二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: NARUTO─木の葉忍伝 ( No.5 )
日時: 2012/07/08 16:45
名前: 近衛竜馬 (ID: AzSkpKat)

里の忍への顔見せが終わった三ヵ月後、火影邸に一人の青年が訪ねていた。その青年の名前は、はたけカカシ。木の葉隠れの里の上忍だ。
忍は大きく分けて下忍、中忍、上忍、影の四段階に別れる。まず、忍者アカデミーを卒業した生徒が下忍となり、試験を受ける事で中忍へ、そして推薦や要請を受ける事で上忍となる。更に国の大名や、上忍等の投票を経て、忍びの頂点、影へと就任する事ができる。
そしてアカデミーの生徒が下忍となる際、三人のチームを作ってそこに一人の上忍が隊長として担当する事になっている。ミナトとカカシは班結成当時の上忍と下忍の関係という訳だ。
「ミナト先生。呼びました?」
気の抜けた様子で火影であるミナトの部屋へ行く。そこにはいつも通り書類仕事をしているミナトの姿があり、カカシが来た事に気づくと仕事の手を休めてカカシに向きなった。
「ん!カカシ。今日はね、君に頼み事があって呼んだんだ。聞いてくれるかな?」
ミナトは予め用意してあったパイプ椅子にカカシを座らせると、用事の内容を話し出した。
「近々木の葉隠れの里は雲隠れの里との同盟協定を結ぶ事になっているのはカカシも知ってるよね?そこでカカシに重大な任務があるんだ」
カカシはミナトの真剣な表情を見て思わず生唾を飲む。いつも穏やかなミナトがこんなにも真剣な顔をしているのだから、その任務とやらは危険なものに違いない。万が一クーデターが起きたときの鎮圧?忍頭の監視?カカシはどんな任務が来ても良いように心の準備を行なった。
「良いかい?カカシには『ナルトのお守』をして欲しいんだ……!!」
「………………ハイ?」
思わずずっこけそうになったが、何とか堪える。間の抜けたような声が出てしまったのはご愛嬌だ。
「た、確かに火影の息子のお守りという意味では重大な任務ですけど……ええ?」
カカシの問いかけに対するミナトの返答はこうだ。
「ん……ナルトは贔屓目に見ても、目に入れても痛くない程の可愛さがあるからね。万が一。雲隠れの忍頭がナルトの可愛さに目をつけて攫ったりでもしたら、悔やんでも悔やみきれないし、下手をしたら戦争にでもなりかねないから……頼めるかな?」
要するに親馬鹿火影は自分の一番信頼出来る上忍にナルトの事を託そうと思ったわけである。贔屓目に見て、というが、これはいくらなんでも贔屓しすぎだと、カカシは思う。だが。
「はぁ、分かりました……ナルト君は俺に任せてください」
こうして、カカシはミナトの命により、ナルトのお守り、もとい護衛を請け負う事になったのだった。

「……と、言う事で今日から暫くナルト君と一緒にいる事になった、はたけカカシです。よろしく〜」
視線をナルトの目の高さまで合わせて、出来るだけ笑顔で挨拶をする。とはいってもカカシの顔は半分以上がマスクや額当てで隠れている為にナルトがその表情を読み取る事は難しい。
「カカシ……にーちゃん?」
「そ、カカシ兄ちゃん」
ナルトはカカシにトテトテ、と近づき、右手を取ってよろしく、と笑顔を見せる。ミナトがあそこまで親馬鹿になるのも分かる気がしたカカシだった。

雲隠れとの同盟協定セレモニー当日。雲隠れの里の忍頭を、木の葉の里の忍全員が歓迎し、今回の同盟協定を喜んだ。その日の夕方までセレモニーは続き、忍頭は日が沈みきる前に自国へ帰っていた────と、里の忍達は思い込んでいた。
しかしナルトは見た。忍頭が門を潜って木の葉を出て行った後、すぐに向こうの壁を越えて森の中へ入っていったのを。

