二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 銀魂「市女笠篇」 立て直し ( No.4 )
- 日時: 2010/01/13 16:59
- 名前: コナ (ID: QDm7ZT.A)
生まれた落ちた罪 生き残る罰
私という存在 一瞬のトキメキ
永遠のサヨナラ まだ許されないのかなぁ?
伸ばす手はどこへ
Buzy/鯨
真夜中。歌舞伎町通りから離れた場所で、八重組はまだ捜索中だった。
「八重、引き返してまた明日捜せへん?」
兎耳を持ち、ハムスターのようなふくろうのようなえいりあんは、八重と呼んだ女性の肩に乗って言う。
内巻きの黒髪ボブに薄柿色の着物。顔も体型も恐らく歩んでいる人生も十人並みな八重は。
「嫌だ、可乃のやっている事は間違っているって教えないと」
首を振り、意志を変えぬ発言をする。
「それにこんな時間うろついてると、大変な目に遭うよ! こないだももし逃走していなかったら、八重は斬られてるで!」
「この時間帯にすれ違ったんだから、会う確率が高いよ」
八重の言う通りだ。残業帰りに再会した時は、確かこの時間帯だった。
危険を顧みず、友を思う八重に拍手を贈りたい。
「はあ…なんでそこまでしてソイツを止めたいん? 僕未だにわからへん」
「復讐しても何も変わらない、無駄なものなんだ…ただ人を傷つけるだけよ」
悲しく微笑む八重、それが戦で学んだ事だ。
もう、断末魔は聞きたくない、悪夢でうなされる仲間達の顔なんて見たくない。
八重はそれに耐え切れず、戦後刀を捨て甘味屋の店員として生きてきた。
だが友…可乃は未だ戦っている、今度は一人で戦っている。しかしそれは八重から見たら無意味な戦いだ。だから、止めなければ。
「オイ、そこの女!」
「ひっ!」
突如背後から男の声が聞こえたので、肩を跳ね上げ驚く八重。
「兄ちゃん、びっくりさせんとって」
「しゃ、喋った! いや。あのね、危ないよ女の子一人でこんな時間うろついてちゃ…ただでさえ、人斬りが横行してんのに」
後ろを振り向くと、御用と書かれた提灯を持つ真選組隊士がいた。
「あなたこそ、なんで一人で巡回してんですか? 普通増援するはずですよ」
「たまたま、人数不足で俺だけになっちまったよ…巡回他の奴誘ったけど、皆じゃあなって肩置くんだぜ。嫌だよー本当」
「そりゃあ災難だったなぁ」
ヘンテコは、隊士の事情を聞いてぼそりと呟く。
「あー…アンタまでに慰められると、ちょっと虚しい…」
はぁと肩を落とし、落ち込む隊士。
「まあまあ、今日来るとは限りませんよ」
八重はヘンテコの頭を軽く叩いて言う。
「そう思いたいんだけどね…」
隊士がそう言った後、風が隊士と八重の髪をなびかせる。
柳の葉も揺れ、川のせせらぎも聞こえた。
刹那。
「見つけた…」
隊士の背後から甘い声が聞こえたと同時に体から血飛沫を上げ、その肉片と赤い滴が八重の頬に付着した。
(…!! 殺気を感じなかった—!)
八重はそう思いながら隊士が倒れ、現れた人物を丸い目を細めて睨む。
見慣れた血が滴る二本の白刃は、月明かりで鏡のように八重を映し出す。
市女笠の布や白魚のような指も深紅に染まっていた。
とうとう『市女笠』が現れたのだ、彼女は殺気もなく静かに屍を見下ろしているように見えた。
第三訓「悪女は美女に限る」
「……」
「『市女笠』…いや、元女郎士隊総督…山科可乃どうして…復讐を選んだの?」
八重はあえてフルネームで友を呼ぶ。『市女笠』は、薄い布で隠れて表情は読み取れないがピクリと何か反応したようだ。
だが返事はない。
「おかの! もう十分私達は頑張ったんじゃない! なのにどうして…こんな事を…」
「こんな事? ククッ私はね…」
静かに語りながら返り血を浴びた市女笠を取り、素顔を晒した可乃。
端整な可乃の顔は沸き上がる憎悪で歪んでいた。
眉間に皺を寄せ。
ぱっちりとした睫毛が長い垂れ目は、瞳孔が開きぷっくりと膨らんだ唇は薄く釣
り上げて微笑を作る。
あのどこか品性を感じさせた顔立ちはどこにもない。
その形相は、艶やかな長い黒髪を後ろに結わえた羅刹女を連想させる。
「あの方に目を覚まされたの…『テメェの力はなんの為にある』ってね、だから私は…殺された父上や仲間の仇を討つために使うのよ」
「あのかた? 誰の事を言っている……」
そう言い掛けるが背後から頭を何かに打たれた重い衝撃を感じ八重の視界は黒に染まった。