二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【薄桜鬼】 死神少女と約束の桜 ( No.57 )
- 日時: 2012/02/02 18:33
- 名前: 雛苺 (ID: X9g0Xy3m)
- 参照: カフェオレよりミルクティー派!
第16話
「・・・ん・・なに?今の音」
伊織は何かが落ちたような音を聞き布団から身体を起こした。何故か胸騒ぎがする。得体の知れない何かが来そうな”恐怖”にも似た感覚。伊織はそっと部屋の外に出た。ちらっと昴を見ると気持ちよさそうに寝ている。その時、伊織の耳に大嫌いな声が響いた。瞬間、伊織は床を蹴った。
怖い。ただそれだけが千鶴の胸を埋めていた。何故、目の前に其れが居るのかが分からない。だが、ただ怖いと思った。その狂った紅い瞳も開けられた障子から差し込む月の光に反射する白髪も、その全てが怖いと思った。
「血ぃ!血をくれぇぇぇぇぇ!!」
「きゃあああああ!!」
千鶴は恐怖に任せて力の限り叫んだ。死を覚悟した瞬間、鋭く光る刀が千鶴に華を咲かせることは無かった。ぴたっと冷たい液体が千鶴の頬に付く。目の前の其れ------------羅刹の心臓からは木刀の先が出ていた。羅刹は口元にゆがんだ笑みを浮かべながらそこに倒れる。羅刹の後ろから姿を現したのは。
「伊織・・ちゃん」
「・・・大丈夫?千鶴ちゃん」
「う、うん。平気」
伊織は口元に弧を描き千鶴と目線を合わせた。何処にも怪我が無いことを確かめると安心したように息をつく。
「良かった。千鶴ちゃんに怪我が無くて」
「ありがとう。伊織ちゃん」
ほっとしたように笑う伊織を見て、千鶴も少し微笑む。しかしまだ顔色は青かった。
「とにかく、こんな紅い部屋から出よう?」
「うん」
伊織が立ち上がり千鶴に手を差し出した瞬間---------------伊織の腹部から銀色の刃先が顔を出した。
「え・・・?」
ドクンッ
心臓が大きく跳ねた。ドクン、ドクンと心臓が早鐘をうつ。伊織の背中を冷たい汗が滑り落ちる。
この匂いは何?
この色は何?
この痛みは何?
あれは・・・なに?
真っ赤な・・あれは・・いったい・・・
「------------------------------!」
伊織は声にならない悲鳴を上げる。
月の淡い光だけが差し込む闇に包まれた部屋に、狂った少女が現れた。