二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: ルーンファクトリー 異種族との架け橋   ( No.98 )
日時: 2008/11/04 20:31
名前: リュウ (ID: QxOw9.Zd)

昼下がりの公園のベンチで、一人で座っていた。今、

あの人はどこにいるだろう?きっと遺跡の湖だろう。

祝日はいつもあそこでタバサさんと二人で過ごしている。

胸が締め付けられる。悲しみと喪失感に襲われる。ど

うしてこんなに苦しいのだろう?

あの人が、私の病気を治してくれなかったら、もしか

したらこんな思いをせずに済んだかもしれない。でも

結局は別なことで苦しむだろう。何度忘れようとした

だろうか。でも忘れられない。あの人は悪夢のような

あの苦しみから、私を解放してくれたのだから……。


同じ頃、アレクは宿屋の仕事にひと段落つけ、遺跡の

湖に向かっていた。

(でも何で遺跡の湖なんだろうなぁ・・・)

そんな事を考えているうちに、すでに目的地に到着し

ていた。人声がする。アレクは近くの茂みに隠れ、そ

っと声のする方へと移動した。 

アレクが隠れている場所から十数メートル離れた場所

の蓮の葉の上で、座っている二つの人影があった。

(あれは…タバサさんと…ラグナさん!?)

間違いない。蓮の葉の上で二人とも楽しそうにおしゃ

べりしていた。さらによく見てみると、ラグナの指に

もタバサと同じような指輪が、左手薬指にはまっていた。

(それじゃあタバサさんの婚約相手って、ラグナさんだったのか…。)

それはまるで、愛と平和の群像そのものだった。肩を

寄せ合い、楽しそうに話す姿は、本当に幸せそうだっ

た。リュードでなくても詩が書けそうだ。

(邪魔しちゃ悪いし、ここらで退散するかな…。)

そう思ってこっそりその場を離れようとしたアレクだ

ったが、岩に生えていた苔で足を滑らせ…

ザッブーーン!!!

「え?ア、アレクさん!?」

「た、大変!ラグナ様、すぐに助けに行かないと…。」

「た、助け…ぼ、僕…あんまり泳げな…ブクブク…。」
           ・
           ・
           ・
「本当にごめんなさい…お二人の時間を邪魔しちゃって…。ハ、ハックション!」

「お気になさらないでください。体を冷やすと風邪引きますよ、アレク様。」

結局二人に救助してもらい、ラグナの家で火を焚いて

もらっていた。なんとも情けない状態である。

「でも、どうしてあんな所にいたんですか?」

「うっ……それはその…仕事の合間に遺跡の辺りも探検してみようかと…。」

「気をつけて下さいね。あの辺りは夜露や苔で滑りやすいので。」

「は、はい…。しかしそれにしても、本当に仲がよろしいんですね。」

言われて二人とも少し顔を赤らめた。

「い、いえ、そんな…。」

「お互い仕事があるので、ゆっくり会えるのは祝日だけなんですけど…。」

「それでも二人ともすごく幸せそうにしてましたよ?」

「あ、あははは…。」

「な、なんかちょっと恥ずかしいですね…アレク様に

そんな風に言われると…。」

だいぶ体も温まってきた。風邪をひく心配はなさそうだ。

ついでだから気になってたことも聞いてみよう。

「ラグナさんって、実はお金持ちだったりします?」

「え?どうしてですか?」

「だってその指輪、プラチナ製でしょ?相当高いと思いますけど…。」

「あ、これ、僕が作ったんです。」

………え?作った?プラチナで?そんな馬鹿な。

「で、でも…プラチナを加工するには達人級の技術がいると…。」

「そうですよ。聞いてませんか?ラグナ様って基本的

になんでもできる人なんです。これをもらった時手作

りだと聞いて、さすがにびっくりしましたけど、ラグ

ナ様の想いのこもった贈り物だったので、本当に嬉しかったです。」

そう言って笑うタバサの顔は、人生最高の時を味わっ

ているような顔だった。いや実際そうなのだろうが。


ラグナとタバサに厚く礼を述べ、アレクは宿屋に引き

返した。しかしそれにしても、ラグナは一体何者なの

だろう。プラチナで指輪を作るなんて並大抵の技量で

はない。しかし考えた所で、結論は出てこなかった。

あれ?そういえばフィルさんのことについて何か分か

るはずじゃなかったのか?まあいいや。今夜アンさん

に詳しく聞いてみることにしよう…。