二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 520章 リオvsエレクトロ ( No.769 )
- 日時: 2013/03/19 14:00
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
- 参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html
下っ端の大軍を突き抜け、リオはアキラと共に城へと突入した。先に突っ走っていったザキとは違い、二人は普通に城の上階へと進んでいく。
この城はかなり複雑な構造のようで、道中には和室やビオトープなど、様々な部屋が存在していたが、それらから気配を感じることはなかった。
しかし、正に城といった豪奢な内装の廊下に差し掛かった途端、二人は足を止める。そこには、一つの扉があった。
「……ここか?」
「たぶん。なんにせよ、7Pクラスの敵は、いると思う」
そんなやり取りの後、二人は扉を押し開け、中へと入る。
中はそれほど広い空間ではなかった——というより、広間か何かに続く短い廊下のようになっていた。そして奥には、また豪奢で重厚そうな扉がある。
そこにはゲーチスこそいなかったが、しかし、二人にとっては重要な人物がいた。
「……本当に来た。あいつの言う通りにことが進むと、なんか癪ね」
「……お姉ちゃん」
リオの実姉、マオ。しかし今はプラズマ団、即ち敵だ。
「先に言っとくわ。私は貴女たちを邪魔するつもりでここにいるわけだけど、片方はそのままここを通ってもいいわ。私が止めるのは、あくまで一人だけ」
「? どういうことだ? 通行止めしてんのに、片方は通す?」
「頭が固いわね。なら分かりやすくするためにもうばらすけど、この先にはエレクトロがいるわ」
その一言に、リオは反応を示す。しかしマオは構わず、
「プラズマ団としても、少人数で攻め込んできた貴方たちを殲滅したい気はある。だからただ足止めするんじゃなくて、こっちも各個撃破でそっちを全滅しようとおもってるのよ。だから、貴女たちふたりのどちらかが私と戦い、残ったどちらかがエレクトロと戦う。まあ、エレクトロと戦うのが嫌なら、尻尾巻いて逃げてもいいけど」
そんな安っぽい挑発に乗るリオとアキラではなかったが、しかしそれ以上に、彼女らにとって逃げると選択肢は最初から存在していない。
となると次の問題は、どちらがマオと戦い、どちらがエレクトロと戦うかだが、
「この場は俺がなんとかする。だから行け、リオ」
「アキラ……」
アキラが一歩前に踏み出し、リオにそう言った。
「お前のことだ。どうせマオさんを引き戻して、あのエレクトロとかいう野郎にもリベンジしたい、って思ってんだろうけど、人間欲張り過ぎると痛い目を見るんだぜ」
それに、とアキラは続ける。
「マオさんにしろあの野郎にしろ、片手間に戦える相手じゃねぇ。だからといって俺が野郎に勝てるとも思わねぇ。だったらリオ、ここは分相応ってことで、俺がマオさん、お前が7Pと戦うのが最適だろ」
「そうだけど、でも——」
「大丈夫だ、心配すんなって。あの人は、俺がきっちり元に戻してやる」
アキラの自信満々な態度を見て、リオはフッと微笑み。
「……うん。じゃあ、お姉ちゃんは任せたわよ!」
「おう! 任されたぜ!」
リオはマオの脇を抜け、次の扉を潜り抜けていく。
「……私も舐められたものね。この前あれだけ痛めつけたっていうのに、まだ戦う気?」
「悪ぃが、今回ばかりはマジで負けるわけにはいかねぇんだ。それに、前までの俺と、今の俺は違う」
お互いボールを構え、臨戦態勢となる。
「ふぅん。それじゃあ、ほんの少しだけ期待してあげてもいいわ」
「そいつはどうも。そんじゃあ、行くぞ!」
そして、二人の戦いにも、火蓋が切って落とされる——
扉を抜けた先は、大広間だった。天井は何階分あるのかと思うほど高く、床一面には赤いカーペット。真っ白なクロスのかかったテーブルは、数えきれないほど存在する。壁にも多数の輝くランプが備え付けられていた。、
そんな煌びやかで豪奢な広間の中央には、一人の男が直立不動でこちらを見つめていた。
肩につくくらいの黄色い髪に、きっちりとした執事服を着込んだ男。両手に嵌められた手袋の甲には、それぞれプラズマ団の紋章が描かれている。
聖電隊統率、序列三位——7P、エレクトロ。
「お待ちしておりましたよ、リオ」
エレクトロは第一声にそんなことを言ってきた。
「以前、私は貴女に勝利しましたが……後から考えてみれば、あれは私の完全な勝利とは言えません。貴女とは、是非もうい一度、戦いたいと思っていたのですよ」
「そう、それは好都合。こっちも、今度こそはと思って来たわ」
お互いやる気十分な姿勢で、ボールを取り出した。
