二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: ルーンファクトリー 異種族との架け橋 オリキャラ募集中! ( No.208 )
- 日時: 2008/12/25 00:30
- 名前: リュウ (ID: QxOw9.Zd)
ショートストーリー〜聖夜祭の夜〜
聖夜祭。お互いを想い合う者同士が共に過ごす夜。
タバサはもちろんラグナと聖夜祭を過ごす予定だった。
だが何故か聖夜祭の日、タバサはため息ばかりついていた。
「はあ…。」
朝からずっとこの調子なので、ビアンカは不審に思い声をかけた。
「ねえ、タバサ。」
「はい?なんでしょう、お嬢様?」
「何朝からため息ばっかついてんの?今日聖夜祭でしょ?」
「は、はい…。そうなのですが…。」
「ラグナと喧嘩でもしたの?」
「い、いえ。そういうわけじゃないんです…。ただ…。」
「…ただ?」
「ただ…ラグナ様、この頃あまり元気がなくて…。」
予想外の答えにビアンカは驚いた。元気がない?元気バカのラグナが?
「…どうして元気がないのよ?」
「分かりません…。エルフの森から帰ってきてからず
っとなんです…。一応元気そうに振舞ってはいらっし
ゃるのですが、どうも寂しそうな目をしてらっしゃる時が多くて…。」
「…せっかくだし、今日聞いてみればいいんじゃない?二人っきりだし。」
「…ですが、話して下さるでしょうか…ラグナ様のこ
とですから、私に心配をかけまいと話して下さないような気がして…。」
「…タバサは、ラグナの事好きでしょ?」
「え?…え、ええ…。」
「世界中のどんな男よりも?」
「…はい。」
「だったら大丈夫よ。タバサがそういう気持ちでいるなら。」
「…そうですね…。ありがとうございます、お嬢様…。」
そして時刻は七時。タバサはラグナの家のドアをノックした。 コンコン
「はーい。あ、タバサさん。待ってましたよ。」
「こんばんは、ラグナ様…。」
ラグナは笑顔で迎えてくれたが、やはりいつもの笑顔
とはちょっと違和感があるのだった。
「本当に誰かと聖夜祭が過ごせる日が来るなんて、思ってもみませんでした…。」
「あはは、そうですか。僕もここにきて1年目で誰か
と聖夜祭を過ごせるなんて思ってませんでしたよ。」
「まあ、ラグナ様ったら…。ふふふっ♪」
「あははははっ。」
普段祝日に一緒に過ごしている時の会話とあまり変わ
らないが、それでもタバサは嬉しかった。ラグナと一
緒に聖夜祭を過ごせることが、何よりも幸せだった。
しかしそうであるからこそ、これから聞かなければな
らない事を考えると憂鬱だった。
「あの…ラグナ様…。」
「え?なんですか?」
「…この頃、ラグナ様はあまり元気がないように感じられるのですが…。」
「え?…そ、そんなことないですよ。」
「…なにか悩みがあるのでしたら、どうして私に話して下さらないのですか?」
「な、悩みなんてないですって…。」
「…ラグナ様、目を合わせて下さい。」
「……」
「私に心配をかけたくないというお気持ちは嬉しいで
す。…でも私は、あなたが一人で辛そうにしている姿を見る事の方が辛いです…。」
「…僕は…なんて言うか…怖かったんです…。自分自身が…。」
「え?…それはどういう…?」
「…僕…ドラゴンを倒しましたよね?とてつもない力を使って…。」
「はい。おかげで、エルフの森は救われました…。それがどうか…」
「僕…記憶がなくなる前はどんな人間だったのかなっ
て…。もし…もし強すぎる力を持った化け物みたいな
人間だったらどうしようかって考えると、何だか…。」
そうか、それで悩んでいたのか。タバサはそう思った。
思えばラグナは一切記憶がないことへの辛さは見せな
かった。しかし辛くないわけではなく、辛さを表に出
すと自分が自分でなくなりそうなのが怖かったから…。
「でも、少なくともあの時ラグナ様は、エルフの森を
守る為にあの力を使いました。大切なのは力の大きさ
ではなくて、力を何のために使うかだと思いますよ。」
「確かにそうかもしれません…。でも、もし記憶が戻
った時に皆を傷つけるようなことがあったらと思うと…。」
タバサはラグナの手をとり、強く握った。
「タバサ…さん…?」
「過去のラグナ様がどんな人間であっても、今のラグ
ナ様の姿が、本当のラグナ様だと信じています。私は
優しくて、他人の為に一生懸命になれるラグナ様を心
の底から愛しています。…だから、そんな御顔をなさ
らないでください。そんな顔、ラグナ様らしくないですよ。」
「タバサさん…。」
ラグナの眼は少し涙で潤んでいた。タバサはラグナに
そっと寄り添い、ラグナはその肩を抱いた。
「ごめんなさい、タバサさん…。結局心配掛けさせちゃって…。」
「いいんですよ。私はずっと、ラグナ様の傍にいますから…。」
「僕…今の自分を大切にします…。」
「…ラグナ様…もう…一人で抱え込まないで下さい
ね…。あなたには、私がいるのですから…。」
「タバサさん…大好きですよ…。」
聖夜祭の二人だけの夜は、まだまだ続く…。
ショートストーリー〜聖夜祭の夜〜 完