二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: ルーンファクトリー 異種族との架け橋   ( No.101 )
日時: 2008/11/05 21:43
名前: リュウ (ID: QxOw9.Zd)

深淵の闇の中に、タバサは一人で立っていた。前方に

人影が見える。

「…ラグナ様…?どうしてそんな悲しそうな顔を…?」

ラグナは問いには答えず、どんどん遠くに去っていく。

「ま、待って、ラグナ様!わ、私を置いて行かないで!」

強烈な不安感に駆られて後を追おうとするが、足が思

うように動かず、体も鉛のように重い。

「い、嫌…嫌ああぁぁーーー!!!」


タバサはガバッっと起き上がり、冷や汗をかきながら

周りを見回した。いつもの自分の寝室である。

(ゆ…夢…?な、なんて不吉な……。)

タバサの目には、うっすらと涙が光っていた。
           ・
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(やっぱり迷惑ですよね…こんな朝早くに…。)

分かってはいるものの、やはり不安だった。タバサは

ミスト牧場へと早足で向かっていた。

やがて、ラグナの家の前に着いた。時刻は七時半。

やっぱりやめておいた方が良かっただろうか、等と思

案に暮れていると、急に家のドアが開いた。

「さーて、今日も一日ガンバロー…って、タバサさ

ん、どうしたんですか?こんな朝早く…。」

ラグナを見た瞬間、タバサの理性はどこかに吹っ飛び、

いきなりラグナに飛びついた。

「わわっ!?ちょっ、タ、タバサさん?急にどうし…」

「私には…私にはあなたしかいないんです…お願いで

す…どこにも行かないで……。」

「タ、タバサさん…。とりあえず落ち着いて…。」


十分後、ラグナの家でホットミルクをもらい、ようや

くタバサは落ち着いた。

「ごめんなさい…こんなに朝早くに…。」

「いえ、いいんです。それよりどうしたんですか?タ

バサさんがあんなに取り乱すなんて…。」

「……私…怖い夢を見たんです…。ラグナ様が…どこか遠くに行ってしまう夢を…。」

「……」

「子供じみているとは思ったんですが…でもやっぱり…不安で…。」

「僕はどこにも行きませんよ。タバサさんとずっと一緒にいます。必ず。」

「ありがとうございます…。でも……。」

「…でも?」

「ラグナ様、記憶を失っていますよね?」

「はい…それが何か…?」

「もし記憶が戻って、あなたの帰るべき場所が見つか

った時、あなたがどこか遠くに行ってしまうんじゃな

いかって…時々…すごく不安になります…。」

不意に、タバサはラグナにぎゅっと抱きしめられるの

を感じた。ラグナの胸の中は、本当に温かい。

「僕にだって、タバサさんしかいませんよ。」

「!!!」

「僕はタバサさんとこうしていられて、本当に幸せで

す。僕を幸せにしてくれたタバサさんを、絶対に一人

で置いて行ったりなんかしません。約束します。」

どうして心配なんかしたのだろう?ラグナはこんなに

も自分を愛してくれているのに。

タバサはそっと、ラグナにキスをした。

「ラグナ様…ずっと…傍にいてくださいね…。」

ショートストーリー 〜完〜