二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 曇天 報告>お絵かき掲示板に丹波さんを書いてみました。up ( No.71 )
日時: 2008/10/06 20:30
名前: 護空 (ID: bG4Eh4U7)

「よーし、準備できたなァァァ」
「はァァァァい!」
 丹波が宴会所全体に響く様に大きな声で聞くと、銀時達も子供の様に大きな声で返事を返した。それに満足した様に丹波は頷くと、パンッと手を合わせた。それを見て全員マネして手を合わせる。
 丹波は、「せーの」とかけ声を駆けた。
「いただきまァァァァァァす!!」 


 10
 学校じゃ給食の時間はスターウォーズ


 いただきます。の号令がかかった途端、糸が切れたかの様に隊士達がカレーにがっついた。丹波はそれを嬉しそうに眺めながらカレーを口に運ぶ。
「うめぇぇぇぇ!!」
「姉さん神だァァァ!!」
「ありがとう」
 隊士達のほめ言葉に、丹波は少しだけ照れた様に頭を掻いた。
 銀時は黙ってカレーを口に運びながら、丹波の顔を見つめていた。黒い麻の着物の下には、白い素肌に巻かれたさらしがある。複雑だった。戦いはまだ丹波を縛り付けたままなのだ。あのさらしが解かれる事は無いのだろうか。
「どうした、銀時」
 丹波が銀時の視線を感じたのか、銀時の顔をのぞき込んだ。銀時は少しだけほほえむと、なんでもない。と一言だけ残し、カレーをまた口に運んだ。
「姉御ォォォ!おかわりアルゥゥゥ!!」
「丹波さん!俺もでさァ!!」
 まだ食べ始めてから五分も経っていないのにも関わらず、二人の化け物が声をあげて丹波に詰め寄った。驚かない奴がいないわけない。
 隊士達がその大きな声に驚き丹波の方を見ると、沖田と神楽が口の周りにご飯粒をつけ、黒いオーラを部屋に充満させながら啀み合っている。
「おいおい、神楽。学校の給食じゃねんだから」
「学校の給食なめんなァァァァ!」
 銀時が神楽の服の裾をツンツンと引っ張りながらなだめようとするが、沖田と神楽の両方にキレられて呆気なく撃沈した。
 銀時は神楽に逆ギレされてかなり凹んでいる。
「ほら、二人とも皿よこせ」
 それでも、丹波は嬉しそうな顔をして二人の皿にご飯を盛ると、鍋から熱々のカレーをかけた。啀み合っていた二人もその間は良い子に正座をして、子供の様な顔をして見つめていた。その場にいた全員が感じた。まだ二人は子供なのだ。
「はい」
 丹波が皿を二人に渡すと、二人はその場で目の色を変えてカレーにがっつきだした。その場にいた全員が二人の食欲を見て恐怖を感じただろう。俺たちのおかわりの分コレ、残るかな。 
「残るよ」
 丹波が、今全員の心を読んだかの様に答えを出した。全員がびっくりした様な顔をすると、丹波はそれを見てケラケラと笑いながら言った。
「顔に書いてあんだよ。大丈夫だ、厨房にあと鍋二つ分のカレーがあるからな」
 そう言われた瞬間、全員は恥ずかしそうに顔を伏せてカレーにがっつきだした。   「おかわりいいか?」
「喜んで」
 近藤が皿を差し出すと、丹波はニコッと笑って皿を受け取る。「やっぱいいなぁ」なんて近藤が思っていると、近藤は隣に座っている土方の皿をのぞき込んで重大なことに気が付いてしまった。
「トシ、マヨネーズはどうした?」
 土方の身体がビクッと反応したのがわかった。しかし、返答がない。近藤はしまったと思った。
「副長!!マヨネーズかけてないんスか!?」
「なにがあったんスか!熱でもあるんですか?」
 近藤が後悔したのも遅かった。隊士達は近藤の言葉に気が付き、土方を質問攻めにした。土方は不機嫌そうに、マヨネーズをかけていないカレーを黙ってほおばる。
 すると、神楽と沖田の5杯目のカレーをよそっていた丹波が聞いた。
「なんだ、土方マヨラーだったのか?」
 土方の動きが本当に止まった。ぴくりとも動かない。
 ここでマヨラーだとカミングアウトしたら、丹波は自分のことを嫌いになるかもしれない。
 昔の苦い記憶が脳裏によみがえる。
 愛など幻想だと思っていた。でも今は幻想だと思いたくない自分がいる。
 土方は、イチかバチかの賭に出た。丹波を、いや、桜を本気で信じてみようと、心の底から思ったのだ。
「…おう。」
 土方が低い声で腹をくくった様に返事をすると、丹波は嬉しそうな顔をして、いきなり懐に手を突っ込んだ。
 そして、じゃんっと得意げに何かをだした。
「たったらたったったァ〜。キュー○ーマヨネーズ」
「どこにいれてんだお前!!」
 銀時が思わず突っ込みを入れるが、丹波はニコニコしながら土方に言った。
「俺もマヨネーズ好きなんだよ。マヨラーって程じゃねーけど、マヨラーの気持ちはわかる。かなりわかる」  
 キラキラした目で丹波はマヨネーズを差し出す。
 土方はもちろん、その場にいた隊士達は驚きで開いた口がふさがらなかった。土方は初めて運命という物を感じた。心の底から何とも言えない感動があふれ出す。
 だからこそ、土方は差し出されたマヨネーズを突き返した。
「いらねェ」
「んぁ、いいのか?」
「おう」
 そうか。と丹波は笑顔で言うと、カレーが足りなくなった。と言って鍋を持つと厨房へ行ってしまった。
 土方が自分の皿に盛られたカレーをたいらげ、煙草に火をつける。ふと隊士達に目を向けると、その場にいた全員が目を丸くして土方の方を見ている。カレーを食べる手も止まっていた。
 ちらっと近藤や銀時の方を見てみるが、反応は同じだった。
「土方さん、どうしたんでさァ。マヨネーズが恋人なんじゃねェんですかィ」
 沖田が少し苛立った様に言葉を土方にぶつける。
「ああ、」
 確かに、真剣に考えてみればおかしい。
 土方は軽く流すと、煙を吐いた。
「あんた、俺の姉貴を忘れたワケじゃねぇだろうな」
「総悟!」
 近藤がなだめようとするが、沖田はの瞳孔は開いていた。
 かなり険悪なムード、喋る者は誰もいない。それなのにも関わらず、土方はゆっくりと煙草をふかした。

