二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: イナズマ 銀色の歌姫〜最終楽章〜 ( No.88 )
- 日時: 2012/01/27 19:33
- 名前: ドロップ ◆8WWubVa7iM (ID: 9UBkiEuR)
第十楽章
「今晩は、偽善者のみなさん。」
そう、冷やかな美しい声で出迎えたのは、
俺達がよく知っている、‘彼女’だった。
「ッ…!わ、和奏…!」
間違いない、和奏だ。
俺達が探し求めていた、月川和奏だ。
けれど彼女には、今までとは違う所があった。
顔の半分が、真っ白な仮面で覆われているのだ。
そう、まるで——。
「私は和奏ではない。」
彼女は、そう答えた。
けれど、納得いかない。
「何を、言ってるんだ?
お前は月川和奏だろう?」
「違うと言っているだろう。」
彼女は、俺達を一瞥した。
そして、俺にとって衝撃なことをつぶやいた。
「“月川和奏”という人間は、この世にはいない。
とっくの通りに——死んでいるのさ。」
頭に、激痛が走る。
「死んでいる?
ま、まさか…何を言っているんだ、それなら、お前は誰なんだ?」
「私は…」
その冷淡な表情、
その冷めた呟き、
その真っ白な仮面、
そう、まるで————。
「“ファントム”だ。
『オペラ座の怪人』に登場する怪人——、
私にぴったりの、名前だろう?」
彼女は、ただただ狂ったように、笑う。
すると、今まで黙っていた木野が声を上げた。
「和奏ちゃん!
私のことを覚えてる!?
ねぇ、また戻ってきましょう?そしてまた、みんなで一緒に…」
「お前のことなど知らない。」
木野は、その“ファントム”の言葉に、打ちのめされた。
木野とお前は、親友だったろう?
「嘘よ!
貴方は月川和奏!“ファントム”なんて、名前じゃないわ!」
「そうです、貴方は和奏さんです!」
「和奏ちゃん…」
雷門、音無、久遠が和奏に語りかける。
けれど、そんな言葉は、ファントムに通用しない。
「“月川和奏”なんて人間は、この世に存在しない。
——今までのお前たちの記憶は、
ただの幻想だったんじゃないのか?」
どうすればいい。
どうすれば、彼女の心を元に戻せる。
「帰れ、ここは私達の城だ。
お前達なんかに、入る権利はない。」
どうすれば、ファントムから和奏を助けられる?
クリスティーヌを、助けられる?
そんな事は、愚かな俺——ラウルになど、解る由もなかった。
「ねぇファントム、まだ追い出せてないのかしら?」
奥のカーテンから、誰かが入ってくる。
一番最初に入ってきた人物は、何処かで一度、会ったことがある顔だった。
そうだ、和奏がいなくなった時、部屋にいたあの——。
「…エルザ、どうしてここに。」
どうやら、一度あった事がある人物は“エルザ”というらしい。
「あら、あの時あった人たちね。
まずは、自己紹介を始めましょうか?」
すると、ぞろぞろと九人当たりの人が出てきた。
「私たちは、現で幻想となった人物よ。
まぁ——今は、物語の人物になってるけれど。」