二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 銀魂「市女笠篇」【勘違い?から復活。】 ( No.16 )
- 日時: 2010/01/17 15:44
- 名前: コナ ◆Oamxnad08k (ID: aCz35Q0v)
軍議も終り、可乃は廊下を歩いていた。
(上手くいくのかしら…)
作戦は頭に入ったが、果たして上手くいくのだろうか。
そう可乃は不安な気持ちを抱えたまま、食事を乗せたお盆を持って歩き続ける。
廊下の窓を一瞥すると、海と空は天人の船で賑わっている。
(本当に平和な海ね…、何も知らない癖に)
透き通った黒いタレ目に、水平線と空が溶け合う青さと大きな黒い塊が行き交う風景から見慣れた壁に戻る。
しなやかで絹のような後ろに結わえた黒髪を揺らしながら辿り着いたのは、『折檻室』と書かれた部屋だった。
ドアノブに雪肌の手を掛けた。
そこは、幾つかのドアがあり、その向こう側から時々呻く声が聞こえる。
この部屋は、間者や隊律を犯した者に文字通り折檻する。場所で、可乃があまり好かない場所でもあった。
投獄され痩せ細った傷だらけの父を思い出してしまうからである。
ではなぜ可乃はここに来たのであろう。
第六訓「公式設定のツンデレより設定されていないツンデレの方が好かれる」
「八重…気分はどう?」
手首を紐で固く縛られた、八重が簡素な椅子に座っていた。
「気分はって、おかのはどうなのよ…戦友を人質にとって、さらにこんな部屋に入れてるんだもん」
八重に皮肉を言われ睨まれている可乃だが、何も答えず。薄暗く狭い部屋に入った。
「可乃…もうやめようよ、こんな事したって何も変わらない…仲間が生き返るわけじゃないのよ」
「……」
「アナタのお父さんだって復讐を望んでいなかったでしょ?」
可乃の脳裏に檻越しで話す父が過る。だがそれでも返答せず、お盆を床に置いた瞬間、八重の頬に平手打ちを喰らわせた。
「うるさい!! アンタに何が分かる!? この痛みが怒りが!! なぜ憎まない? どうして、それを拒むの!?」
怒りの可乃にしては珍しく大声を出し、八重に怒りをぶつける。
八重もあの惨激を見たはずだ、怨恨の気持ちも湧いたはずだ。
なのに八重がなぜ復讐を望まない。可乃はそれが理解できなかった。
「私も…憎んだよ、けど死んだ仲間の分も生きようと誓ったんだ」
八重の朗らかで素朴な顔に悲しみが宿った。頬は、可乃の手のあとがくっきりと赤く腫れている。
「……本当は、アンタと一緒にいたくないけど総督命令で、食べ終わるまでここにいるわ」
そう可乃は不機嫌な表情を浮かべ、八重の手首に巻いていた縄をほどく。
「そうなんだ、じゃあいただきます」
八重は手を合わせ、盆に乗せられた食事に手を付けた。
(父上の約束か…どうして八重が知っているのかしら)
そう思ったが、本当に美味しそうに食べる八重の横顔を一瞥すると。
それがどうでもよくなり、先程の怒りも悲しみも癒えたような気がした。
「おかの、ここの卵焼き美味しい」
「…そう」
「ヘンテコに教えてあげようかな?」
「八重…アナタの立場分かってる?」
「え? あぁ人質でしょ…大丈夫ヘンテコが助けを呼ぶと信じているから」
八重は満面な笑みで言う。
「あっそ」
そう八重とのやり取りをしているうち、一人の隊士が可乃を呼んだ。
「可乃さーん! そろそろ出撃に行く時間ですぜー! 昨日入った人質も連れてこいってさー!」
「分かった! じゃあ八重、舌づつみはここまでよ」
可乃はまだ食べている途中の八重に言い、手首を縄で縛ろうとした。