二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: ルーンファクトリー 異種族との架け橋 ( No.190 )
- 日時: 2008/12/19 00:18
- 名前: リュウ (ID: QxOw9.Zd)
「こ…これは一体…」
タバサは痛む肩を押さえながらラグナを見つめていた。
眼が輝いている。全身からあふれんばかりのエネルギ
ーが漂っている。
ドラゴンにもさっきの叫びが聞こえたらしい。こちら
の方を向き、ラグナを見つけると方向転換して襲いか
かって来た。ラグナは剣を構える。
次の瞬間、ラグナは人間業とは思えない跳躍力と瞬発
力でドラゴンに飛びかかり、斬りつけた。
鱗は貫けなかったが、それでも痛みは感じたらしく、
ドラゴンはラグナを振り払った。振り払われてもラグ
ナは空中で体勢を整え、ひらりと地面に着地した。
「う…こ、ここは…?」
「気がついたかの?レオン?」
「お…長…。俺は…そうだ、ドラゴンにやられて…うぐっ!」
「まだ動かん方がいい。肋がやられておるからの。」
「そ、そうだ!ドラゴンは今どこに!?」
里長は黙ってある方角を指差した。五十メートル程離
れた地点で、一人の人間がドラゴンと戦っている。
「あ、あいつ一人で!?無茶だろ!?」
「…あやつには、『剣聖』の力が宿っておる…。」
「…なんだよ、その『剣聖』って…」
「見ておればわかる…。」
ドラゴンが炎を吐く。ラグナはそれを避けようとはせ
ず、剣を構えて唱えた。
『神鏡・八咫鏡』
突如ラグナの前に巨大な鏡が現れ、ドラゴンの吐いた
炎を余さず跳ね返した。ドラゴンに目に見える外傷は
なかったが、それでもドラゴンの眼には動揺の色が伺えた。
「馬鹿な!?人間が魔導書もなしに魔法を使ったって言うのか!?」
「左様…通常であれば魔導書なしに人間が魔法を使う
事は不可能…。だが、剣の中には生み出された時から
魔力を宿している物もある。上級の剣士でもその魔力
を戦いにうまく活かすぐらいのことしかできん。じゃ
が、『剣聖』の素質を備えた者は、剣に隠された魔力
を最大限まで引き出すことができる。その魔力を引き
出す能力こそが、『剣聖』の力の真骨頂なのじゃ…。」
「あいつ…そんなにすごい奴だったのか…。」
レオンは戦っているラグナと、かつて村を守る為に命
を賭けて戦った父親とが重なるように感じられた。異
種族である人間の為に命を賭けて戦ったと父。そして
今度は人間が、異種族であるエルフの為に命を賭けて
戦っている…。
「…何か…今までの自分が馬鹿らしくなってきたな…。」
「うん?何か言ったか?」
「…いいや、やっぱなんでもない…。」
「あ、レオーン!無事だったのー!?」
ラグナの戦いを見続けるレオンの瞳の端に、ちらりとアリアナが映った。
「す…すごい…。」
タバサはラグナの戦いを間近で見ていた。ラグナはド
ラゴンの攻撃をかわし、剣を構えて唱える。
『轟雷・素戔嗚』
スパーク・バレットとはケタ違いの稲妻が走り、ドラ
ゴンの右翼に直撃した。ドラゴンの右翼はもげて吹き
飛んだ。ドラゴンは恐ろしい苦痛の叫びをあげ、手足
を滅茶苦茶に振り回した。タバサは戦場の近くにいた
ため、危うく巻き込まれかけたが、ラグナはタバサに
急いで近寄ってタバサを抱き上げ、安全な場所まで移動した。
「ラグナ様…。」
タバサは自分を抱えて跳びながら移動するラグナを見つめた。
「タバサさん…肩は大丈夫ですか…?」
声だけは、いつもの優しい声だった。タバサは少し安心した。
「はい、大丈夫です…。でも、この力は一体…?」
「…僕の心の中で、誰かが僕に言いました。自分が信
じる想いを念じろと…。僕はタバサさんとエルフの森
を守る…それだけを思い続けました…。」
「…ああ…ラグナ様…。」
「でも…僕の力だけでは足りません…。タバサさん…力を貸して下さい…。」