二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: イナGO〜なくしたくない物〜 歌詞公開中 アドバイスください ( No.389 )
日時: 2012/03/05 21:22
名前: 柳 ゆいら ◆JTf3oV3WRc (ID: z52uP7fi)

53.大きな、穴



緋「ふうっ。なんとかまいたな。……どした?」

止まった緋詞が、ゼエゼエ言ってる俺の顔をのぞきこむ。

ユ「ど、どしたって……ハア、ハア……『彼女』って、ふざけんなよ。いつ俺がおまえの彼女になったんだよ……っ。」
緋「ああでも言わないと、納得しないよ? あーいうのは。」

緋詞……ヘラヘラしてるおまえを、ブッてやりたくなってきたよ。
助けてくれたけど。

緋「そろそろ授業始まるし、行かね?」
ユ「あ、おう。……イヤな予感はするけどな。」
緋「……それより先に、腕の応急処置じゃない?」
ユ「は?」

緋詞の視線の先には、俺の腕。
……あ、そういうことか。
右腕、処理した方がいいって言ってるんだな。……もしや、心配してくれてる?

ユ「保健室なら、自分で行けるから。」
緋「ダメだっつの。またアイツらに会ったらどーする。それじゃ、黒帯一歩手前で止まっちゃったおまえの力だって、存分に発揮されないだろ。」
ユ「君はいろいろと、めんどーなことを知っとるんじゃな。」
緋「なぜジジイ!」

緋詞がツッコミだと、ちょっとおもしろい。
そんな感情がすぐ顔に出て、思わずふき出してしまった。緋詞は、不思議そうな顔してるけどな。

ユ「ごめん。でも、ありがと。じゃあ、お言葉に甘えて。」
緋「ったく、最初っから言うこときいててくれよな。」
ユ「……緋詞。」
緋「ん?」

俺をまっ正面から見ている緋詞の顔は……ほんの一瞬、赤色に見えた。

ユ(あれぇ?)

緋詞に気づかれないように、心の中で小首をかしげた。
緋詞の顔、きのうも赤っぽかったような……。

ユ(まさか!)
ユ「緋詞、まさか、おまえ……!」
緋「へ!?」

緋詞の顔が、さらに赤くなっていく。
……!!

ユ「来て!」

俺は緋詞がなにか言うかもしれないと思いながらも、手を引っぱって、保健室に向かう。もちろん、後ろにいる緋詞は、なにかさけんでる。
さけぶなっての!
保健室のとびらを開け放つと、

ユ「ここ、座って!」

と、緋詞をイスに座らせた。きょとんとしている緋詞。

緋「あ、え?」
ユ「無理、しなくていいんだよ?」
緋「へ……////」

緋詞の顔が、またボッと赤くなった。

ユ「あるんでしょ? 熱っ。」
緋「へ? あ、あー……うん、月流って、そういうキャラだよな……。」

緋詞が“なぜか”肩を落とす。
なんでだろ〜? あ、もしかして、熱があるからダルいとか!

ユ「ヤバイじゃんか! ちょっと、ひたい貸して!」
緋「はへ!?//// ちょ、なっ;;;;////////」

俺が緋詞のひたいに、自分のひたいを近づけると、どんどん緋詞の顔が赤くなる。
ええっ、もしや、悪化してるぅううううぅぅうう!?
って、べつにひたいは熱くない……。

ユ「うーん、熱はないけど、じゃあ、なんで赤いんだ?」
緋「ちょ、じゅ、授業あるから、じゃあなッ!」
ユ「あ、ちょっと待って!」

俺が呼びとめると、緋詞はすぐふり返った。

緋「な、なに?」
ユ「悪いけど、ノート書いたら、屋上にいるから見せてくれ。たのむな。」
緋「あ、ああ。じゃあなっ。」

緋詞……走って行っちゃったよ。
あーあ。俺、なんかしたかな??


     〜1時間目終了〜


すがすがしい青色の空。
もくもくの白〜い入道雲。
でも、包帯を巻いたのに、まだ痛む右腕。
ムカムカ。そんな感じが、胸の中でうずまいている。いらだちしか感じていなかった。あの、女生徒たちへのいらだち。
でも、怒りやにくしみ、野望、ねたみは胸の中に抱くだけならいいけれど、それに心を飲み込まれてはいけない。
誰かに、昔、そう言われた気がした。兄さんかもしれない。

緋「屋上にいると、スカッとするよなぁ。」
ユ「……ああ。」

となりにすわっている緋詞が、いつもどおり話しかけてくれた。
そうだよ。あいつら、こういう景色を見て、スカッとすればいいのに。……それが、無理なのか。
「いじめ」をする奴らが、まさに「怒りやにくしみ、野望、ねたみに飲み込まれた人」たちだと思う。「いじめ」は、自分が安心したいがために、他人を傷付け、自分がいい気に……上に立ったような、そんな感覚になりたいだけなんだ。
アレだって、もう十分いじめだと思うんだけど、違うのかなぁ。

緋「……腕、まだ痛むか?」
ユ「ん? まあ、少し。でも、いくぶん楽になったぜ。」

俺の言葉に、緋詞の青いつり目が、とろりとしたたれ目に変わる。
心底安心してるんだなというのが、よく伝わった。

緋「なら、安心した。それに、助けてくれてよかったぁ。」
ユ「べ、べつに助けてくれなくてもよかったんだぜ?」
緋「なんで? まさか『彼女』って言ったからか?」

緋詞がニヤニヤしながら聞いてくる。
からだが、カアアと熱くなっていくのを感じていた。

ユ「なんだよっ。べ、べつに違うって! ほら! あの女子たちに、いじめられるかもと思って……っ////」
緋「あー、そーいうことねww」
ユ「なっ。わ、笑うなっ//// ……あ。」

とびらの上にとりつけられている時計を見ると、もう2時間目がはじまる5分前だ。
こんなになごやかで、楽しい雰囲気なのに……もう終わり?

緋「また、欠席する?」
ユ「……ああ。ノート、たのむな。」
緋「おう、いいぜ。1回1万円な。」
ユ「高ッ! そんなん、すぐサイフの中身スッカラカンになってまうわ!」

俺がツッコミを入れると、緋詞がぺろりと舌を出した。


                          ————楽シイナ————


そんな気持ちが、今、うれしく感じた。
いつも感じている気持ちなのに、しんせんに感じる。
でも、まだ、ひとつ、大きな穴が開いてる。



友撫でもない。















































兄さんも違う。















































天馬でもない。



























































































じゃあ、誰なの?
























































































































































あ……も……し……かし……て……!?



『今、爆発2時間前』