二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 真選組★波乱日記★ ( No.473 )
日時: 2010/08/22 17:20
名前: 月芽麻 (ID: H5up09UV)

第九十八訓【そう言えばもうすぐ百訓】

美紅はどこに行ったのだろうか…?

「後、十分なのに…。」

撫子は、祭殿近くにある広場で時計を眺めつぶやいた。

「遅刻…なんだけどな。」

ふぅ、と小さくため息をした空を見上げる。

月の都と言っても、周りには星が昇っているため明るい。

そんな中、撫子に近づく影があった。

「…?美紅?」

近ずく足音に反応し、撫子は振り返る。

しかしそこにいたのは、優しく笑っている男の人だった。

「初めまして。…四十四代目カグヤ姫様。」

その男は、撫子に右手を出し会釈した。

「…貴方は…?月の民じゃ…ない?」

「はい、貴方のお力を求めてここまで来ました。」

「…賊か?…地上で待つ気は無かったのか?コレだから地上人は。」

撫子は、賊だと思ったがあまり行動には移さなかった。

「せっかちなのは、地球の人の特徴です。さて、本題にはいらさせてもらいます。」

クスリと笑うと男——初恋は、真面目な顔になった。

「私たちは、地球を救うためにこの地に来た様なものです。ですから、貴方の力をお貸しください。」

「…何を言う?その言葉に信用性はないだろう?」

呆れた口で、撫子は言う。

「信用性が無いのなら、今から信じて行けばいいです。」

「其れが簡単に言えるものであるのならばな。」

「…かぐや姫が月に降りるときの光の道は生贄だそうですね。」

「なっ?何故それを…?」

「その、生贄が死んだ時。儀式はそのまま行われるがカグヤ姫は帰れない…地上に居続ける事になる…。」

そう言うと、初恋は口を紡ぎこんな事を言った。

——貴方は、その数奇で悲しい運命をどう過ごしたいですか?

はじめその言葉を聞いた時、よく意味が分からなかったがよく考えるとその言葉の意味は生贄が死んだ事をさす。

「き、貴様は生贄を殺したと言うのか?」

「…いえ、殺したと言いますか此処での存在が死んだというのが正しいでしょう。」

「存在…?」

「…はい、黒髪の良い子だったそうです。美紅っと言いましたっけ?」

「み、美紅じゃと!?」

急に血相を変え撫子は立ち上がる。

「美紅は生贄じゃないっと言って——。」

「生贄でしたよ、彼女は…。ですが、彼女の事を貴方はとても大切にしていましたので地上に逃がしました。」

「そ、そうか。」

安堵をため息を漏らす撫子。

「ですから、その子を探す為に地球へ行きませんか…?」

「…何を言っている…?」

「私たちの願いを聞くのは後でも良いです。美紅って言う子も探すのを手伝っても良いです。ですから、地上へ行きませんか…?」

差し出されたその手は、少し震えてはいたが暖かそうな手であった。

「賊には手を貸したくないが…美紅ともう一度会うのはその手しかないみたい…だな。」

撫子は、そう言って初恋の手をとった。

——美紅にもう一度会うために。

同時刻。紅月が満ちるまで後—— 十分。