二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: モンスターハンター・バロル  48話更新 ( No.111 )
日時: 2010/07/25 17:27
名前: アビス (ID: 4K4kypxE)

49話
   悪魔の鏡花水月





「それじゃ、気を付けて行って来い」

里に帰った皆は一晩ぐっすり休んで、早朝、出かけることにした。
長老はそんな4人を笑顔で見送る。

「本当は私も一緒に皆様がたと討伐に行きたいのですが・・・・」

クルトが悔しそうに言う。もう、何度目かの言葉だ。
クルト自身も行く気満々だったのだが、長老に止められた。

「まだ言うかクルト!!!装具を持たんお前がいても足手まといが良い所じゃ!!」

このやり取りももう何度目か。クルトは諦めきれない表情を続ける。

「まあクルト。俺たちは倒したらまたここに戻ってくるから。
その時のために、宴の準備でもしといてくれ」

ソニックの言葉にクルトは観念したように息を吐く。

「分かりました。戻ってきたら、びっくりするぐらい会場を用意しときます」

「そりゃあ、楽しみだな。・・・じゃあ、いくか!」

ソニックは手に持つ緑の玉を落とす。これは『追尾式戻り玉』。
一度会ったことのある標的の元に戻してくれる、今回のためだけに特別に用意された戻り玉だ。

「お世話になりました」
「クルト。宴、楽しみにしてるぜ」
「それでは、また」

—————?????—————

そこ依然と同じように闇に覆われていた。だが、今回は完全な闇。一寸先も闇だ。

「ミルナ!!サラ!!スターク!!」

皆に呼び掛けるが返事はない。明りを見渡すと一点だけ明るい所がある。
そこに向かって走り出すソニック。

行きつくとそこは以前にも見たことのある風景だった。
場所は鳥竜種との戦いの場。辺りも混戦が続いている。

(なんだ?・・・夢か?)

その状況に理解しきれないソニック。だが、それとは裏腹に体が勝手に動き出す。

(俺の体が勝手に動いて・・・!!何なんだ一体?)

口を開こうとしても全く動かない。まるで他人の視線に潜り込んだかのようだった。
でも、実際にこの体はソニック以外の誰のものでもないソニックの体だ。

ソニックはずんずんと歩くと、目の前のドスランボスに切りかかる。

—ブシャァ!!—

豪快な血飛沫がソニックにかかる。ソニックはその匂いに不快を感じるが、
ソニックの体はそれに快感を感じて震える。

その後もソニックの体はソニックに背きながら動き続け、狩りまくる。
向かってくる鳥竜種を、はたまた逃げる鳥竜種を楽しそうに追いかけて・・・。

ソニックの体はすでに血で赤く染まっていて、まるで赤い装束をまとった死神みたいだった。
ソニックはすでに利かない自分の体を諦めて、この状況をもっとも近い距離から観戦している。
全てを狩り終えたソニック。勇敢に戦ったソニックに仲間たちが駆け寄ってくる。

だが、ソニックは近寄って来る仲間に剣をかざす。

(まさか・・・!!おい止めろ!!!そいつらはモンスターじゃない!!!!)

ソニックが何をしようとしたかを分かったソニックは必死に止めようとするが、
体は同じく、自分の意思では全く動かせない。

「な・・!!ソニック!!何するんだお前!!!??俺はモンスターじゃ・・・・」

仲間もソニックのやることに気がついたのか、後退ちながらいう。
ソニックはそれを不敵な笑みを浮かべると、大剣を仲間に向けて振り下ろす。

(やめろーーーーーーーー!!!!!)
「やめろーーーーーーーー!!!!!」

——————————

数十分後、立っているのはソニックだけだった。辺りには人とモンスターの肉片と化した残骸が、
ゴミのように散らばっている。

(もう・・やめてくれ・・・もう・・・・)

ソニックの精神は完全に壊れてしまっていた。やりたくもないことをやらされ、仲間の体を
切り裂く感触を染み込まされ、得たくもない人殺しによる快感を無理やり味わされた。

極めつけはミルナだった。寄ってくるミルナにソニックは、極上のメインディッシュが
出てきたように舌鼓をすると、一気にミルナの体を切り刻んだ。

それでもまだ満足しきれていないソニックは獲物を求めきょろきょろする。
だが獲物がいない事を確認すると、頭だけ残しておいたミルナの頭を自分の頭付近まで持っていかせる。

そして、また舌鼓をするとそれを一気に口に運んで入った。その感触がソニックに伝わってくる。

—バリバリ!!グチャグチュ!!—

ソニックはそこで完全に精神が崩壊した。

——————————

「ソニック!!どうしたの、ソニック!!??」

ミルナがソニックを抱きかかえ呼び掛ける。だが、

「もう、止してくれ・・・・。もう、いやだ・・・・」

ずっと同じ言葉を繰り返している。その声も段々と弱くなっていき、今では呻き声も出ていない。

「ソニック!!!・・・・どうしよう、ソニックが」

「ちっ!!こっちに着いた瞬間に精神攻撃かよ。しかも依然と比べられないほどの・・・・。
どうなってんだ・・・。この指輪の力がソニックには働いてねえのか?」

スタークは武器を構えながら言う。ソニックはしっかりと自分の指輪を付けている。
ミルナは何か覚悟をした顔をすると、おもむろに指輪を外し始めた。

「・・・!!ミルナさん、だめです。いまここで指輪を外したら、ガルドロスの力に飲み込まれてしまいます」

サラが叫ぶがミルナは指輪を外す動作を止めない。

「一個じゃソニックは戻ってこれないのかも。だったら、二つ付ければ・・・」

ミルナの手から完全に指輪が外された。するとガルドロスの力が一気にミルナに流れ込んでくる。
ミルナは苦しげな表情で耐えながらも、ソニックに自分の指輪をはめる。

「・・・お願い。そんな幻なんかに負けないで」

ソニックの手を握りしめ、祈るようにかがむ。

——————————

(・・・・・・・・・)

あれから数日、ソニックは残虐の限りを尽くしていた。村を襲い、人を殺め、狂喜する。
すでに精神が崩壊しているソニックには、その感触も感情も何ともなかった。

それでも、ソニックは人を殺め続ける。自己の満足のためだけに。
もう視る以外の機能が全て停止していたソニックだが、目の前に現れた人を見て、僅かに反応した。

(・・・ミルナ?)

目の前に立っていた人物は自分が殺してしまったはずのミルナ本人であった。

「ソニック。迎えに来たよ」