試した事はないけど、エンブオーならあの技を使える。だからエンブオー、頑張って」
ベルの最後の一言で、エンブオーはキリキザンと相対する。
「何をする気かは知らないが、その眼を見る限り、一発逆転の切り札でもあるのか?」
「そんな大層なものじゃないですよ。でも、あたしはこの勝負、勝ちますよ」
ベルは確信したような表情で、言い放つ。
「そうか。……キリキザン、辻斬り」
キリキザンは鋭利な刃を構え、エンブオーに向かって走り出す。そのスピードは、今までで最速だ。
対するベルはキリキザンがスタートダッシュをするとほぼ同時に、エンブオーに指示を出す。

「エンブオー、ブラストバーン!」

突如、地面が炎に包まれる。いや、そんな生ぬるいものではなく、地面が爆発を起こした、とでも言うべきか。
突如、地面が大爆発を起こしたように燃え上がる。というか、実際に爆発し、火山の噴火のように地面から炎が噴き出す。
「ぐ、これは……」
あまりの火力に、エンブオーの目の間にまで接近していたキリキザンはたじろぐ。正直、反動で動けないでいるエンブオーに攻撃するチャンスなのだが、爆発した後のフィールドは地獄絵図のような業火で包まれており、とても動ける状況ではなかった。
「凄い……まさかこんなになるなんて……」
ベルは珍しく読んだ本でブラストバーンを知ったのだが、ここまで威力があるとは知らなかったようだ。
いや、正確に言えばエンブオーの特性猛火と、エンブオー自身の力なのだが。
「よーし。それじゃあもう一発。エンブオー、ブラストバーン!」
エンブオーは大地を揺るがすかのような咆哮をあげ、地面を爆発させ、炎上させる。
「ぐっ、キリキザン!」
そしてキリキザンは爆炎に包み込まれ、焼け落ちたのだった。



「これはまた、随分とやらかしてくれたものだな……」
バトル後の塔内は、もうしっちゃかめっちゃかだった。
地面は焼け、壁は燃え、天井は焦げ、最初の気品ある空間は消え失せていた。
「す、すいません……」
流石のベルも頭を下げる。
「別に。勝者は全てを手に入れ、敗者には何も残らない。それが勝負の常だ。それに、勝負師はふてぶてしいものなんだよ」
ギーマは黒く焼け焦げたソファに座り、そう言う。
「良い勝負師ってのは、勝利を得て自慢するでもなく、敗北して取り乱すでもなく、ただ次の勝利を求めるのさ」
ギーマは何か深い事を言ったようだが、ベルの頭には理解できない。
「これだけは覚えておけ。誰かが勝てば相手した誰かが負ける。それが勝負ってやつだ。だが、勝利を得るには敗北が必要不可欠。勝利と敗北は表裏一体、絶対に切り離す事は出来ない。勝利あってこその敗北、敗北ありきの勝利。勝ち負けるのが、勝負なんだ」



僕がギーマを好きな理由、なんだかこの話を書いて分かりました。ギーマの思想って、僕の好きな小説家の書く小説の内容と噛み合っているんですよ。悪タイプがすきというのもありますが、たぶんその影響もあるんだと思います。では次回予告ですね。次回はミキVS四天王……といっても、もうお分かりになるでしょうね。でも、次回まで明かしません。では、お楽しみに。