二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: ルーンファクトリー 異種族との架け橋 第4幕連載中! ( No.258 )
日時: 2009/01/20 23:26
名前: リュウ (ID: QxOw9.Zd)

「はあ…何か…退屈ね…。」

別にいつものことではある。田舎の小さな町なのだか

ら。しかし今日は退屈さとは別に、寂しさもあった。

「…いなくなってみると寂しいものね…。タバサ…。」

ビアンカにとって、タバサは唯一の友達だった。性格

の難しさゆえに友達がなかなかできなかったビアンカ

にとっての、唯一の話し相手であった。そのタバサは

もういない。ラグナと幸せに暮らすため、この家から
出て行った。

ビアンカは複雑な気持ちでいっぱいだった。タバサ以

外の最初の友達とも言うべき存在であり、初恋の相手

でもあるラグナがタバサと一緒になるのだからそれも

当然と言えば当然だが。そしてビアンカの心をさらに

複雑にする人間がもう一人…。

「お嬢様?どうかなされたのですか?」

言われてビアンカが振り返ると、そこにはスズが穏や

かに微笑みながら立っていた。

「…別に。退屈なだけよ。」

このスズと言う人間の笑顔は、どうもラグナと感じが

似ているような気がしていた。人を思いやり、人の幸

せを心から喜ぶ優しい笑顔であった。

「そうですか…。…キャンディでもいかがですか?」

言われてスズの手元を見ると、どこから取り出したの

か、丸い棒付きのキャンディ(まあ現実で言うチュッ

パチャプス)を差し出していた。ビアンカは子供扱い

されているような気がした。

「……バカにしてるの?」

「レモン味の方がよろしかったですか?」

どこからかひょいと同じような黄色いキャンディを出した。

「…そのキャンディ、どこから…?」

「まだまだありますよ。ほら」

そういうとまたもキャンディを出す。

「ほらここにも。こっちにも。そしてここにも。」

そうやってスズが言うたびにキャンディの数が増えて

いく。手の動きが速くてどこから取り出しているのか

分からない。そもそもどこにこれだけのキャンディを

隠していたというのか。次から次へとキャンディを出

すスズを見ているうちに、ビアンカはなんだかおかしくなってきた。

「…ぷっ…ふふっ…あ、あははははは!あははははは!」

こんなに笑ったのは何ヶ月ぶりだろうか。いや、もし

かしたら何年ぶりかもしれない。こんな気持ちになっ

たことは今までになかった。

しばらくして笑いが収まると、ビアンカはスズに言った。

「面白いわね、あなた。」

「ご満足いただけましたか?」

「まあ、合格点ってところね。でも、そんなに食べきれないから、一本だけもらっておくわ。」

そう言って両手いっぱいのキャンディの中から一つ選

んで口に含み、入口のドア目指して歩き始めた。

「ビアンカお嬢様、どちらに?」

「散歩よ。」

手短に応えて外に出た。歩きながら心でつぶやく。

(タバサ…見つけたよ…友達になれる人…。)