二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: モンスターハンター・バロル ( No.4 )
日時: 2010/01/10 14:54
名前: アビス (ID: 7.60N42J)

35話
   奏で者・クルト





「こんにちは、旅の皆さん」

男は静かな物腰で言った。

「私の名前はディー・クルト。見ての通りハンターをやっています」

と、クルトは自己紹介をしたがハンターには見えない。
防具はしていなくて、ただの服を着ているだけ。
ソニックと同じタイプの物かもしれないが、肝心の武器は見当たらなかった。

「あの、今どうやってイャンクックを?」

サラが尋ねると、クルトはすっと右手を差し出した。
その手には細長い棒に幾つもの穴が開いた物が握られていた。

「これは魔笛(まてき)と呼ばれる、狩猟笛を改良して、
縮小し、『音』を操ることができるようになった武器です」

「音を操る?」

「はい。今竜人族では形なきものを操る武器の開発に成功しています。
まだまだ量産できない品物で見るのは初めてだと思いますけど」

「そんな大層な武器をなんであんたが持ってんだ?」

ソニックは少し突っかかる言い方でいう。それでもクルトは穏やかな口調で

「私は竜人族の里出身ですから、故郷を出るときに頂いたのです」

「竜人族の里出身って、あんた竜人族じゃあ・・ないよな?」

ソニックはクルトを見るが、竜人族には見えない。

「里の出身というだけで、私はれっきとした人間ですよ。
私は捨てられていたところを竜人族の人に拾ってもらったんですよ。
私を育ててくれた人、里。だからそこが私の生まれ故郷です」

そう言うと、クルトは武器をしまい体の向きを変えた。

「それでは、私はこれで失礼します。縁があればまた」

クルトはどこかに行ってしまった後、ミルナがはっとした顔で

「私たち、名乗るの忘れちゃった」

と、つぶやいた。


〜目的の村〜

「あなたたちですか、依頼を請けてくださった方々は?」

村の村長らしき人物が出迎えてくれた。

「はい。それでさっそくですが、ウィルテリアスについて教えてくれませんか」

ミルナがさっそく本題に入る。

「はい。ウィルテリアスはこの近くにある砂漠に居座っています。
討伐に向かったこの村屈強のハンターもやられてしまって。
もうわしらにはどうすることも出来んのです」

「そのウィルテリアスっていうのはそんなに強いのか?」

ソニックがそう言うと、村長は首を横に振った。

「正直なところわかりません。討伐に行ったハンターも調査に行った者も
誰一人帰ってきていないのです」

「誰一人って・・・」

サラが言葉を震わす。

「わかった。そんじゃあその砂漠までの道のりを教えてくれないか」

「ここから、乗り物で2時間のところです。乗り手の者はすでに呼んでいます。
こちらへどうぞ」

村長に案内された先には、一人の男が立っていた。

「おや?」

男はことらに気がつくと駆け寄ってきた。

「これはこれは、何時ぞやの人たちではありませんか」

「クルトさん!?」

ミルナはクルトの登場に驚いたが、ソニックは別な事に驚いていた。
それは乗り物についてだが、普通人を運ぶのはアプケロスなどの
草食種なのだが、彼の乗り物はなんと伝説の幻獣、キリンだった。

まさに、馬車だ・・・。
ソニックがキリンを見ているとキリンがこっちを向いた。

『なんだ人間。そんなに私が珍しいか?』

語りかけてきた。そても澄んだ声だった。

「ったりめーだろ。古龍が人間に飼いならされているなんて話。
聞いて事もないぞ」

ソニックの言葉にキリンは少し驚いた様子で

『驚いたな。人間なのに私の声が聞こえるなんて主だけだと思ったが』

「え?」

ソニックが振り返る。クルトはこちらを見てにっこりと笑った。

「それでは村長。行ってまいります」

クルトは軽く頭を下げた。


—道中—

「お前、モンスターの言葉がわかるって本当か?」

キリンにひかれ揺れる馬車の屋根の上にいたソニックが声をかけた。

「・・・いったい誰がどのようなことを?」

『私だ、主』

走るキリンがいう。

「あなたですか、ソルト。ということは、あなたも声が聞こえるのですね」

「まあな。自己紹介がまだだったな。俺はソニック」

「私はミルナです」

「サラって言います」

ソニックに続いてミルナとサラもいう。

「あらためてよろしくお願いしますね、皆さん」


しばらくすると、辺りの景色が変わり拠点が見えてきた。

「見えてきましたよ、皆さん。あれが目的地ですよ」

「どれどれ・・・」

ソニックが体を起こして砂漠のほうを見る。すると突然血相を変えて

「止まれ!!クルト!!!」

ソニックの突然の声にクルトは綱を引っ張りソルトを急停止させた。

「もう・・なんなの、ソニック!?」

ミルナが頭をおさえながら顔を出す。どうやら今の急ブレーキでぶつかったらしい。
ソニックはあたりを見渡し、もう一度砂漠のほうをみる。

「なんかが舞ってる」

そうつぶやいた。ミルナも辺りを見るがなにも見えない。
見えるとしたら砂漠のほうから舞っている、小さな砂だけだ。

「砂ぐらいしか舞ってないけど」

『いや、確かに砂以外の何かが紛れている。これは・・菌?』

ソルトが鼻を嗅ぎながらいう。

『これは、モンスターが持つ菌の一種だ。この程度の量なら平気だが
大量に吸い込めば危険だ。だが、一体なぜこんなにも増殖を』

ソルトはもう砂漠のほうを見る。

『砂漠の方から飛んできている』

「ウィルテリアスが菌を飛散させているという事ですかね。
皆さん、これを」

そう行ってクルトはみんなにマスクを渡した。

「防菌性のあるマスクです。これである程度は大丈夫だと思いますよ」

「ウィルテリアスが菌を飛ばしているのは本当なのか?」

ソニックがマスクを付けながら言う。

「ソルトはそういう危険なことには鼻がよく効きます。信じていいですよ」

クルトはそう言いながら、目的の拠点にソルトを走らせた。