二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: ルーンファクトリー 異種族との架け橋 ( No.119 )
- 日時: 2008/11/10 22:41
- 名前: リュウ (ID: QxOw9.Zd)
自分の情けなさと愚かさに、フィルは涙が出そうにな
るのをやっとの思いでこらえていた。自分がいつまで
も未練がましいのが悪いのに、アレクが自分の為を思
ってラグナにああ言ってくれたのに、自分はというと
その自分の事を思っていてくれた人に怒鳴ってしまっ
た。自分はなんてひどい人間なんだろう。そんな風に
考えながら、どこに行くでもなく歩いていた。
「…おい、アレク。」
「………」
「アレクったら!おい!」
「あ?あー…アンさん…。」
「どうしたんだい?さっきからボケーっとして。」
「す、すいません…。」
(放っといて下さい!アレクさんには関係ないんです!)
フィルの叫びが、まだ耳で反芻していた。こんなにも
人の事情に首を突っ込まなければ、フィルにも嫌われ
ずに済んだろうに…。どうしてこうなったんだろう?
いろんな考えを巡らせ、混乱し、未だアレクは虚無と
絶望と困惑の旅を終えていなかった。いや、多分当分
は終わることはないだろう……。
秋も終わりを迎え、カルディアに冬が訪れた。アレク
はアンに休日をもらい、海岸で海を見つめながら過ご
していた。いや、本当は海など見てはいなかった。ア
レクは脳裏に浮かぶフィルの笑顔を水平線上に映し出
して見つめていた。
「こんにちは、アレクさん。」
呼ばれて振り返ると、ゴドウィンが立っていた。
「ご一緒してよろしいですかな?」
「あ…はい…。」
しばらくの間、二人とも無言で海を見続けた。
「アレクさん、この前はすみませんでした…。」
「え…?何がですか?」
「うちの娘が、アレクさんに向かって怒鳴ってしまったそうですね…。」
「あ…いえ、そんな…。あれは僕が悪いんですし…。」
「いえ、アレクさんはフィルの事を思って、ラグナさ
んに話をしてくれたのでしょう?フィルもそれは分かっていますよ。」
「はあ…。」
「確かにラグナさんには大変お世話になりました。あ
の方がいなければ、フィルは今でも辛い思いをしてい
たかもしれません。フィルがラグナさんを慕っている
のも気づいていました。正直、私も内心応援していま
した、。ラグナさんなら、娘を任せても安心だと。」
「……」
「ラグナさんがタバサさんと付き合い始めて、フィル
は暗い世界に閉じこもってしまったようでした。私は
悩み果てました。今度ばかりは、ラグナさんでもどう
しようもありませんからね。」
確かに、とアレクは思った。ゴドウィンは続ける。
「でも、フィルはとても幸せ者です。アレクさんも、
こんなに真剣にフィルの事を考えてくれているのですから。」
アレクはゴドウィンの顔を見た。笑っている。
「僕に…何かできるでしょうか…?」
「できますとも。どうかフィルを、暗い世界から外に連れ出してあげて下さい。」
その言葉で決心はついた。もう一度フィルと向き合おうと。
しかしその時、ミストが駆けてくるのが見えた。
「た、大変!大変ですー!」
「どうかしましたか?ミストさん。」
「フィ、フィルさんが…。」
「フィルさんが…どうかしたんですか?」
ミストは息を整えると、二人に告げた。
「フィルさんが…ゼークス軍の兵士にさらわれたんです……。」