 沖田の気持ちは十分わかる。
 ミツバも、心の底から愛していた。
 それは嘘ではない。
 でもわかったのだ。
 自分は求めていたのだ。
 マヨネーズじゃない。
 自分の全てを受け止めてくれる。
 自分の愛も、全て、抱きしめてくれる。
 空を。

 心は決まった。
 深く息を吸い、土方は煙をはいた。
 長かった沈黙が終わる。
「こんな美味いモンに、マヨネーズなんかかけれるか」
 視線を少し落とし、穏やかな表情を浮かべて続ける。
「俺がほ…」
 次の瞬間に、土方の後ろの戸がスパーンと威勢のいい音を立てて開いた。
 土方はよほど驚いたのか、身体がさっきよりも大きく跳ねた。
「はーい、おまちどぉ。って、どうしたお前ら」
 丹波は顔を真っ赤にしてうつむく土方と、目を丸くした隊士達を見た。
「なんでもねェですぜ」
「えー、気になるなァ」
 丹波は大鍋を持って銀時の隣に座ると、大きな声で言った。
「ほらー早くおかわりしねェと、神楽と沖田がくっちまうぞ」
 隊士達はソレを聞くと、慌てて立ち上がり、丹波の側へ集まっていった。
 土方はその様子をずっと見つめる。
「俺の惚れた女の飯に、マヨネーズなんかかけれるかってか?」
「んあ!?」
 油断をしていた土方は顔を真っ赤にして声の主の方を睨む。近藤だ。
 近藤は、隊士達や万屋に囲まれて笑っている丹波を見つめながら言う。土方はふいと顔を背けて「そんなんじゃねぇ」と言い返す。
「お前、ライバルが多いぞ。みんなが丹波のことを好いてる。丹波も、みんなのことを好いてくれてる」
 近藤があまりにも真面目なことを言うので、土方は危うく煙草の灰を落とすところだった。流石と言えばいいのか、ほめて良いのかわからない。
「あいつ、姉さんって言うより母さんだな」
 近藤は嬉しそうに笑う。土方も、たしかにそうだと思いながら煙草を灰皿に押しつけた。   

そんなお前に、惚れちまったんだ。
俺ァ。