ナルトは危険を顧みず、忍頭の姿を追った。三歳児のナルトの足で、成人の忍頭に追いつくのは無理があったが、幸か不幸か、森の中を迷いながらも、忍頭の姿を発見した。そしてその脇に抱えられた少女の姿を見て驚愕する。
「ヒナタ……ちゃん!!」
ナルトは駆け出して忍頭の前に立ち塞がる。
「お前ぇ!何やってんだ!!ヒナタちゃんを離せ!」
「何だお前は……そうか、確か火影の餓鬼だったな。丁度いい。お前も連れて行って、木の葉を降伏させる為に利用してやる」
にぃ、と忍頭が不敵な笑みを浮かべてナルトに手を伸ばす。ナルトは逃げようとするが、ヒナタを見捨てる事は出来ず、後ずさりをするだけに留まる。しかし徐々に距離を詰められて、もう駄目だと思ったその時、忍頭の手の甲にクナイが突き刺さった。
「ナルト君……幾らそのおじさんが怪しい事してたって一人で追いかけちゃ駄目でしょ。ま!そのお蔭でヒナタちゃんを助けられるんだけどな!」
カカシはそう言って木の上から飛び降りて見事に着地を決めた。

「カカシにーちゃん!!」
ナルトは助かったとばかりにカカシの名を叫び、安心したのか、涙を流す。
「だいじょーぶ!心配しなくてもヒナタちゃんは助けるからもう泣かなくていい」
カカシはそう言って忍頭に向き直る。
「ふん……こちらには人質がいるんだ。状況はこちらが圧倒的にゆう……り!?」
「随分と大きな落し物じゃないの?忍頭を名乗るなら、例えどんな状況でも油断しちゃ駄目でしょ」
カカシは驚くべき速さでヒナタを忍頭の手から奪い取り、瞬身の術でナルトの元へ戻る。
「ナルト君。ヒナタちゃんを頼むよ。俺は今からあの悪者を退治するから、ね!」
カカシは振り向きざまに手裏剣を投擲し、忍頭を攻撃する。だが、忍頭は上に跳んでそれを避ける。カカシはそれを追いかけて、術を発動する。
「殺しはしない……お前を殺したら雲隠れはそれを利用して何か要求してくるだろうし……何より三歳児の前だからね!」
カカシは忍頭の胴体に右手を添えて、『チャクラ』を込める。
「口寄せの術!」
その言葉と共に、八匹の忍犬を呼び出して忍頭に噛み付かせる。
「お前達……そのまま動きを封じるまで離すなよ……」
カカシは忍頭の体を拘束した後、後からやってきた日向の人間に引き渡した。

その次の日、ヒナタは病院のベッドの上にいた。
「ヒナタちゃん……具合はどうだってばよ?」
ナルトは心配した様子でヒナタの顔を見る。ヒナタは顔を赤らめながらもだいぶ調子が良くなった、と返事をする。実際はまだ頭がぐらつくのだが、そこは相手を心配させないようにする、ヒナタの気遣いだ。
「ナルト君が……私が攫われたのに気づいてくれたんだよね?ありがとう……」
ヒナタはモジモジしながらナルトに礼を言う。しかしナルトは────
「でも……俺はそれに気づいただけで何も出来なかった……ヒナタちゃんを助けたのはカカシ兄ちゃんだし、俺はただビビッてただけだってばよ」
「でも、ナルト君が気づいてくれて無かったら、私はあのおじさんに攫われちゃってた。だから、ナルト君は私の命の恩人だよ」
ヒナタの言葉の後に続いたのは沈黙だった。複雑な思いのナルトと、何を喋っていいのか解らないヒナタ。先に言葉を紡いだのはヒナタだった。
「ナルト君。出来れば、その……私の事、呼び捨てで呼んで欲しいんだけど……ダメかな?」
ヒナタは、そういった後、ナルトから顔を逸らして両手の人差し指をツンツンとつつく。これはヒナタが羞恥心を感じた時にやる癖だ。今までナルトとヒナタの会話黙って見っていたクシナが『にやにや』していたのも原因としてあるだろう。
「……分かったってばよ。ヒナタ。でも、ヒナタは俺のこと呼び捨てで呼ばないのか?」
「私は、こういう性格だから、ナルト君の事はナルト君って呼びたいの。これからもよろしく。ナルト君」

ナルトとクシナは病院からの帰り道を歩いてた。
「フフッ。ナルト。ヒナタちゃんの事、泣かしちゃだめよ?」
「……?なんで俺がヒナタの事泣かすんだ?意味が解らないってばよ」
ナルトは不思議そうに首を傾げ、怪訝そうな表情を浮かべる。因みに、クシナが今日の出来事をミナトに話すと、親馬鹿火影は暫く硬直していたという。