二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 銀魂「市女笠篇」 立て直し ( No.2 )
日時: 2010/01/13 16:52
名前: コナ (ID: QDm7ZT.A)

「えーと…あの頃どこかでお会いしましたっけ?」
肩を落としうつむいて座る女性に、銀時は問う。

女性は内巻きの黒髪ボブに薄柿色の着物。顔も体型も恐らく歩んでいる人生も十人並みな女性がなぜ、白夜叉の名を知っているのだろう。
戦場では、仲間の増減が激しいので全ての顔を把握するのは難しい。

「まさか銀さん戦時中…女中さんをいじめていたんじゃないんですか?」
「え?」
「きっとそうネ! その被害者の一人がこの人ネ。まさか、銀ちゃん手ぇ出したアルか」
「何言ってんだお前ら!! 俺そんなイメージなの?! つーか神楽どこで覚えたその言葉!!」
「昼ドラ”父上はニュースキャスター”でやってたアル」
「オイ。俺が大勢の女中さん口説いて、家族が増えたとでも言いたいのか…?」

「あ、あのー」
「早よぉ進めてください、いつまでクダクダやってるん?」
女性の小さな声に交じり今まで無かった甲高い声が、言い合う三人を停止させ、振り向く。

「えーっと…そのぬいぐるみが喋ったの?」
「まさか」
「そうアル。きっと、この人が喋ったネ」
女性の肩に乗る兎耳を持ち、ハムスターのようなふくろうのようなぬいぐるみが喋るわけ無い。
女性のいたずらだと三人はそう思っていたが、ぬいぐるみが口が開いて同じ声で言った。

「失礼な、僕はぬいぐるみやない、紹介遅れたなぁ。
 僕はヘンテコ、コイツが僕の飼い主、桜木八重や」
ヘンテコはお辞儀をするように体を傾ける。
「い、いやー…これはどうも」
銀時は恐縮し、思わず会釈する。
新八神楽はというと、驚きのあまりぽかーんと口を開けている。

「一言、言わせてもらう。君らのおかげで本題に反れてしもうた」
「あ、スミマセン…」
新八はとりあえず謝った。

「さて、本題に参りましょう。坂田さんアナタは…『女郎士隊』をご存知ですか?」


第一訓「間違った道を通った人を救おうとするのは友だけ」

「ああ、確か女だけで結成した武装隊だろ」
女郎士隊とは、文字通り隊は女性だけで構成され、戦地の女中を始め、日本各地から集まった女性達が武装し後期攘夷戦争で戦った部隊だ。
勿論、戦後ほとんどの隊士達は粛清され解散となった。

「私もその一人だったのです。」
「凄いアル! 八重姉!!」
神楽は尊敬のまなざしで八重を見ていた。
「で、なんで来たんだ?まさか攘夷活動の勧誘か?」
銀時は怪訝な表情で八重に問う。
伝説とはいえ白夜叉の力は、攘夷志士にとって喉が出るほど欲しいはずだ。

「八重は、もう人を斬るのは懲り懲りやと言ってたんや! そんな人間が騒ぎを起こすかい!?」
「落ち着いて、ヘンテコさん!!」
新八は怒りで身を乗り出してきた、ヘンテコを宥めようと耳を掴む。
「痛い、痛いから耳つかむのやめろ!」

「違います。今巷で『市女笠』と呼ばれる人斬りが横行しているのをご存じで?」
「いちめがさ?」
ニュースに疎い銀時と神楽は、声を揃え首を傾げる。

「ここ数日市女笠を被り、二本の刀で幕吏や真選組隊士を連日殺害したあの『市女笠』ですか?」
「はい。私は一回だけ、逃走する市女笠にぶつかった事があります。」
「良く…助かったな」
「ぶつかった瞬間、その時顔を見たんです。」
「本当アルか?」
「ええ、その顔が…私の戦友であり、女郎士隊の総督山科可乃だと分かりました」

「もしもし、いい加減前置きやめてくれない? 長いんだよコノヤロー」
銀時は鼻をほじながら、八重に訴える。
いい加減依頼内容に入らない、八重に苛立ちを感じたんだろう。

「つまり、山科可乃の復讐を止めて欲しんです」
うつむいていた八重はようやく顔を見上げ、凛とした表情で銀時達に依頼内容を告げた。