二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- 忠誠のキスと眠り姫. 【003】 ( No.13 )
- 日時: 2011/08/04 15:07
- 名前: ゆう ◆Oq2hcdcEh6 (ID: uUVs9zNY)
「——なぁお前、彩音を嵌めてるって本当か?」
だん、と激しい音がすると共にオレは怒りをぶつけるみたいに亜美を壁際まで追いつめた。目の前の亜美はと言えば薄らと笑みを浮かべているだけで、何も言いはしなくて。隣の円堂はそう問い掛けるも、亜美は首を横にも縦にも振らない。
今更だが、亜美は彩音を陥れているらしい。噂じゃなくて、彩音がそう言っていた。はらはらと零れる涙は相当亜美を信用していた証拠だろう。なのにこいつは彩音を裏切った。追い詰めても追い詰めても亜美は笑みを崩さなくて。痺れを切らした円堂が少し怒ったような声音で言えよと強要している。オレも円堂と同じことを言いたい。さっさと言え、と冷たい声音で言葉を掛けると亜美はわざとらしくびくりと震えた。
「……うん、そうだよ。私は彩音ちゃんを嵌めてる。陥れて、——私がお姫様になるの! 楽しいと思わない? 彩音ちゃんを何処かに連れて隠れ住むんなら彩音ちゃんはこれ以上皆に嫌われないかもね」
「なんで、……何でそんなことっ、」
「……アリアさんに認められる為! 私はね、お姫様になれたらきっとアリアさんに認められるの。彩音ちゃんは後から来た癖にお姫様になっちゃってさぁ。意味分からない。彩音ちゃんに白は似合わない、精々灰かぶりが良い所。グレーでどう? ぴったり」
へらへらと笑いながらそう言葉を紡ぎだす亜美の表情はいつにも増して狂気が籠っていた。思わず後ずさるオレと円堂に亜美はくすくすくすと笑みを深める。黒の姫は闇が深いだのなんだのとは聞いていたがまさか此処まで黒く染まりきっているとは思いもしなかった。彼女には言い知れない狂気がある。それは承知だったのに、
アリアさん、という人物はオレも知っている。亜美が敬愛し依存する女性の名前だ。数年前に死んだと聞いていたが、それはどうも嘘らしい。亜美がどのような経緯で彼女に認められたいだのなんだのほざくようになったのかは知らないし知りたくもない、けど、
「……風丸くんには、分からないよ」
「 」
紡がれた言葉はあまりにも哀しげな声で。円堂も驚いたように亜美を見つめていて。世界が一瞬静止したかと思うほど、無音になった。その雰囲気を打ち破ったのは勿論目の前の彼女だったけど。
愛想の良い笑みを浮かべた亜美がじゃあね、とご機嫌で去っていくのを遠目に見つめてオレは溜息を吐いた。
「——あ、みちゃん、」
ぽつん、と小さくそう呟いた人物が居るのも知らずに。
***
わたしのきもちなんて、