二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

エピソード1 ( No.100 )
日時: 2012/12/11 16:10
名前: 時橋 翔也 (ID: EggErFJR)


「新入生の皆さん 入学おめでとうございます」

俺が一年生の時の入学式
お決まりの校長からの挨拶をお決まりのように聞いていた
ここは東京とは思えないほど田舎な所にある万能坂中学 見た感じボロくて、どうしてわざわざ北海道からこんなとこに来たんだと思うほど幻滅したこともあった

だが、この中学は先生は親切だし、見た目とは裏腹に暖房や冷房もある 以外と快適な校舎だ
おまけに、この中学のサッカー部はかつて全国一位の栄光に輝いたこともあるらしい イナズマジャパンが世界一になった五年後の事だ まあだからこそ俺はこの中学を選んだんだ

目的は要するにサッカー 北海道でもよくやってたけど、ここは北海道と違って雪がないからな… うまくできるかどうか

「以上で、入学式を終わります」

よし、終わった
俺はそう思いながら一階の教室に戻った

教室では近くの人同士と話している奴等が多い 中学で初対面のやつと気軽に話せるなんて… 人見知りの俺には考えられない事だ

まぁいいや 俺は担任が来るまでの間本でも読もうと机の横のカバンを開こうとした 時だった

「なあ…お前サッカー好きなの?」

声がした
それは隣に座っている女子からだった
髪は肩くらいの短いオレンジ色で、正直言って制服を着ていないと女子なのか男子なのか見分けがつかない

「…ああ 好きだけど」
俺は答えた
「やっぱりか!お前筆入れにイナズマジャパンのキーホルダーばっかりつけてるしな!」
そいつは言った

見ると確かに、俺の机の筆入れはイナズマジャパン系のキーホルダーで埋め尽くされている
「俺も好きなんだサッカー」
「へー…」
海音以外でサッカーが好きな女子初めてだ…俺は思った

「俺は波谷 憐(なみや れん) お前は?」
「…光良 夜桜」
「そっか よろしくな夜桜!」
こいつ…馴れ馴れしく呼び捨てかよ
「俺 サッカー部入るんだけど…夜桜は?」
「俺もサッカー部だ」
「同じ部活だな!」

この学校、女子はサッカー部に入れるのか?
そんな疑問が残ったまま俺は帰った

俺は施設で育ったので親はいない だから万能坂にあるアパートに暮らしている ちなみにこの光良という名字は施設の人が考えたものだ

鍵を開け、俺は部屋に入る
中はまだ整頓されていなくてごっちゃだ ダンボールやら服やら散乱している

このアパートには食堂もあり、自分で料理をつくらなくてもいいのが魅力に感じる

俺はずばり言おう 料理が下手 いや できない

前に施設に誰もいないとき、卵焼きを海音につくった事があるが、炭と同然な出来上がりとなってしまった
海音は美味しいと平らげてくれたが、それは海音の異常なまでの味音痴がゆえだ
普通の人が食べたら腹壊す いや 気絶するだろう

「夜桜くん ごはんできたよ」
管理人の声だ
ここの食堂の食事は全て管理人の人が担当しているが、全て絶品だ

多分俺が一生かけてもたどり着かない領域だろう

——————

次の日から、さっそく部活の勧誘が始まった
俺はサッカー部以外の部活なんて考えていないので、サッカー部には目もくれない
いや…もしかしたらバスケ部ならいいかもしれないが… そこは置いておこう

だが以外な事に、サッカー部は勧誘をしていなかった
一番サッカー部が勧誘しそうなんだがな…

「すいません!サッカー部に入部希望です!」
俺はサッカー部の部室にやって来る
そこにはざっと三十人ほどの新入生がいた 波谷もいる
「おっ 夜桜じゃん」
「サッカー部勧誘してなかったけど…何でこんなにいるんだ?」
「サッカー部は内申書に影響するからな、次々と人が来るから勧誘する必要がないんだろ」
ああ そういうことか

「これから入部テストを行う その中で良い動きをしたものを入部させる」
「テストか…」
波谷は呟いた

ルールは至って簡単
部長と一対一のサッカー対決だ
勝ち負け関係なく、動きを見るらしい

俺と波谷は順番が来るまでの間、テストの様子を見ていた
皆、部長に惨敗していた
けどあの部長…三年生の割りに上手い訳じゃない

「次…波谷!」
「はい!」
元気よく挨拶をして波谷はフィールドに向かう
俺の横では男子たちが話を始めた
「あいつ女子じゃん 入部出来んの?」
「いちおう制限は無いらしいぜ」

一対一の波谷と部長の対決
実際、波谷のサッカーセンスはほとんどない
だが…女子にしてはやる方に思える

五分間のサッカー対決が終わり、波谷は戻ってきた
「疲れた〜…次は夜桜だよな」
「ああ」

名前を呼ばれ、俺は部長の前に立った
部長か…
「では…始め!」
近くのサッカー部員の声と共に、一対一の対決は始まった

ボールは部長が持ってる
俺がボールを奪えば良いらしい
にしてもこいつ動きトロい… イライラするな
…いいや 勝とう

俺はスライディングをかけ、部長からボールを奪った
「なに!?」
俺にボールを取られたので、そこで対決は終わった

「夜桜すげー!」
「そうか?」
俺で最後なので、一年生は皆部長の前に集まる
紙を持っていた
「今から結果を発表する」

心臓が高鳴る
これで受かってなかったらどうする?まさかないと信じたい

先行順に次々と名前が呼ばれていく
案外早く俺達の名前が来た
「…波谷 光良 以上だ」
名前を呼ばれ、ホッとした

波谷も、ぎりぎりだろうが受かっていた
「やったな夜桜!」
「ああ…波谷もな」
「波谷なんて堅苦しいこと言わないで、もう憐って呼べよ 言いやすいし」波谷は言った

いやまて、波谷は女子だぞ?
女子で呼び捨てにしたのは海音とか施設のやつだけだ!
「いや…俺は…」
「気にすんなよ」
「……わかったよ! 憐」「そうこないとな!」
波谷…いや 憐は言った

ここから永いようで短い俺と憐の関係は始まったんだ