二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 真選組★波乱日記★ ( No.396 )
日時: 2010/08/11 21:25
名前: 月芽麻 (ID: H5up09UV)

第九十三訓【逃げろって言われても何処ににげんだよ!!!】

月下祭を、あと三十分後に控えた神殿に一人の月の民が駆け込んだ。

「妃様ぁ!!ぞ、賊がこちらにやって来ました!!」

神聖なる静かな祭殿に、月の民の声が響いた。

「…賊?どう言う事でしょう…。兎に角、皆のモノ一旦引き上げま——。」

妃様の掛け声がとおらないうちに、妃様は声を出すのを止めた。

「何何?どっか逃げるんですか?」

「…そりゃぁ、身の危険を感じたら逃げるのが普通でしょう…?」

にこやかに笑う男と、物静かな男。

そんな二人が妃様の前に現れた。

「ひ、妃様!!お逃げくだ——。」

一人の民がそお言おうとした瞬間、にこやかに笑う男が剣を振りおろした。

そして、そのまわりに赤色の華が散った。

「へぇ、あんたが妃様?って事は、43代目のかぐや姫ってわけ?」

「…そうじゃが…。貴様らは何者じゃ?此処は、月の民の者しか入れぬはずだが?」

落ち着いた口調で、妃様は物を言う。

「…月の民? あぁ、門番の事?それだったら、門の前で赤い華咲かしてますよ?」

不気味に、物静かな男が笑う。

「いったい何が目的じゃ…? 民の命を弄びよって。」

「目的? そんなの決まってんじゃん。かぐや姫を出しなよ?」

剣の切っ先を、妃様に向けて言う——美涼。

「何故、そちらがそ奴を探しておる? 月の民は、いくらでも居るじゃろうて。」

「…其処らの月の民じゃいけないんだ。…選ばれし者しか興味ないからね。」

そう言う、もう一人の男——美﨑。

「それなら、地上で願いでもこうてればいいじゃろ?」

「それじゃぁ、意味がねえんだよ!」

そう言って、剣を持ち切りかかる美涼。

「我は、貴様らに言うはずがないだろうて。かぐや姫の場所何ぞ。」

強く睨みつける妃様。

「…だよね。…美涼、もう良いよ。」

「ちっ、分かったよ。」

妃様に向けていた、剣が下される。

「…諦めたのか? …其れが良いはずじゃ…。」

「…誰が諦めるといいましたか? 妃様…?」

「えっ———!?」

急に体が言う事を聞かなくなり、妃様は一瞬とまどった。

「きっ、貴様…もしや、呪術師…。」

「…気づくの遅すぎ。さっさと、言ってくれれば良いのに。」

「そうだぞ。…この二人のどちらかが、かぐや姫であるってのは分かってらぁ。」

そう言って、二人の少女が写った写真を妃様に見せる美涼。

「さっさと言ってくれる…? 僕もこんな仕事しんどいからやりたくないんだけど?」

「って、事だ。どっちが、かぐや姫だ?…答えなかったら、二人とも殺る。」

鋭い目つきで、美涼は言う。

「言ったとしても、どちらかは殺すのだろう?」

顔色を悪くし妃様は言う。

「さぁ。其れは、隊長の優しさによるんじゃないの?」

「くっ…。」

苦虫を噛んだように妃様は顔を曇らせる。

「さっさと、言って…? しんどいんだから。」

そう言って、呪術を強める美﨑。

「くはっ…。ごめん…撫——。」

その時一瞬、妃様の脳裏に何かよぎった。

——ここで、美紅を言えば…撫子は助かるのでは…?

それなら、月下祭は行える…!!

「美紅じゃ…黒髪の。」

「ふーん。分かった、じゃぁもう良いよ…死んでも。」

美涼は、何を楽しんでいるのか笑っていた。

「…其れじゃ、お休みなさい。何時かの御姫様。」

——赤い華が咲いた。

其れは、美涼と美﨑を赤く彩った。

「麗…? 美紅…黒髪の方が当たり。」

「麗ぃ。腹減った、後で何か食わせてぇ。」

二人が話しかけているのは、小さな通信機。

「二人とも良くやったな。…後は任しておけ。飯は、後で作ってやる。」

ブチッ。

そんな、情けない音をだして通信は途絶えた。

「行こ…美涼。」

「あぁ…あの人、本当に死んだの?」

「…力が弱くなってきてるから…分からないよ。」

「そっか…あァァ!!腹減ったぁあ!!」

急に、大声をさす美涼。

「僕もだよ…。さっ、帰ろう…。」

紅月が昇るまで後—— 二十分。