二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: NARUTO─木の葉忍伝 ( No.9 )
- 日時: 2012/07/12 15:28
- 名前: 近衛竜馬 (ID: AzSkpKat)
我愛羅は九歳の時に砂に帰り、今、ナルトは十二歳。季節は新しい事が始まる、春だ。場所は忍者アカデミー。ナルトは十歳程からアカデミーに入り、来年で卒業する。
クラスも、一年事に変わっており、今は自己紹介の最中だ。
「うちはサスケ……です。趣味は兄さんとの修業。好きな食べ物はトマト。特技は火遁の術で、夢は木の葉刑務部隊に入る事、です」
ぎこちないながらも、サスケの自己紹介が終わり、いよいよナルトの番だ。母親に習った挨拶の仕方を頭の中で反芻し、その場で起立する。
「俺の名前は波風ナルト!趣味は父ちゃんとの修業で、好きな食べ物は一楽のラーメン!特技は風遁の術と影分身で、将来の夢は火影になって、里の皆を護る事だってばよ!」
とても元気の良い挨拶は、担任のうみのイルカ教員も満足そうに頷いた後、次の生徒の名を挙げて、自己紹介を促した。
「はぁ〜めんどくせぇ…………来年で卒業とか……死ぬわ。まじで」
昼休みに、屋上でアカデミーに入る前から仲の良かったメンバーで集まって、思い思いに話をしていた。そんな中で、ぶつぶつとぼやくシカマルに、親友であるチョウジが話しかける。片手に菓子袋を持っているのは言うまでも無い。
「でも、シカマルは頭良いから凄い忍びになれると思うよ……?」
ポテトの菓子を食べながら隣で言うチョウジにシカマルはそんな事ねぇよ、と謙遜した後で、再び溜息を洩らす。
「ギャハハ!チョウジ!そんなやる気のねぇ奴が凄い忍びになんてなれる訳ねぇだろ!それに、頭が良くたって山賊や他国の忍者と戦え無きゃ、意味ねぇって!!」
キバはそういった後、なぁ赤丸?と頭の上に乗っている自分の愛犬に話しかける。
チョウジとシカマルを嘲笑うキバの隣で、シノが盛大に溜息をついた。サングラス越しで良く分からないが、キバに向かってお前は馬鹿か?いや悪い、馬鹿だったな。とでも言いたげな視線を送る。
「名門一族の出とは思えない程、軽はずみな発言だな……忍びにとって必要なのは戦う力。それは確かにそうだ。しかしその戦いを勝利に導くのは何よりもその頭脳と言える……なぜなら戦闘時にチャクラのペース配分、そして状況の分析をしない者は、すぐに足元を掬われて痛い目を見るからだ」
シノのキバを窘める様な発言に、チョウジは良く分からないような表情を浮かべた後、シカマルはより一層面倒臭そうに表情を歪める。プロの忍びから見れば、シノの言う言葉は尤もだ。だが、忍びですらない、アカデミーの生徒からしてみれば、ただの小難しい、面倒な喋りでしかない。うちは一族の天才の例に漏れないサスケやチョウジ曰く頭の良いシカマルは理解できた様だが。そしてナルトも。
「うん……シノの言う事は何となくわかるってばよ。でも俺ってば勉強はあんま得意じゃねぇからなぁ……」
ナルトはそういうが、実際、ナルトの座学の成績は、クラスの真ん中より少し上程度だ。午前の、自己紹介の後に行ったペーパーテストは、十五問中、十一問正解という少しだけ良い結果を残していて、火影の息子としては足りないだろうが、同年代の子供の中では、平均より上の頭脳を持っていた。それでも、サスケやシノ、くの一クラスのヒナタ等は、座学で、全問正解等の好成績を収めている。シカマルは、鉛筆を動かすのも面倒だ、とテストの最中ずっと眠っていたので問題外だ。
「それは問題無い。お前は頭が悪くても、シカマル等の頭脳の優れている者が作戦を立て、体術や忍術に優れているお前やキバ等がそれを実行すれば、十分忍者としてやっていける。なぜなら……中忍や上忍の中にも、攻撃タイプや頭脳タイプがいて、それぞれに合った任務を言い渡されているからだ。偶に、サスケの様な両方が優れているタイプがいることもあるがな」
シノの言葉に、キバの口からそれは自分が頭が悪いと言いたいのか、という反論がシノの耳に届いたが、シノはそれを無視しながら、売店で買った野菜ジュースをストローで飲む。最近のマイブームは人参味との事だ。
午後の授業が始まり、その内容は木の葉隠れに伝統として伝わる忍組手だ。ルールが一々固すぎる面もあるが、それでも初代火影から、現在の代に至るまで、数多くの忍びがこれを行って力を付けた、とイルカは説明をする。
「じゃあ、秋道チョウジと奈良シカマル!前へ出ろ!」
「先生……あんまり友達を殴ったりしたくないです」
「そんじゃ……先生、俺の場外負けって事で進めてくれ……」
チョウジの弱気な発言と、シカマルのやる気ゼロの姿勢に、イルカは肩を落とす。それでも、試合の後の“和解の印”は忘れさせない。
「ったく……次は波風ナルトと、うちはサスケ!まずは“対立の印”、そして組手が終わったら和解の印をお互いにするんだぞ?」
ナルトとサスケは忍術を発動する時の印を片手でやる、対立の印なるものを、互いに行い、次に体術の構えを取る。二人は、幼い頃から父、或いは兄から忍術や体術、幻術の修業を受けていた。忍組手は、体術だけで行う組手なので、少々不満だが、こうしてお互いの力をぶつけ合うというのは、実は始めての事だ。
「いつもは……父ちゃんやイタチ兄ちゃんに止められて、やれなかったからな。サスケ!手加減は無しだってばよ!本気でやろうぜ!」
「当たり前だ……兄さんとの修業の成果、見せてやる」
両者、中央に走り出し、激しい拳と拳の押収を繰り広げる。サスケの右拳がナルトの頬を掠めたが、それは本当に掠っただけで、ナルトの右足がサスケの腹に反撃を繰り出す。だが、サスケはそれを両手でガ—ドをして、逆に足を掴む。
「ダラァ!!」
サスケはジャイアントスイングの容量でナルトを投げ飛ばすが、ナルトは空中で体勢を立て直して、見事に着地。両者一歩も譲らない戦いに、辺りの空気は静まり返り、その後は両社睨みあいが続く。両者の動きは既に下忍レベルか、それ以上。先に沈黙を破ったのはナルトだ。
「喰らえっ!」
「食らうかよ!」
ナルトは上段の蹴りをサスケに向かって放つが、サスケはそれを余裕で回避する。しかし、その蹴りは囮で、次に行う下段の蹴りこそが本当の狙いだった。
「木の葉旋風っ!!」
ナルトの左足が、サスケの腹を捉え、その身体を吹っ飛ばす。しかしサスケは痛みを堪えながら、地面に両手をついてそのまま、体操の様にバク転で後ろへ下がる。
「……はい、終了。それ以上やると怪我しかねないから、な?」
イルカの呼びかけに、ナルトとサスケは非常に不満げな表情を浮かべる。
両者共にまだ息は切れていない。実を言うと、ナルトが木の葉旋風を放った辺りからが、彼等にとっての本当の始まりだったのだが、その事をイルカは知らない。
「まぁ、お前達の体術は百点をあげても良い。あくまでアカデミー生徒として、だけどな」
実際はアカデミーのレベルでは収まらないのだが、そこはイルカの飴と鞭である。
ナルトとサスケは和解の印を行った後、生徒達の中に混ざった。