二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- 若気の至り 壱(泡・・・?) ( No.3 )
- 日時: 2012/07/08 22:33
- 名前: 無雲 (ID: C5xI06Y8)
・攘夷4の彼女たち
・なんでお前等一緒にいんの?などのツッコミは無しで。
「腐ってる。」
「腐ってるわね。」
月詠、幾松、また子、陸奥の四人は、一つのちゃぶ台を囲んでテレビを見ていた。
彼女たちが見ているのはニュース番組。画面の中ではニュースキャスターがとあるタレントの不祥事を報道していた。
「二股だけじゃ飽き足らず三股かけるとは。男の風上にも置けん。」
眉根に皺を寄せた月詠が煙管を袂から取り出す。
「まっこと。こがな男、ふぐり腐らせて死ねばいいんじゃ。」
陸奥が辛辣な言葉を吐くが、誰も気にした様子もなく陸奥に同意する。
「そうそう。弄ばれた人の気持ちも考えろってのよ。」
幾松が腹立たしげにちゃぶ台を軽く叩く。湯呑がカタカタと音を立てて倒れるが、幸い中身は空だったため何も零れずにすんだ。
「この男の脳天ぶち抜いてやりたいっす!」
また子は今にも拳銃を抜きそうな勢いだ。
「賛成です。何なら僕も協力しましょうか?」
一瞬の沈黙。
だが次の瞬間に、四人はいきなり現れた侵入者から大慌てで離れた。
「おおお、お緒方さん!?」
「きゅ、急に現れるな!驚くじゃろう!」
「そうっす!いるならいると言ってください!」
「し、心臓止まるかと思ったぜよ・・・。」
侵入者———緒方総次郎は薄い微笑を浮かべる。どうやら空になった湯呑を下げにきたようだ。
「それにしても意外ですね。姉さんたちはそういうの気にしないのかと思ってました。」
未だに部屋の隅に避難している四人をよそに、緒方は湯呑を盆の上へ乗せていく。
ちゃぶ台の上から湯呑が消えた。
そのころになって四人はやっと呼吸が落ち着き、深々と溜息をついた。
「・・・のう、緒方。」
少しの間を開けて陸奥が口を開く。次に彼女が口にした言葉は、女四人組の疑問を率直に表現したものだった。
「さっきの、儂等がそういうの気にせんと思っちょった、とはどういう意味じゃ。」
「へ?もしかして姉さん方知らないんですか?」
わずかに瞠目した緒方が、湯呑の四つ乗った盆を畳の上に置く。洋服の上に羽織った白衣が静かに翻った。
「昔の桂先生達はもっとすごかったんですよ。」
ビキリ
ガラスのひび割れるような音を立てて空気が凍りついた。
「えっと、最高記録は坂田隊長の八股だったかな。」
月詠の手から煙管が滑り落ちた。
「高杉総督は隠れファンが多かったですね。」
また子が目を見開くが、緒方は全く気が付かない。
「桂先生は言い寄ってくる女性が一番多くて、」
幾松の顔に影が落ちた。
「坂本隊長は行く先々で無意識に女性を引っかけてきましたね。」
陸奥の握りしめた拳がわなわなと震えている。
やっと部屋を支配している剣呑な空気に気付いた緒方が、その顔から笑顔を消し去る。その代りに彼の顔に浮かんだのは冷汗。
「つーくよ!」
「おいまた子、いるかー。」
「遅くなってすまない。」
「むっちゃん!!」
最悪。
そう、最悪のタイミングだった。
緒方が一つ瞬きをする間に、部屋に入ってきた四人の男は剣呑な空気を醸し出す自身の彼女に吹き飛ばされていた。(高杉は突き飛ばされただけだったが。)
「銀時の阿呆!」
「〜〜〜〜〜っ!」
「最っ低!!」
「いっぺん死んで来い!」
しばしの間、我先にと部屋を飛び出していった四人の背を呆然と見送っていた男たちは、やがて緩慢に振り向いた。
その視線の先に居たのは・・・。
「緒方・・・?」
狂乱の貴公子の氷のような視線に射抜かれ、緒方の体が硬直する。
「どーいうことかなぁ?」
白夜叉から発せられる殺気が部屋に満ちた。
「説明してもらおうか・・・。」
怨牙の修羅が刀に手をかける。
「儂らが納得せんようなことじゃったら・・・分かっとるな?」
黒焔龍は黒い笑みを顔に張り付かせた。
「は、はははは・・・。」
———あ、僕死ぬな・・・。
緒方の脳裏に走馬灯が駆け巡った。
(弐につづく)