二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 268章 善悪 ( No.289 )
日時: 2011/10/05 21:03
名前: 白黒 ◆KI8qrx8iDI (ID: GSdZuDdd)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

「……何人増えようとも、わたくしを倒す事はおろか、止める事すらできませんよ」
レイは新たに二つのボールを手に取りながら、そう言う。
「随分と余裕だな。お前、イリスとのバトルで大分お疲れに見えるぜ」
イリゼはそう言うが、イリスには分からない。まあ言われてみれば微妙に呼吸が乱れているようにも見えなくはないが。
「……この程度の疲労で、戦いを投げ出すわたくしではありません。なんなら、レジュリア一匹であなた方三人の相手をしても——」
そこで、レイの言葉は途切れた。レイはバッと後ろを振り返る。それにつられて、イリスとイリゼ、Nも視線を上げる。
するとそこには、7Pのフォレスが、コクジャクに掴まりながら、飛んでいた。
「ここでまさかの、増援か……?」
イリゼは呟くように言う。
フォレスはジッとレイを見つめ、レイは不必要だと言わんばかりの目で、フォレスを見据える。
「フォレスさん、増援ならいりませんよ。この程度の相手ならわたくし一人で十分——」
「コクジャク、電磁波」
レイの言葉を遮り、フォレスはコクジャクに指示を出す。コクジャクは神経を麻痺させる電磁波を放つ

レイへと向けて。

「あ……くっ……」
レイは脳に電磁波を当てられたようで、電磁波を受けると昏倒してしまった。
「……すみませんレイさん。今は、こうする他なかったんです」
フォレスはレイに謝罪しつつ、地面に降り立ってレイを抱え上げる。
「……お前、何で仲間を……?」
イリスはフォレスに問う。その質問自体は、至極普通だろう。
「……そうだな。お前になら、話してもいいだろう」
フォレスはコクジャクに肩を掴ませ、飛び立ちながら言う。
「俺がレイさんに電磁波を浴びせたのは、この人の暴走を防ぐためだ」
「暴走?」
イリスは復唱しつつ尋ねる。
「そうだ。俺達7Pの解放っていうのは、自分自身の押さえつけた力を解き放つこと。キュレムの刻印は力を抑制するが、それは即ち、自分の意思や自我、人格を押さえつけることと同義だ。だから解放すればそいつの言動やら人格やらが多少は変わる。7Pでは三人、顕著にその効果が現れるんだが、その内の一人が、この人だ」
フォレスはレイに目線を落としながら言う。
「この人の解放は7Pで最も危険なんだ。この人は解放すると、感情のコントロールが利かなくなる。解放前は絶対零度の如く感情を凍結させているんだが、解放したらそれが一気に溢れ出る。下手な事言ってこの人が激昂すれば、その力は何倍にも増幅される」
確かに、レイの強さは異常とも言えるほどだった。だがあれは、レイが怒っていて、それでレイの強さが急上昇していたからなのだろう。
「しかしこの力は、危険なんだよ。感情が制御できずに激怒して、そのままにしておいたらこの人は……人格が破綻する」
フォレスは苦しそうに、痛みに耐えるかのような苦渋に満ちた顔で言葉を繋げていく。
「そうなればプラズマ団内では不要とみなされ、破棄されるだろうな。それだけは、絶対に避けたい」
フォレスは力強くそう言い放つ。
「俺の口からは多くは語れないが、この人は昔、相当酷い目に遭ってきたらしい。俺が思うにプラズマ団内、いや、このイッシュの中で最も傷ついている人だろうよ。そんな痛みや苦しみを味わい続けていたからこそ、この人は俺達側なんだ」
フォレスは静かに、レイについてを言い終える。
「もう一つ、言いたい事がある」
と思ったら、フォレスはまた発言しだした。
「お前達は俺達を倒す事に、プラズマ団を潰すことに躍起になっているようだが……それは本当に善い行いなのか?」
「なんだと……?」
イリスは顔をしかめる。それはそうだろう、自分達の行いを否定されたような事を言われた。それも、悪い者に。
しかしフォレスは構わず続ける。
「そりゃ、確かに俺達は悪い事をしている。だが、それは俺達みたいな奴からしたら、必要悪なんだよ」
「ポケモンを使って、人の心を操って、世界を支配しようとする事のどこが必要だって言うんだよ!」
イリスは叫ぶ。だがフォレスは対照的に、落ち着いていた。
「お前達には家族がいて、家があって、仲間がいるだろう? PDOとかいう組織にしたって、仲間同士でつるむコミュニティで、一つの目的に向かう集団なわけだろ? 俺達プラズマ団だってそうだ。一つの目的を持ち、皆でそれに向かうことで、孤独を回避している。俺はプラズマ団の奴らを家族とは思った事は一度たりともないが、それでも大切な仲間だとは思ってるよ」
それは、フォレスの強い意志が込められた一言だった。まさかプラズマ団からそんな言葉を聞くことになるとは思ってもいなかったイリスは、言葉を返せない。
「お前達がやっている事は、人の家を破壊し、その家族を攫っていく、圧政を行う皇帝みたいなもんなんだよ」
フォレスのその言葉に、イリスは胸がえぐられるような感覚を覚えた。
「……ま、こんな知った風な事を言える時点で、俺はプラズマ団に染まりきっていないんだがな。それでも英雄、これだけは覚えておけ。お前達は善行をはたらいているつもりなんだろうが、善と悪は表裏一体。善行は、悪行の裏返しでしかないんだ、とな」
最後にそう言い残すと、フォレスはレイと共に飛び去っていった。



今回はバトルのない回でした。いや、やっぱりバトルシーン以外を書くのは大変ですね。僕にはそっち方面の才能はないのか……まあ、これから研磨していけばいいですか。今回のフォレスは、いつものフォレスとは違うのです。いつもは粗雑なフォレスですが、今回のフォレスはいつもの一味違うのです。ま、その話はこれくらいにして、次回予告です。次回は……そうですね、イリスが悩んで誰かとバトる、みたいな展開になると思います。では、お楽しみに。