「方式は以前と同じく、四対四にしましょう。この戦いが、私と貴女の完全決着です」
「望むところ」
そして二人は、同時にポケモンを繰り出す。
「夢の時間です、ファントマ!」
エレクトロの一番手は、幻影ポケモン、ファントマ。紫色の火の玉と、それを取り囲むような炎の破片が浮かび上がっている。
「頼んだわよ、プリン!」
リオの初手は、風船ポケモン、プリン。ピンク色の丸っこい体をした小型のポケモンだ。
「やはり最初はプリンで来ましたね。予想通りです」
「そっちもファントマが一番手。分かりやすいわね」
お互いに相手の一番手を読んでいてのポケモンチョイス。以前はプリンがファントマを圧倒したが、今回はどうなるか。
「ファントマ、悪の波動!」
先手を取ったのはファントマだった。ファントマは悪意に満ちた波動をプリンに向けて発射する。
「かわしてプリン! ベルカント!」
だが直線的な攻撃では、プリンには届かない。プリンは空気の逆噴射で波動をかわすと、そのまま歌声を響かせ、ファントマを攻撃する。
しかし特防の高いファントマには、ベルカントはあまり通らす、眠りの追加効果も発生しなかった。
「神通力です!」
ファントマは神々しい念力を発してプリンを突き飛ばす。そして、
「鬼火!」
不気味に燃える紫色の火の玉を多数浮かべ、プリンへと飛ばす。神通力で怯んでしまったプリンは回避が遅れ、鬼火に取り囲まれて火傷を負ってしまう。
「プリン!」
「休みはなしです。ファントマ、神通力!」
火傷状態のプリンを、ファントマは神通力で押さえつける。神通力自体のダメージは大したことがないが、火傷で少しずつ削られるので、拘束されるのはまずい。
(このファントマ、前と戦い方が全然違う)
そう、一番厄介なのはそれだ。
リオはエレクトロの初手がファントマだと読んでプリンを繰り出した。それはプリンがファントマに有利だと思ったからだ。だがプリンが有利なのは、あくまで黒い霧によって身を隠しながら戦うファントマであり、このように状態異状を絡めた攻撃重視で押すファントマではない。
「熱風!」
しばらくプリンを押さえつけていたファントマは神通力を解き、熱風を放ってプリンを吹き飛ばした。
「悪の波動です!」
「っ、かわして恩返し!」
吹っ飛ばされながらもプリンは空気の逆噴射で波動をかわし、そのままファントマに接近。連続攻撃でファントマを吹っ飛ばすが、火傷で攻撃力が落ちているのでダメージは少ない。
「だったら地球投げ!」
特殊技も物理技もダメなら、固定ダメージの技で勝負に出る。プリンは地球投げを決めるべく、吹っ飛んだファントマを追いかけるが、
「それは受けたくありませんね。ファントマ、神通力です」
ファントマが放った神通力に迎撃され、突き飛ばされてしまう。
「熱風!」
続けて熱風が放たれ、プリンはさらに吹き飛ばされる。
普通の風を利用した攻撃なら、風に敏感なプリンならかわせる。しかしファントマの熱風はただ放っているのではなく、かなり変則的な軌道で、空気を乱しながら放たれているので、プリンでもかわすことができない。
「悪の波動です!」
追撃として悪の波動が発射されるが、プリンは逆噴射で回避。今度こそファントマに接近しようとするが、
「神通力」
直前で神通力に拘束されてしまう。さらに、
「ファントマ、熱風!」
灼熱の熱風を至近距離から放たれ、プリンは吹っ飛ばされた。今のは大きなダメージになっただろう。
「まだ攻めますよ。ファントマ、悪の波動!」
ファントマは攻撃の手を止めず、悪意に満ちた波動を発射する。
「プリン、かわしてベルカント!」
悪の波動は逆噴射でかわし、そのまま歌声を響かせてファントマを攻撃。そのまま接近していく。
「また地球投げでしょうか。しかしさせませんよ、神通力」
ファントマはプリンを止めるべく、神々しい念力を放つが、
「もう一度、逆噴射!」
神通力がプリンを拘束する直前、プリンはさらに空気を吐き出して軌道を変え、ファントマに接近する。
「っ、神通力!」
だがファントマの反射神経も負けてはいない。すぐさま軌道の変わったプリンを追いかけ、神通力を放つ。しかしあと少しのところで届かない。
そして、プリンの短い腕が、ファントマに届いた。
「プリン、がむしゃら!」
刹那、プリンの怒涛の連続攻撃がファントマに叩き込まれる。文字通りがむしゃらな攻撃は全てファントマにヒットし、ファントマは吹っ飛ばされた。
がむしゃらは自分の体力と相手の体力を同じ値にするまで攻撃を続ける技。ファントマの攻撃で体力が残り僅かとなっているプリンのがむしゃらは、さぞ堪えただろう。
「あと少し……プリン、恩返し!」
「させません。ファントマ、熱風!」
プリンの小さな拳が届くか、ファントマの熱風が先に放たれるか。
両者の攻撃は、一瞬の差で決まる——