二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: サマーウォーズ 【漆黒の天才ハッカー】 ( No.21 )
- 日時: 2012/08/14 21:46
- 名前: ソウル (ID: .uCwXdh9)
【エピソード2】
「ついたー!!」
夏希は大きく深呼吸をし、体を伸ばした。
緑いっぱいの景色の中で「健二君お疲れっ」と振り返る。
「は、はい……」
健二はゼーゼーと苦しげに息を吐きながら、眉を下げて笑った。
彼は両腕に2つのボストンバックをもち、さらに紙袋までも大量に持っていたため、あっちへこっちへふらふらしている。
「ただいまー!!」
ガラッと扉を開け、夏希は威勢のいい声を飛ばす。
すると奥の居間から女性がひょっこりと顔を出した。
「おかえ……あら、久しぶりねぇ!」
夏希の後ろで緊張した顔つきをしている健二を見て、女性は顔をほころばせた。
「あっと、え、その、お、お久しぶりです!万理子さんっ」
健二は目の前にいる、ふくよかな体にぴんっと張った背筋の、元気そうな老女に頭を下げた。
心なしか前回よりも緊張しているのは、夏希との関係に変化があったせいだろう。
万理子はそんな健二に明るい笑顔を見せ、
「さ、あがってあがって!」
と、声を張り上げた。
「じゃ、入って健二君!」
「あ、はい。おじゃまします」
夏希の言葉に、健二はへこへこと頭を下げながら陣内家に足を踏み入れた。
しかし万理子は、突然困ったように苦笑を浮かべる。
「といっても……今は全然家に人がいないんだけどね」
「えぇ!?なんで?」
驚いて目を見開き、不満げに問いかける夏希に、万理子は呆れたように呟いた。
「ほとんど皆仕事さ。今この家にいるのは、聖美さんと佳主馬とその友達、あと陽奈美ちゃん。まあ夜になれば皆帰ってくる来るけど」
(あ……佳主馬君友達いたんだ……)
健二は失礼なことを考えつつ、ハッとして万理子を見た。
「あの……『陽奈美』ちゃんって……?」
聞き覚えのないその名に、小首をかしげる健二。
夏希はくすっと笑い、万理子が口を開く前に彼の腕を引っ張った。
「わっ!ちょっ夏希先輩っ?」
ぎゅっと思いっきり腕を握られ、健二は顔を赤く染めながら夏希の名前を呼んだ。
しかし彼女は健二のほうを振り返らない。
陣内家の長い廊下を、ドタバタ音を立てて走っていく。
そして納戸のような小さな空間にたどり着くと、そこで急に立ち止まった。
「うわっ!ぶっ!」
「きゃっ!」
ドターン!!!
凄まじい効果音とともに、健二は夏希に覆いかぶさってしまった。
突然止まった彼女のようには止まれなかったのだ。
「わぁっ!ごめんなさい!」
「だ、大丈夫。でもとりあえず……」
夏希は一瞬口ごもり、自分の馬乗り状態の健二を見上げた。
テンパって固まってしまっている。
「お、おり」
「……何してんの?」
夏希の言葉をさえぎった声の主を、2人は同時に見上げた。倒れこんだまま。
そこにいたのは浅黒い肌に左だけ極端に前髪の長い少年だった。
あいかわらずのランニング姿だが、去年着ていたものとは違う。
背中にはおんぶ紐をぶら下げていた。
彼の名は池沢佳主馬。
いったんラブマシーンの猛攻によりチャンピオンの座を失ったが、現在は再びチャンピオンとしてその名を飾っている。
そんな佳主馬がこれ以上ないくらいに眉を寄せ、ふてぶてしい態度で言った。
「昼間っから……不潔」
その言葉に夏希は顔を一気に赤らめ、健二を突き飛ばす勢いで立ち上がる。
「なっ、か!佳主馬!なに言ってるの!?昼間からするわけないで」
「夏希先輩も何言ってるんですか……」
見事に口走ってしまった夏希の後ろで、健二は遠い目をして呟いた。